1992年5月4日(月曜)多笑、悪童に出会う。 

「って、しょっちゅう、色んな女に言いよんねやろ」

多笑は体を捩りながら言った。暴馬はぎごちない手の動きで乳房を揉み続けている。


「誰にでもなんか言わへん!」

暴馬は声を1段高くした。

「誓う。長田神社の事代主神(コトシロヌシ)に誓って言う。女はお姉さんが初めてや。そしてこれからも、お姉さんだけや。俺の人生、女はお姉さんだけでええ」


 暴馬の口振りには言葉を信じさせる不思議な力が込められていた。


「本宮ひろしの漫画で見た記憶があるセリフやな」

多笑は敢えてちゃかした。


「せや。本宮ひろしの漫画にそう書いとった!」

暴馬はあっさり認めた。

「パクってみた」


 暴馬があまりにも正直に言うものだから、多笑は噴き出してしまった。

「何やの、それ」


「パクっとるけど、俺の本心や。どなしようもないくらい惚れとんねん。マジやで」


 暴馬が唇を重ねてきた。多笑は眼を閉じて、体の力を抜いた。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

すじこん~長田暴れ馬伝説 達也 @tatuya5477

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る