第23話 お宅訪問

「ごちそうさまでした。すごく美味しかった。紗耶さんありがとう」


「お粗末さまでした。真夏くんは今日、何か予定があるの?」


「特にないかな。紗耶さんは何かある?」


 部活に入っていない俺は土日は基本暇だ。親が居るとよく米泉湖というダムの周りを歩きに行ったけど今日はいないからな。


 下松市って交通の便もそこまで良くないし、遊べるところって言ったらゆめタウンしかないしなぁ。


 でも住み良さランキングでは全国で13位なんだから分からないものだ。もし俺が将来大学進学とかで別のところに住むと、下松の良さが分かるのかもしれない。


「冷蔵庫に食材があんまりないから買いに行きたいな。あっ、良いこと思いついたよ!」


 これぞ閃いたという顔をする紗耶さんに俺は少し嫌な予感を覚えた。こういう時の紗耶さんはロクなことを言わないのだ。付き合いは短いが

 分かる。


「私の家に来れば良いんだよ! 二人でここでイチャイチャするのも良いけど、早めにお父さんとお母さんに真夏くんのこと紹介したいしね!」


「いやいや、俺、まだそんな覚悟ないんだけど!?」


 正式にお付き合いしているなら俺の発言は半分クズ発言だ。しかし、俺たちは昨日急に許嫁(仮)になったばかり。いきなり紗耶さんの両親に会う準備なんてしてある訳ない。


「よし! 早くお皿洗って準備しよっ。夜にはまたこっちの家に戻るから心配しなくて大丈夫」


「何も大丈夫じゃないよ!?」


 いつから俺はツッコミ担当になったんだろう。一昨日の俺に言ったらびっくりするだろうな。


「紗耶さん。流石にご両親に会うのは怖いんだけど。上場企業の社長さんってだけでも厳しそうなのに」


「そんなことないよ。とっても優しいお父さんだもん。だって私を優待って言って送り出してくれたから」


 そうだった。紗耶さんのご両親はすこーしだけ世間と違う感覚の持ち主だったんだ。


 よく考えるとよく愛娘を一人で男の家に泊めたもんだ。俺のことをチキン童貞って分かっていても何があるか予想出来ないと言うのに。


「行くって決まったなら早くしないとね。うちまでは歩いて3キロくらいあるからお散歩デートも兼ねてってことにしよっ」


 テキパキと皿洗いを始めるの紗耶さん。流石に朝の家事を全てしてもらう訳にもいかないので手伝うことを提案したけれど、これはお嫁さんの仕事だからと断られてしまった。


 そんなこと気にしなくて良いのに。家事はお互いがするものだと俺は思うから。


 ただこうなってしまっては紗耶さんは引かないので、お出かけの準備を始めることにした。ご両親に会うなら服装はどうしたら良いだろう。制服? スーツなんて持ってる訳ないし。


 あぁ。緊張する。ただご両親に会ったら自分の意見を言おう。どういう経緯でこうなったのかも聞きたい。


 急に決まった顔合わせだけれど、俺たちのこれからを左右することになりそうだ。

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株主優待で送られたのがまさかの許嫁だった〜どんどん送られてくる優待が俺たちの仲を深めようとするものばっかりなんだけど〜 九条 けい @GReeeeN1415

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