第2話 言語と言う病める人間の病める言葉
「あなたを立派な『社会人』にしてあげるわ!」
彼女、
ああ、ちなみに自己紹介は済ませてある。まあ、つまらないものだったよ。
「『社会人』ね……。そんなものにはなりたくないね所詮は社会の歯車だろ」
俺がそう言うと
「ウンウン、中々のものだが!しかーし、私は諦めない」
佐野柚柚子女史はそう言って腕を組む。
「そう」
俺はそう言って押し黙る。
「……」
佐野柚柚子女史も押し黙る。
「はあ……で。参考程度に聞いておくが立派な『社会人』なる者はいかなる存在論的地位を持つのかな?あるいはこの質問は的はずれかね佐野柚柚子女史」
「うん、まずその嫌みで上から目線で卑屈な態度をやめよう、みんな不快になるぞ」
佐野柚柚子女史は輝く笑顔でそう言い放つ。
「不快になる輩なぞ勝手に不快にさせておけば良いのだ、なぜか?人の態度にイチイチ腹を立てるのはその腹に自己中心的な世界観がつまっているからだ」
「きみ、根性が曲がってるねー」
佐野柚柚子女史はへらへら笑う。
はあ、そうやってヘラヘラ笑う女というとはこの世界から絶望を導きだす関数だ。
そもそも、関数なるものは数XとX+1のごとく不可解な関係にある、それらを基礎付けるのはペアノ公理なりロビンソン公理なり色々あるが、しかしそれらの諸公理いかなる公理系に属するのか?
このように人の思考パターンには一つの超越がある。
論理も情念も一つの自立的システムではなくバックに特殊な形而上学的存在者を要求するものなのだ。
「ひとえに世界とは時計である、それらは見えない歯車と見えない力学で動く、ならば見える世界とは何か?それは……まあわからんわな」
俺の言に
「詩人だねー」
と、佐野柚柚子女史は頷く。
「とにかくみんなとか言う存在が不快と言う状態になるのは自然の妙技である、ただそれにこういえば良い『然り』と」
なぜ、人は不快に然りと言えないのか?結局みんなだの世界だの国だのは不快によってその存在が許されている。
人は協力する生き物だ、そのために不快というものが形而上学的動因を持って人々に開示される。
それはひとえに非隠蔽性を持って人々(この言い方がすでに超越である)の世界内存在に君臨する。
とは言わずにおいてやろう。
理由は簡単。
俺にも理解できないからだ。
「まずもって現象学。ひとえに全てはここらか始まる」
「それなら、まずこのひどい生活を立て直そう」
佐野柚柚子女史の回答に。
「生活世界とは実在に対する無根拠性の剣を持った幽霊である。まず始めに構造ありき、人々は構造と言うヴェールを纏ったイシスをあいてにしなければならない、それは単なる無根拠性の無根拠である」
「わかった、わかった哲学詩人なのはよーくわかった」
「佐野柚柚子女史よ哲学詩人なるものはあり得ない、哲学とは純粋理性、詩人とはツァラツストラであるからだ」
「会話する気ない?」
「その通り、佐野柚柚子女史との会話成立しない」
「そっかじゃあまず会話だね」
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