さよなら、じいちゃん

戸田 猫丸

さよなら、じいちゃん


 二十三年ぶりに、父の故郷を訪れる

 街灯がLEDになり、町も道も姿を変え

 父の実家も、知らない誰かのものに

 変わってしまっていた


 夏休み、青空の下、走り回った景色

 思い出を重ね合わせれば、その景色に

 優しい顔した、じいちゃんの姿が浮かんでくる

 山の上に立つシンボルが、僕を二十数年前へと連れてゆく


 昨日の事のような思い出も

 気づけば、遠く遠くへと行ってしまった

 最後の言葉が何だったかも、思い出せない

 じいちゃんは、今の僕を見て

 どんな言葉をかけてくるだろうか


 青い空は、変わる事はなく

 今もこの先も、時を繋ぎ続ける

 記憶の霞に埋もれてしまわぬよう

 ぼくは繰り返し、訪れるだろう

 束の間の、夏の小さな街の記憶へ


 だが後ろばかり向いて、生きてもいられぬ

 「僕はしっかり生きているよ」と

 胸を張って、じいちゃんに言えるように

 言い続けられるように

 前を向いて一歩ずつ、自分の道を

 切り拓いて行こうと思う


 


 

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さよなら、じいちゃん 戸田 猫丸 @nekonekoneko777

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