第3話 金銭という新たな神々の王冠
金がなくなった。
端的に言って、金がなくなった。
悲しいことだ金がないとは悲しいことだ。だってそうだろ様々な広告をみて焦げ付くような欲望に刺激され。ただ漫然とトロ火で焼かれるような苦痛を味わう。
人はなぜ、欲望があるのか?これは人類最大の最大の命題であり、まあ、所謂形而上学だ。
欲望の全てを叶えたい……ただそれだけを願って俺は生きている。
佐野柚柚子女史は自らを律せよと言った。
なら、その自らとは何か欲望以外に自らがあるのか?
理性なる怪しげなモノに俺は身を委ねない、ただひたすらに欲望を満たす。満たして満たして満たす。
渇くんだよ、ただただ渇く……本当に渇くんだ。
俺は多分その意味で不幸なんだろう。
そして、
「まずもって、生活の改善ね、身なり、部屋が汚すぎる」
佐野柚柚子女史はそう言うと、掃除を始める。
「俺は汚い方が落ち着くんだ、だってそうだろ汚ければなにもしなくていい、全てを諦められる、生活なんてどうでもいい、ただ観念の遊戯に耽っていたい」
俺がそう言って寝転がると。
「どうしてそんなに投げ遣りなの」
悲しいのか、そう思わせたいのか佐野柚柚子女史は表情を変える。
「下らねえ顔が全てか佐野柚柚子女史よ、俺はそんなに間近なモノには惑わされない」
俺はどうしたわけか何か激しい憤りを見せながらそう言うと。
「ますば間近よ千里の道も、一歩から」
ああ、正しいんだろう……でもその正しさが憎らしい、間違っておれば俺は正当にそれを拒めた。たが正しさがそれを許さない。
俺は正しいが嫌いだ、なぜらな俺が間違ってかいるからだ。
もう疲れ生きているわけでも死んでいるわけでもなく、ただメシ食ってクソして寝るだけの、日々に。
それに、なんの価値があるのか俺にはわからなかった。
「はあ、本当に何もかもが嫌になった、自分を世界と思える愚かさが欲しい」
そう呟いて見せた。
「でも賢明はあなたを幸せにする、要は使い方よ」
佐野柚柚子女史はそう言うと、ごみ袋を結ぶ。
「俺は無意味な思考、神への執着が強すぎるんだ、もう無理だ神の国生きたい、天国は何もないから地獄なんだ」
俺はそう言うと、聖アウグスティヌスの言葉でも引用しようと思ったが何も思い浮かばなかった。
「あなた、あなたにあったペースを見つければいい、今はただ牛歩のごとく」
佐野柚柚子女史はなぜそんなに俺に気を遣うのか。
さすがにプロか、俺の性格を見抜いて態度を変えた。
敵わんな、本当に敵わんな。
私は彼女に、経緯を払い、今回だけは特別に掃除を手伝うふりをした。
めんどくさいこと 坂西警護 @tarantulata2
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