高崎くんと太陽ちゃん
ぺんなす
第1話 太陽との出会い
「お〜〜い!!高崎くーーーーん!!!」
満面の笑みで手を振りながら走って来る彼女。
「2分56秒遅刻です」
「えー!そんなに?!ごめんごめん!!お洋服とかメイクとか色々考えてたら遅くなっちゃった。ほんとに、ごめんっ!!!!」
彼女は相変わらず真っ直ぐで一生懸命だ。
「いえ。今回は不問とします」
「えっ!いいの!?わーい!!やったぁ!」
それだけ…私の事を考えてくれたということ、ですから。
「あっ!でもでも次からはちゃんと気をつけるからね」
「えぇ。是非そうしてください」
「うん!!ところで、今日はどこ行くの??」
「今日は水族館です」
「わぁ~!!水族館!!楽しみ〜!!早く行こ!!!」
私の手を引く彼女。小さい。小さな手で私の手を握る彼女。全てが愛おしくてたまらない。
「おぉ〜!!!お魚いっぱい!!!可愛い〜。ねぇねぇあのお魚食べられるのかなー?」
「何故食べることを考えるのですか」
「えー、だって…お魚見てるとお腹すいてきちゃって…えへへ…」
「では、どこか行きますか?」
「うん!!」
何故私と彼女がこの関係性なのか、疑問に思う人が殆どでしょう。正直言って私も未だに疑問です。何故、何故彼女は私を選んだのか──。
ではまず、出会いから始めましょう──。
彼女と私が出会ったのは大学一年の時です。
最初はそう、住む世界が違う人間だと思っていました。今でもそうですが。彼女は光であり太陽。純粋無垢、ピュアで素直、そんな言葉が驚く程ぴったりな人。いつも周りに人がいて誰からも愛される存在。沢山の人だかりの中で唯一無二の光を放っているのが彼女です。私とは真逆です。私は影。日陰で本を読んでるだけのその辺にいる人間です。そう石ころと大して変わらないのです。
私は──彼女の光が苦手でした。
ある日。
私が木の下で本を読んでいると彼女は現れました。
「ねぇ何読んでるの??」
たった一言。ただそれだけなのに彼女が現れた瞬間、私の周りは輝き始めました。それはまるで太陽の下に駆り出されてるかのようで──。私はそれが嫌いでした。鬱陶しかった。正直言って迷惑でした。だから──
「あなたに言っても分からないと思いますよ」
私はそう言って彼女を突き放しました。これなら今後話しかけてくることもないだろうと。ですが、その予想とは裏腹に──
「ねぇ何読んでるの~??教えて?」
次の日、再び彼女は私も元へとやってきました。
仕方なく本の題名を教えました。すると彼女はぽかんとした顔をしていました。
「だから、あなたに言っても分からないと言ったんです」
「ん〜〜〜…。もう1回!!!もう1回だけでいいから教えて!!」
彼女の瞳は常に真っ直ぐです。これが私を困らせる。
私は仕方なくもう一度教えました。
すると次の日。
「ねぇねぇ!!この本面白かったよ!」
彼女は私が言った本を読んできたのです。驚きました。
「もう、読んだんですか?」
「うん!本屋さんで見つけてね、ちょっとだけ読んで面白そうだったから買ったの!それでね読み始めたら、もう!!すっっっっごく面白くって全部読んじゃった!えへへっ」
人間、驚くと言葉が出なくなるというのは本当だったようです。まさか全部読むとは。かなり分厚い本のはずなのですが…。私も何度か読み返していますが、一日で読んだことはありません。
「最初はね~すっっっっごく分厚い本だったから、ちゃんと読めるか心配だったんだけど…読み始めたらすっっっっごく面白くて夢中になっちゃった!えへへっ」
その後、彼女と私は本をよく読む仲になりました。
これが、私と彼女の出会いです。
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