第2話 太陽に魅せられて

「一つ質問、よろしいですか?」

「うん!いいよ」

「何故、私に話しかけようと思ったのですか?」

「えーっとねぇ…本読んでる時、いっつも楽しそうだったから、どんな本読んでるのかな~って気になって」

"楽しそう"そんな風に言われたのは生まれて初めてでした。

今まで言われた言葉といえば、"楽しそう"とはまるで違う…例えばそう、"無表情"でした。この言葉が一番言われました。後は、楽しくなさそうとか暗いなどでしょうか。

私は彼女の言葉がとても嬉しかった。今まで誰も私の表情を読んだ人はいませんでした。彼女だけが…私を理解してくれた。そんな気がして…。

ですが、私と彼女は正反対。相容れない存在なのです。


「ねぇ綾乃。最近高崎と一緒にいるけどあいつのこと好きなの?」

「そんなわけないじゃん。綾乃が高崎みたいな暗くて無表情な奴好きになるわけないじゃん」

私は、偶然とはいえ聞こえてきた言葉から反射的に逃げました。その後彼女が何か言っていたかもしれないのに。

やはり私は彼女と不釣り合いです。分かってはいたことですが…私はきっと心のどこかでそうではないと勘違いしていたのかもしれません。

私はその後、彼女とは距離を取りました。どうしても前のようにはいきません。



「ねぇ、高崎くん!!無視しないでっ!!!!」

数日後、彼女に呼び止められました。私はこれを、最後の会話にしようと決意しました。

「なんですか」

「なんですか…っじゃなくてっ!!なんで無視するの!寂しいよ!!むぅぅ…」

彼女が怒っているのは初めて見ました。

「私はもう、あなたとは会話しません。これが最後です」

「え~なんで~?なんでそんなこと…」

「あなたと私は違うんです。あなたは光、いえ…太陽です。ですが私は影。暗闇の中一人でいるのがお似合いです。ですが、あなたはたくさんの人に囲まれて、周りを照らしている方が合っています。私と一緒にいてはいけないんです。私はあなたの傍に居るのに相応しくないので…」

「高崎くんは影じゃないよ。私にとっては太陽だよ。だって本の話してる時すっごくキラキラしてるもん。だから影じゃないよ」

その時の笑顔は今までにないくらい眩しくて──

「全く…あなたという人は…」

どこまでも…眩しい人です。私には眩しすぎる。

ですが、私にとっての太陽が、私のことを輝いてると言うのなら、きっとそうなのでしょう。不思議です。少し前まであんなに考え込んでいたのに、いつの間にか消えています。もはや何に悩んでいたのかも忘れるほどです。やはり彼女は光です。暗い感情を全て消し去ってくれる光。最初はその光が鬱陶しかった。ですがその光は、ただ輝いているだけではなく、周囲を温かく包み込む優しい光です。私はそれに救われ癒されました。彼女は本当に"太陽"ですね。

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高崎くんと太陽ちゃん ぺんなす @feka

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