七歳にしてようやく実をつけ、一人前になったりんごの木。
この物語の語り手はそのりんごです。
色々な事に興味津々で、観察眼は鋭く、使い慣れない言葉をめいっぱい使い、そしてりんごの木である自分への誇りも持つ、まだ実ったばかりの可愛いりんご。
自分の住むお店を手伝おうと「ふんとう」する彼女は、妙に現実的で老成しているように見える一方で、とても幼くもあり、そのバランスが「ぜつみょう」なのです。
そんな彼女を見守るパティシエのトーゴさんは、まだ幼いりんごを片手であしらうかに見えて、いつもその思いを聞き、ちょっと過保護なくらいに大切にしてもいます。
どこか影のある彼が、りんごに対して時々見せる思いの端々。
その秘密が少しずつ見えてくるにつれ、ファンタジックでありながら現実的だった物語が、次第に美しく色を変えていきます。
さらっと読めるようで、天気や季節、訪れる人々の言葉に、濃く鮮やかな彩りを感じる、そんな物語です。
いっやぁもう! かわいい! かわいいんだよコンチクショウ!
甘い匂いが漂っていそうな洋菓子店の庭に、無造作に植えられた(生えてきた?)一本のりんごの木。
七年経ってやっと実を付けたりんごの木には精霊が宿っていました。
パティシエらしからぬ風貌の無精ひげ男トーゴにまとわりつくりんごちゃん。彼女はそのりんごの木の精霊なんです。
この子がもう、とにかく、猛烈に可愛い。ビジュアルも可愛いと思うのですが、やる事なすこと喋る事。どこをとっても可愛い。何がどう可愛いかというと、可愛いんだよもう何もかもが! 呼吸してそこにいるだけで可愛いレベル。
子供扱いされてふくれたり、大人扱いされて子供ぶったり。
実が成るのだから大人になったと言ってもいいのだろうけど、見た目は恐らく樹齢と同じで七歳ぐらいかと思われます。
メルヘンぽく見せかけて、お菓子を作る無精ひげ男はやたらと現実味のある影があったりするから、ただの可愛い女の子が可愛さをふりまくだけの日常話ではないところもお薦めポイント。