弍
ゆびきり げんまん うそついたら
はりせんぼん のます ゆびきった
そうして私達は小指を絡めあいました。まるで子供のような
それが、どうしてこうなってしまったのか。
ふと気付けば、目の前であの方は事切れておりました。整っていたお顔立ちはいくらか欠けていて、その断面は
そして私の口元からも生暖かく錆びた匂いが零れ出て、首筋を伝い濡らしてゆきます。鼻の奥と、眼球の裏に刺さるような、家畜小屋の錆びた
人間の血肉がこれほど美味であるなどと、この村の誰が知っているでしょう。
鶏にも豚にも牛にすら、これほど酔いしれたことはありませんでした。口の中でじんわりと溶け、舌に絡み付くドロリとした心地。飲み
しかし、同じ人間といえどもそこらの山賊を喰らったところで、これほど幸せな心地にはなれなかったかもしれません。
この人だから…
愛おしく、美しく、聡明で、そしてただひたすらに欲深かったこの人だからこそ、私は今、深い愛情で幸福を貪り、こうして喉を鳴らしているのです。
しばらくその心地に浸り、濡れきった顎を動かしていましたが、とうとう口の中の血肉が少なくなってくると、幾分かの悲しみが沸いてまいりました。これが終われば、私はとうとう人間ではなくなってしまうのでしょう。
いえ、もう遅い。きっと私はとうに人ではなくなっている。この肉に歯を突き立ててしまった
これが幸せに生きることの出来た人間として最後の食事となりましょう。このまま全て鬼となってしまう前に、貴方が腐り落ちてしまう前に。
どうか、私の話をお聞きくださいませ。
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