ジャンキーズ・マッド・カラー

中嶌 浩和

ジャンキーズ・マッド・カラー

☆免責事項

 この小説には以下の成分が含まれています。

 ・独自のヘッドカノン

 ・薬物の使用による過激な(そしておそらく間違っている)描写

 ・展開が早い(遅く出来ない)

 ・読みにくい

 ・無理やりな演出

 ・設定上、財団海苔がめっちゃ多い

 ・変な料理

 苦手だという人は、まあ、ごめんなさい。


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 料理の本やテレビなどを見ていると、家庭の味、両親の味、というフレーズがよく出る。

 あれは、その味の定義は人によるものだが、前提条件がある。それは一律して「親」という存在を知っていて、それぞれの料理を振る舞ってもらっていることだ。

 このような言い方をすると、俺には両親がいなかったように思われるか█しれない。いや、も█ろん記憶から█したいぐら█の█が


 頭の中に、ノイズが走る。


 ああ……いや、もちろん俺にもいた。俺と共に日常的に殴られ、着の身着のまま同然で逃げてきた気丈な親が。なので「思い出の味」なるものは正直ピンとこない。

「おーい、話、聞いてる?」

 俺は途中から片親だったこともあり、心配性の母親をまるで顧みず、やんちゃに育って、いつの間にか大したことも繰り返してしまったらしい。

正直、そこらへんはぼんやりとしか覚えていない。 ……なぜだかは、よく分からないが。

 そのまま「SCP財団」だかなんだかよく分からない施設に入り、今までの人生では一回も見たことが無かった化け物どもの実験台にされ続ける日々を送っている。

「おい、オマエ、おい」

 見た目がデカいからだろう、何かを食べさせられたり、掃除や運動が必要なことをされることが多い。あまり運動をしてこなかったから、そういうのはすぐに疲れてしまうのだが。

「おい! オマエだよ! オレの、話、聞いてるか? もしかして、オマエの耳、脳みそと接続されてねェの?」

「……すまん。今後の業務について、少し考え事をしていた」

 そう怒鳴られて、俺は考えていたことを一気に消してしまう。こういうところは俺の良くない癖で、自覚はしているのだが、どうにも直らない。

「オマエの悪い癖だよなァ。そういうところだぞ。人の話聞かないのと、筋トレしまくるのと、寝てる時の歯ぎしりと」「どんどん粗が出てくるじゃないか」「粗を出したと思ッた途端にまた出てくるんだよ。粗のマトリョーシカだ」「ふん、下手な例えだな」「うるさい」「はい」

 今は丁度夕食の時間だ。オレンジのツナギ一色を着ている、人相の悪い死刑囚で騒ぎ合っている実験体専用の食堂で、対面に座っている同部屋の奴が、半分ぐらい残ったカレーの皿にスプーンをカツカツとつつきながら俺に話を振る。

「それで、何の話だったか?」

「オマエがあと何日でココを出れるかッて話。もう1か月ぐらいはいるんじゃねェか?」

 この奇妙な施設にはとある規定があり、1か月の間ここで仕事をすれば、ここが保有している企業に就職が出来るというのだ。もともと死刑になることを考えれば、考えられない待遇だろう。

「規定通りに行けば、あと2日だ」

「それだけか。オレの方が1週間遅く入ってきたから、オレはあと9日だな。あとは2人とも、ここに住まうバケモンに殺されないように祈るばかりだな……」

「どうだか。俺はこの前業務中に怪我してるから、あと2日も耐えられるかどうか」

「聞いたぞ、掃除中に驚くほどコケたッて?」

 ……恥ずかしいからあまり触れられてほしくないのだが、この前、こいつの言うとおり驚くほどコケた。

 俺が悪いのではなく、あそこにバケツを置いていたやつが悪いのだ。

「まあ、そうだ。恥ずかしいことだがな」

「やーいやーい……なァ、この際聞かせてもらうんだけどよ」

 相手が少し身を乗り出してきたので、どうしたのか聞く。カレーはもう残り少しだった。

「オマエさ、飯の時ソレ食ッてばッかじゃねェか? あー、なんつーんだッけ、それ」

「ああ、これか。美味しいじゃないか、俺はトマトが好きなんだ」

「オマエ、ミニトマト食えねェのに? 他の頼めよ、ここは意外とウマいのがいッぱいあるし」

 他の奴は味が薄いだの具が少ないだの言って食べたがらないが、俺はここに来て毎日これを食べていた。何か味が足りない気が█るが、それが█かを思█出そ█とす█と


 頭の中に、ノイズが走る。


 うう……何か味が足りない気がするが、それが何かを思い出せない。まあ、忘れてしまうということは、たいしたものではないのだろう。

「違う、加工されたトマトは食べられるんだ」

「なーにが違うんだか。つかさ、それなら1週間に一回『フリー・デー』もあッたんだし、それでもいいじゃねェか」

「そういえば、そんなものあったな」

『フリー・デー』とは、俺たちのような犯罪者の士気向上を狙った食堂の試みで、ある程度の値段のものだったら『フリー・デー』で食べることが出来た。他の奴らは色々頼んでいたようだが、それでも、俺は決まって同じものを食べ続けた。

「トマトが好きなだけじゃない。なんだか、食べなきゃいけないような……」

「ハッ、そうかい。じャ、俺はまだ仕事があるから」

 そういうと奴は、いつの間にか食べ終わっていたカレーを手に持ち、スタスタと返却口に向かっていった。

 ……。

 その一連の動作を見て、俺もあることを思い出し、ひとりごちる。

「あれ、そういえば……俺もまだ仕事あるな?」


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「遅刻ですよ、D-████」

「すまない、食べるのに少し時間がかかってしまった」

 いつもは体力を無駄に消費しないため、業務以外で走ったのは久しぶりだ。昨日、この博士に「仕事があるから今日の18:30までには来い」と言われたことをすっかり忘れていた。

 急いで行ったつもりだが、博士が掛けている黒縁眼鏡の奥にある目が光る。俺は眼鏡にも何かしらの威圧感を感じてしまい、お叱りの言葉が飛んでくると身構えたが、ため息を1つ吐かれただけで終わった。

 そのまま、観賞植物の一つも無い、天井の光を反射するだけの無機質なリノリウムの床を2人で歩く。後ろには、物騒な銃……としか俺には表現出来ないが、そういうものを持っている奴が2人付いている。俺がなんらかの暴動を起こさないためだろうが、正直、怖い。

「D-████。あなた、その怪我はどうしたんですか?」

 博士が俺の膝辺りの怪我を見つけ、注視する。

「ああ、業務中に怪我したんだ。3日前ぐらいか……」

「そうですか。今回、あなたには少し特殊な実験を受けてもらいます。わざわざ海外から取り寄せたものなので、壊れることは無いと思いますが、丁重に扱ってください。ああ、ご心配無く。それで死亡したりするようなことは、恐らく有りません」

 少し前を歩いている博士にそう言われると、前から少し気になっていた質問を聞く。

「なあ。お前らは、実験をさせる度に恐らくという言葉を付けるが、なぜ毎回そう言うんだ?掃除のときもそうだ。何か理由があるのか?」

「我々が相手にしているのは、科学の結晶、人類の叡智などでは一切ありません。つまり、油断をしてはならないのです。それが命取りにもなり得ます。掃除の際も同じで、ソレが逃げ出すかもしれませんから」

「ソレ、とは?」

「具体的な内容はセキュリティクリアランス違反になるので発言を許されていません。そもそも死ぬかどうかも、本来は言う必要がありませんからね」

「あー……わざわざ教えてくれて、どうも」

 博士は俺のほうを見ずにずんずんと進む。博士がセキュリティクリアランス違反、と言ったときに後ろで何かガチャガチャ聞こえたと思うが、気のせいだろう。

「さあ、着きました。今回はこちらの部屋にお入りください」

 どうやら、早速着いたらしい。あと2日で出れるのだから、まだこんなところで死ぬわけには行かない。

 どこまでも無機質な部屋には、警察署の取り調べ室のような透明な衝立が置いてあって、博士とはそれを挟んでの対面となった。護衛の2人は外で待機するらしく、部屋には入ってこなかった。

「それではD-████、目の前の椅子にお座りください」

 言われた通りに座ると、目の前には内側の青色が目立つ、白い陶器が置いてあった。

 白い、陶器? その見た目に、俺の頭の中で何かが引っ掛かる。俺は、確か陶器を使って……。

 記憶を呼び起こす撃鉄が、脳のどこかでガチリと引かれる。過去の記憶が頭の中を過ぎ█。頭がざわざ█と█り出す。視█が安█しなく██。自我█保てなく█る。

「今回、█験に使█するS██の特徴で█が」


 頭の中に、ノイズが走る。


 映像が流れる。

 暖かい暖炉、細部まで工夫が凝らされた豪奢なテーブルクロス、小さい俺用の足が長い椅子、お父さんが外国で買ってきた陶器に入った、好物の███████。

 俺はそれに██を入れて飲んで、幸せそうに笑っていた。

 それを見て、少し呆れながらも微笑んでくれる優しい父さんに、この飲み方を発見した綺麗な母さん。

 誰が見ても、羨ましい家庭だった。

 そのはずだった。

 なのに、何かを間違えた。

 会社内で横領の疑いを掛けられてから、日に日に生気が無くなり、度数の高い█を飲み続ける男。

 █が乱れ、心臓の持病が悪化し始めた█さん。

 学校でもいじめらるようになり、毎日のように█いていた█。

 電球は切れかけ、テーブルクロスは█に代わり、椅子は1本の足が折れていた。

 男が自分の惨めさを拭うように、俺たちに██を振るうようになるまで、そう██時間はかからなかった。

 そこから、良いことなんて一つも無かった。惨めさだけが俺を包んでいた。目を開けて現実を見たくなかった。

 もうどうしようもなくて、█さんは俺を連れて逃げた。そして、自分の█調を犠牲にしてまで、█を育てた。それなのに、俺は? █さんの為に、何かをしてあげたか? 恩を仇で返した。許されない█とだ。そう思█た。

 もう、█は、あの█には██ないのか。

 █か、██てく█


 頭の中に、ノイズが走る。


「……██。D-████。大丈夫ですか? 今、目から光が失われてましたが、私が説明していたことを聞いていましたか?」

「あ……。す、すまん。聞いていなかった」

 長めの溜息を吐かれて、博士のキーボードがカタカタと動く。今のは、出所時の評価に関係しただろうか。

「いいですか? 現在、あなたの目の前に置いてある陶器からは、自然とスープが湧き出るようになっています」

 ……はあ。原因不明の事象をごく当たり前のように言われても、ある程度は脳が受け入れているのが怖い。一か月もこんなところにいればそうなってしまうものだろうか。

 それで、スープが湧き出るだって?

「『なっています』って言われてもな。原理は?」

「分かっていたらこんなことしていません。まずは、それから出てきたものを飲んでもらいます」

 陶器を手に取るように促され、手に取ってみる。

 皿から出てきたスープは、ミ██████だった。先ほど食堂で食べたものとは全く違う、柔らかそうなキャベツや、角切りにされたじゃがいも、薄く切られたソーセージに、発色の良いトマトの赤色が母親を思い出させる。

 事前にスープが湧き出ると説明されても、目にすると軽い驚きを感じる。

「凄いな、本当に出てくるのか。それで、これを飲めばいいんだよな?」

「はい。味などの感想は、こちらに逐一教えてください」

 俺はスープを添えつけのスプーンで軽く押し付ける。昔から、最初にスープの部分だけ飲んで、そこから中の具を食べていた。

 真っ赤な色をしたスープを口に持っていき、ごくりと喉を鳴らす。

 ……。

「スープに入っている内容物と味はどうですか、D-████?」

 担当者は自分のPCから目をそらさず、事務的に問いかけてくる。

「ああ、何故か少し苦い。だが、確かにミ█ス██ーネだ」

 それは、先ほど食堂で食べたものとは比べ物にならない美味しさだった。陶器全体も程よい熱さで、飲んだスープで胃が暖かくなっていることが分かる。

「そうですか。他に何か感想は?」

 ██ストロ█ネに入っているトマトの香りが、狭くて殺風景な部屋に広まる。2杯目は、スプーンにキャベツとソーセージなどを載せて飲む。

 少し形を残している柔らかいトマトが、しっかり硬さを残しているインゲンが、底に溜まった色艶のいいマカロニが、苦味が気にならなくなるぐらいには全てが美味しかった。

「うん、野菜はよく煮込まれているし、ソーセージもこの硬さが良い感じだ。それ以外には……」

 それ以外には、特に無い。そう言おうとして、3杯目をすくって飲んだ時に、味の変化を感じた。

 そうだ。

 家庭の味って、これのことか。

 何故、俺はこれを忘れていたんだ? 母のミネス█ローネに必ず入っていた、これを。

「……これは、まさか」

「どうしましたか、D-████?」

「いや、母親が作ってくれたミネストローネには、牛乳が入っていたんだ」

 俺がまだ小さかった頃、母は俺のミネストローネが入った皿にだけ牛乳を入れたことがあった。肘が当たったか、そんな理由だったと思うが、俺はそれにひどく怒った。

 しかし、飲むと意外に美味しくて、それ以来ミネストローネを作るときには個別に牛乳を入れるよう催促していた。

「牛乳。それは、今発生したものですか?」

「今までこの味はしなかった。多分、今出てきたんだろう」

 PCにカタカタと何かを打ち込む音が響く。

「……奇妙な習慣ですね。幼少期にはそれを飲んでいたんですか?」

「意外と美味いんだ。なんだろう、何が美味いって具体的に言えるものじゃないが……。確かに、ゲテモノかもしれないがな。思い出の味なんだ」

「そうですか。完食は出来そうですか?」

「ああ。久しぶりにこれを食べたら、なんだか懐かしい」

 そして、言われるがままに全て食べきってしまった。もともと量が少なかったし、それに、久しぶりに█べると、█んだか違う感█がある。█の頃█


 あの、頃は? あの頃は、何だ?


「ああ、もう食べたんですか? それで、どうですか。何か陶器に変化は……」

 あの頃は……さっきは思い出せたはずだ。いや、正確には『思い出せた』という記憶しかない。今は上手く出来ない。ノイズではない、もやのようなものが掛かっている。なぜだ? 一体、俺の身に何が起こってるんだ?

「……D-████? どうされましたか……」

【ばっごんッッッ!】

「!? これは、まさか……」

 そうだ、最初からおかしかった。この施設に入ってから、まるで誰かが俺に関する何かを思い出させまいとするかのように、ノイズが発生し始めた。ノイズが発生すると、考えていたことがシャットアウトされ、新しい思考にされてしまう。

 何が俺をこうさせているんだ?

『……事態発生! 緊急事態発生! これは訓練ではない!』

「ッ……! D-████、ここは危険です!」

『繰り返す、これは訓█ではない! 現█、サイト-████にて収█』


 頭の中に、ノイズがっががああががっがあががががが


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 ……本当は全部、気付いていたのかもしれない。なぜ、自分の思考にノイズが走るようになってしまったのか。なぜ、昔の記憶を思い出せる時と出来ない時があるのか。なぜ、人の話を聞かずに自分の思考に入り浸ってしまうのか。

 なぜ? なぜ? なぜ?

 両親のせいでもない。

 環境のせいでもない。

 俺のせいだ。

 そうだ。思い出した。俺は、やっていた時の記憶を忘れさせられていた。ここに雇用されて一番最初に入った部屋で多人数に抑え付けられて、よくわからない錠剤を飲まされて、そこから意識が朦朧として。でも、全部が自分の心の弱さのせいだ。

 遠くから、誰かが俺を蔑む声がこだまして聞こえる。

 幻聴だ。幻覚だ。でも、それも俺のせいだ。耐え█れなかったせいだ。俺が█なんかにク██なんかに█を█さなけれ█もっとあのしっか█と断ってお██


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 ████、██████。


『……反発生! 現在、サイト-████の第█セクションにいる職員は全員速やかに避難しろ! これは訓練ではない!繰り返す、これは訓練ではない!』

「D-████、収容違反です! すぐにここから逃げましょう!」

 ……。もう、ダメだ。

「……。……。うう。うううう。ううううう!!!ううううううううううううああああああああああああああああっっっ!!!!!!!あああああああああああああああああああああっっっっっっ!!!!!!!!!!」

 もうダメだもうダメだ全てを思い出してしまったあの時に間違えたことあの時に忘れようとしたことあの時に断ち切れなかったことを今になってもずっと後悔している終わらない渇きまたやった時の後悔一瞬の快楽俺は悪くない仲介人の蔑む目を母親の悲しむ目をアイツが俺を殴ろうとする時の目を忘れられない1回やっただけの薬でも俺を苦しませる時間の流れが俺は悪くない拷問にかけられているどこからか大きな目に睨まれている何かが迫ってくる何かが身体を這いずり回る何かが俺を殺そうとするその感覚が忘れられないこうしている間も隙を窺っている俺は悪くない狂騒だとか怠惰だとかが俺の全てを壊した俺は悪くないアレのせいだなんでアイツはどうしてアイツは俺を思い切り殴った頭を叩いた腹を蹴った風呂に沈めた煙草を押しつけたそうだソレのせいだ俺は悪くないアイツが悪い今まで考えていたことは全部|瞞しだ幻覚だ虚像だソレが俺をこうさせた俺は悪くないアレが悪いソレが悪いアイツが悪い俺は悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くないんだ!!!

「俺はっ、俺はあああああああああああっっっ!!!!!!!!」

「D-████!? 急█叫んで……クソッ、記憶█理無█型フ█ッュ█バ█クか!」

 揺れる視界の端で博士が急いで逃げ出し【断ち切りたい】、そのまま扉を乱暴に開けて、バタリと閉めるのが見えた。【もう止めたい】銃声も聞こえるが、それもすぐに止んだ。施設が大きく揺れ、陶器が床に落ちた。【やりたい】ミネストローネも、同時にこぼれてしまった。

 その一連の動作が、俺の思考を急激に冷却させた。


 そうだ、おれのお母さんがつくってくれたんだから、ちゃんとのまなきゃ。

「っ……。……。……あ。うう。あああっ。もったいない。うう。のまなきゃ。もったいない」のまなきゃ。「せっかくお母さんが、やさしいお母さんが」のまなきゃ。「ああっ、おれの為に、ああ、作ってくれたのに」のまなきゃ。「のまなきゃ。もったいない。のまなきゃ」

 椅子ごと床に倒れて、ミネストローネを舐める。

 ああ、おいしい。

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実験記録 SCP-348-████-█-JP


 今回の実験の目的は、SCP財団日本支部でのDクラスを使用したSCP-348が出すメッセージを収集することです。今回の実験で得られたメッセージは1件のみでした。


 日付:20██/██/██

 被験者:██歳男性、D-████*1

 家庭背景:D-████が██歳の時に父親と母親が離婚、母親と同居していた*2

 結果:メッセージ。"また、愛してもいいか?" *3。


 補遺1:SCP-348-█:SCP-348の実験中、原因不明のSCP-████-JPの大規模収容違反により、 Bクラス職員█名、Cクラス職員█名、Dクラス職員█名が終了しました。終了したDクラス職員の中には、今回の実験で起用したD-████も含まれています。


 補遺2:SCP-348-█:D-████がSCP-348の中で生成されたスープを摂取中に、新しい味の発生を確認しました。これは今まで起こらなかった現象であり、SCP-348の新しい特性として調査を続けています。


 *1 D-████は、度重なる覚せい剤の使用により、薬物乱用者専用の記憶処理剤を施された状態でSCP財団に雇用されていたことに留意してください。


 *2 D-████の母親である██ ██氏は、D-████を雇用していた時期に持病の悪化による心筋梗塞で死亡、父親である██ ███氏は、D-████を雇用していた時期にアルコールの過剰摂取による急性アルコール中毒で死亡していることに留意してください。


 *3 SCP-348は、サイト-████の第█セクション内にある実験用チャンバーで、終了したD-████が腕に抱えていたところを回収しました。浮き出た文字に関して██博士は、実験中にそれを報告されなかったとのことです。


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 この作品はCC-クリエイティブコモンズライセンスに準拠しています。

 SCP財団 http://scp-jp.wikidot.com

 SCP-348「A Gift from Dad」http://scp-wiki.wikidot.com/scp-348

 SCP-348「パパからの贈り物」http://scp-jp.wikidot.com/scp-348(翻訳)

 著者:Zyn

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