まだ青い、りんごの瞳に映る世界

七歳にしてようやく実をつけ、一人前になったりんごの木。
この物語の語り手はそのりんごです。
色々な事に興味津々で、観察眼は鋭く、使い慣れない言葉をめいっぱい使い、そしてりんごの木である自分への誇りも持つ、まだ実ったばかりの可愛いりんご。
自分の住むお店を手伝おうと「ふんとう」する彼女は、妙に現実的で老成しているように見える一方で、とても幼くもあり、そのバランスが「ぜつみょう」なのです。

そんな彼女を見守るパティシエのトーゴさんは、まだ幼いりんごを片手であしらうかに見えて、いつもその思いを聞き、ちょっと過保護なくらいに大切にしてもいます。
どこか影のある彼が、りんごに対して時々見せる思いの端々。
その秘密が少しずつ見えてくるにつれ、ファンタジックでありながら現実的だった物語が、次第に美しく色を変えていきます。

さらっと読めるようで、天気や季節、訪れる人々の言葉に、濃く鮮やかな彩りを感じる、そんな物語です。