鵲橋の日

「結婚する!! あさぎとまこと」


「幼稚園生みたい」


「ほんとだね」


「結んで来る」


「待ってよ」


 待ってはあげない。書いた後の余韻に浸って、椅子を立つ。この特別な短冊を笹に結びに。窓ガラって開けて、もうとにかく十代のテンションで。体の疲れなんて知らない少女の走りを見せてやる。


 と思った矢先、躓く。「いった!」って呟きたくなるくらいには痛いけど、土、草、夜露の匂い。追いかけて、いつも冷静なまことが庭に出てくる。


 差し伸べられた手。迷わずつかむ。


「全部、一人でやろうって思ってるでしょ」


 また涙、瞳に夕方の雲みたいに浮かべて。


「優しいね」


 ふふっ。この笑顔が続くといい。わたしも、まことも。

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早熟な大人 樺冠者 @kabanokaja

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