第3話 チェイン

 反乱軍に一筋の光が見えた。リーダー救出の報は瞬く間に各地の反乱軍に伝わり士気が高まり兼ねてより進行していた魔王軍の拠点奪還作戦が決行されようとしていた。シュンは一週間の修行を終え、アヤ達と一時分かれて魔力採掘基地に向かった。


 魔力採掘基地攻略拠点 カクト


 シュンはカクトと名付けられた拠点に到着した。しかし、そこには何もなかった。無かったというより無くなっていたの方が正しいかもしれない。すでに一戦交えた後であり死体で溢れていた。シュンは新しい装備の一つである魔術コートに備わっている通信の魔法で状況を報告した。


 ーーシュン?どないしたんや?


「ミシか。こっちは大変なことになってる。カクトが壊滅してるんだ」


 ーーほんまか!?たしかにそこであってるんやろな!?


「間違いない。何度地図を見直しても緯度も経度もここを指してる!」


 ーーすぐにそこから離れ!争った跡が新しかったらまだ敵らは近くにおるはずや!リーダー達に急いで報告してくるから待っとき!


 通信を終了させると炎の向こうから黒い大きな馬に乗った鎧を着た何者かが猛スピードでやってきた。直感で身の危険を感じたシュンは乗ってきた馬を全速力で走らせた。


 ーー代わろうか?


「頼む」

 

 そしてブシドーを抜いて精神の手綱をケンセイに譲り渡した。相手は僅か数秒でシュンに追いつき、隣を並走させると躊躇いなく持っていた剣で攻撃してきた。しかしその攻撃はあっさり受け止められてしまった。鍔迫り合いの後ケンセイはたった一撃で相手を落馬させた。落馬した相手を追ってケンセイは馬から降りて後を追った。


「おい若造。魔王の差し金か?」


「教えねぇ……」


 ケンセイは馬乗りになって持っていた手拭いを口に咥えさせると相手の指の爪を一枚掴むと素手で引きちぎった。突然の痛みで相手は叫び声とともにその場で足をばたつかせた。


「足も含めてあと十九回だ。なんだったらこの空いたところに砂とか入れても良いんだがな」


 ーーケンセイ!やり過ぎだ!


「シュン。お前は拷問を受けたことがないから言えるんだ。普通はこんなに早くやったりしない。本当なら指と爪の間に適当なものを挟んでじっくりやるのが主流だ。これはまだ優しい方だぞ。じゃないと本気で口の堅いやつは吐きはしない。じゃあもっとマイルドなやつにしてやる」


 シュンとケンセイは一心一体。ブシドーを抜刀しケンセイとシュンの意思が強いとその身体は入れ替わり納刀もしくは十分の制限時間が経過することでシュンに戻る。ちなみにシュンに手綱が戻ってから次に入れ替わるまでの時間はおよそ三分。そして互いが手綱を握っているのに関係なく心を通しての会話が可能である。ケンセイはシュンに注意され仕方なく別の手段をとった。ただの一方的なパンチという古典的な拷問に移行した。


「そろそろ吐く気になったか?」


「誰が喋るか……くたばれ……」


「よし、それなら」


 ケンセイは魔術コートに備わっている二つ目の魔術である身体強化を使って高速でどこかに行った。戻ってきたのはそれから二秒後でその後一秒でシンプルで誰でも作れるオブジェに相手を逆さに括り付けていた。


 ーーなんだこれ?


「人は逆さ吊りになると身体全体を巡るはずの血液が重力で脳に行き、そして脳に大量の血液が行くと……この先はどうなるか」


 ーーどれくらいでヤバくなる?


「ざっと三、四時間」


 ーーじゃあその間にミシに連絡を


「わかったよご主人様」


 一応身体を借りてる以上シュンが主人でありケンセイはただの手下ということになるがケンセイは自分の身体が無いため活動するためにやむなくシュンの身体を借りてシュンも未だに力不足の自分を訓練するためにケンセイの見ている景色や行動を通して訓練しているという一種のウィンウィンのような関係になっている。


「ミシ。聞こえる?」


 ーーボンか。無事やな?


「今のところは。兵士を一人捕らえて今……逆さ吊りにしてる」


 ーーケンはんがまーた残酷なことしてるんやな。ついさっき早馬がそっちに行ったから一時間で来れるはずや。それまで警戒しといてくれるか?


「わかった」


 ケンはんというのはミシが一方的に呼んでいるケンセイのあだ名。


「ケンセイ。記憶が無いって言ってたけど自分が古代の人物ってことは覚えてるんだろ?」


 ーーそうだ。何故俺の身体が剣になっていたのかはわからない。そしてこの前聞いた話もいまいちよくわからない。というか訳の分からない単語のせいで全く頭に入ってこなかった。


 数日前


「はるか昔、今私たちが立っている大陸その名もアドール大陸を作ったのは意志の強い竜ガルドリウスと悠久の刻を生きる不死鳥オリヌムスでした。ある時アドール大陸に四つの部族が移り住んで来ました。ルペル族、ファポーン族、トムシル族、バシミル族です。しかし四つの種族は誰がどの領地を得るかで戦争が起き竜と不死鳥は悲しみました。そんなある時一人の若者が皆の間違いを説いたのです。部族に縛られずに生きる道を説いた彼は先導者、そして王となり一つの国そのものが大陸であるアドール大陸を治めました。ある時王の元に二人の騎士がやってきました。しかし平和な日々は長く続きませんでした。王の死とともに後継者である二人の息子が争ったのです。大陸全土で広がった戦いを見た怒りに満ちた竜と不死鳥は二人の王子に一つずつ剣を与え二人で戦わせました。長男のハーテルスの勝利に終わった戦いでしたが国を治めるハーテルスのあまりの自分勝手且つ圧政で竜と不死鳥はこれ以上虐げられる国民の声を聞き怒りの炎で国を滅ぼしてしまいました。怒りの炎はやがて生命の炎となり自然や生命を誕生させると炎から生き残った人々は互いに離れて生活し千年以上戦のない世が訪れたと言われましたとさ。そして現在魔王によって国が分断されガルドリウスの文献が多いこちらの国を竜国、もう一方の国を不死鳥国となり今に至ります」


 ーー全然分からん。


 資料室兼アミヤの自室でシュンとアヤの三人が集まって国が誕生した物語を聞かされていた。しかしケンセイは途中から聞くのをやめていた。シュンは最後まで聞いていたがやはり理解が追いついていなかった。アヤはもはやウトウトして今にも眠りそうだった。


「シュンさん。あなたが手にしている刀剣はこの文献が正しいものならガルドリウスが王子のために生み落とした伝説の剣、竜剣ブシドーそのもの。オリヌムスが生み落として神剣カミカゼと対をなす剣でしょう」


「ブシドーやケンセイについて何か載っていることは?」


「何も。ケンセイさんが何者なのか、ブシドーがもたらす力についてはどこにも載ってないんです」


 ーーわからないわけではない。ブシドーは認められた者の中に秘められた力を最大限まで解き放つ力が備わっている。だが俺は本来ある筈のないおまけみたいなものだ。


「あれ?口調変わった?」


 ーーどうやら我が生きていた時代よりも遥かに時が過ぎたようであるから我も溶け込むためにお前を通して色々見させてもらった。元の口調の方が良いか?


「いや、今のままが良いよ。それでケンセイは元々ブシドーの使用者だったとか?口ぶりからして色々知ってそうだし」


 ーーそれも思い出せん。最後に見たのは禍々しい光が空を覆っている光景だ。俺が体験したことなんだろうがいまいちパッと来ない。


「リーダー、ブシドーって文献ではどうなったのですか?」


「神が作った武器の力を恐れた人々はブシドーを火山の中に、カミカゼはどこにも載ってないです。というのもまだ魔術の類が発見される前の人々は未知のものを恐れ、その記録を抹消したなんて歴史は珍しくありません。なので神剣カミカゼは竜剣ブシドーより恐ろしい力があると言われています」


 ーーもう何を言われても思い出せる気がせん。あとはお前に任せる。


「じゃあ俺たちはこれで」


 シュンは自分たちのリーダーもとい上司の前にも関わらず眠っているアヤを担いで退室した。


「あれ。俺いつの間にアヤを持てるように?」


 ーーお前が俺と一心同体になった時人を持ち上げるのも精一杯なお前の身体はブシドーを持ったことである程度身体能力が上がったようだ。だがお前はまだまだだ。せいぜい小鬼を相手にするのがやっとだろう。そうだな……いつかお前が満百の力を発揮するとすれば今のお前は今ニってところだな。


「ニ……レベルニってことで良いかな」


 現在


「なぁケンセイ。なんか空からやってきたんだけど」


 ーーあー……こりゃまずいな。


「何がまずいんだ」


 ーー簡単に言おう。逃げろ。あれは


「龍だ!」


 シュンは急いで馬に跨り走らせた。空から急降下してやってきたのは二つの翼に大きく太い手足と胴体を持つ龍だった。


 ーー何言ってるんだ!?あれはワイバーンだ!ドラゴンの竜じゃない!ワイバーンの龍だ!


「どっちでも良いよ!あと人質どうしよう……」


 ーーもう食われたぞ


 縛られていた男は叫び声一つあげる前に丸呑みにされてしまった。シュンには興味を失ったと思われていた龍だが次の標的であるシュンを見つけた瞬間再び翼を広げて襲いかかってきた。


「ワイバーンが竜じゃないってどういうことだよ!?」


 ーー簡単な話だ。翼のある無しの違いだ。翼があるうちは立派な竜ではない。翼に頼らず自分の力で空に飛び立つのが竜だ。


「とりあえずどこかに身を潜める場所を……熱っ!?」


 ワイバーンはシュンの周りに火球を放っていた。火花や熱風や衝撃で飛んできた土などがシュンを襲ったが当の本人は馬を走らせるので夢中だった。


 ーー仕方ない。ここで倒すぞ


「わかった!」


 シュンは馬から降りると同時に抜刀してケンセイを呼び起こした。目つきがケンセイとなり止まったシュンことケンセイを見てワイバーンも空中で止まった。


「炎相手には炎だろ」


 ワイバーンが空から火球を放つとケンセイはワイバーンと火球に向かって一直線に飛び上がり火球を一刀両断した。速度は衰えることなく火球を斬るのと同時に纏っていた炎を維持させてワイバーンに突撃してすれ違い様にワイバーンを横一文字に斬り裂いた。ワイバーンの死体は大きな音をたてて地面に落ちた。


「終わったぞ」


 ーー周りに誰もいない?


「あぁ。気配は感じない。あ、範囲内に一人……二人くらい感じる」


 ーー敵か?


「真っ直ぐキャンプ跡地に向かってる。俺たちが最初に来た時と同じ方向だ」


 ーーアヤ達かな……念のため遠くから様子を見ながら接近しよう。


「わかった」


 ケンセイは馬を目立たない場所に待機させてところどころに生えていた木に隠れながら移動した。キャンプ跡近くまで接近してケンセイは二つの気配を目視で確認できた。


「良かった。アヤとミシだ」


 ーーじゃあ行こう


「おーい。お二方」


 ケンセイが馬に乗ったアヤとミシに声をかけると二人が近づいてきた。しかしケンセイは長年の勘か二人から奇妙な予感を感じた。その予感は不幸にも的中した。アヤとミシが本来使う筈のない属性系の魔法を使ってケンセイを攻撃してきた。


 ーーおい!どういうことだよ!?


「分からん。とにかく俺が起きている間に全力で遠くに逃げてやる。あとはお前に任せるぞ」


 ケンセイは指笛で馬を呼んで全速力で駆けた。


 ーーまさか……操られてるのかな


「それもあるだろうが問題は俺たちがここにいたというのが筒抜けだってことだ。あの二人は操られているかもしくは誰かが化けているか……」


 ーー情報が筒抜け!?


「今の時代がどうか知らないが俺が生きていた頃はそれができる奴はごまんといた。恐らくあの近くに魔術に精通してる奴がいた。クソッ!奴らボコスカ撃ってきやがる!まずい!」


 馬の足元に直撃した光弾は突如激しい風が起こるとケンセイと馬は地面から離れ風に流されてしまった。


 数日後


 目が覚めるとそこには木材でできた天井が見えていた。シュンの身体は少々痛むが動けないほどではなかったので起き上がり周りを見渡した。殆どが木で出来た屋内であり質素で椅子の机と今いるベッドのみの部屋だった。ベッドのそばにはブシドーと魔術コートがかけられていた。


「ケンセイ。生きてる?」


 ーーお前が死なない限り俺は死なん。お前は約二日ほど眠っていた。その間誰かは知らないがここに運んだようだ。俺はお前の視界を通して外を見ることができるんだがあいにくお前は眠っていたから今ここがどこなのかわからないが少しだけ見覚えがある。


「知ってるのか?」


 ーーざっとみた感じこの家の作りはエルフ族のものだ。


「エルフ!?あの耳長の!?」


 ーーふむ、知ってるみたいだな。だが気をつけろ。奴らは他所者を歓迎しない。


「昔悪い思い出でも?」


 ーー本当かどうか知らないが奴等のような世俗から離れた種族は大抵そういうものだ。おい、誰か来たぞ。


 扉を開けて入ってきたのは容姿が整っている上エルフの証である長い耳を持った女エルフ。起きていたシュンを見て何やら慌てた様子で一度退室した。


「どうなるのかな」


 ーー全身バラバラに解体されそれぞれ食肉用に調理されるかもな。


「エルフってそんな蛮族みたいな奴らだっけ……」


 しばらく待っていると一人の女エルフが従者を連れてやってきた。従者を外に待機させ中に入った。


「ようこそエルフの森へ。竜剣に選ばれし勇者様」


「ブシドーを知ってるのですか?」


「我々エルフが代々受け継いできた伝承に登場します。申し遅れました。私は村長のトエと申します。勇者様」


 実際わからないが目上の人に様と言われていることにシュンは抵抗を感じていた。ブシドーが特別な件というのは理解しているが自分は人間としては特別という自覚がないからだ。


「いや、俺の名前はシュンなのでシュンで結構ですよ」


「ではシュン様」


 これ以上何を言っても無駄だと確信したシュンはそれ以上何も言わないことにした。


「見せたいものがありますので私について来てください」


 トエが退室するとシュンも起き上がりブシドーを持ち、魔術コートを着て彼女についていった。小さな小屋を出ると外には同じような小屋がまだらに建てられている集落に出た。シュンは真っ先にあることに気づいた。


「子供や女性ばかりですね」


「男のエルフは皆戦場に出ていて不在なのです。男の留守を狙って野盗が襲撃することもありますがエルフは女子供野盗相手なら充分以上に戦えますので問題ありません」


 エルフが外で鍋を煮ていたり、ソーセージかウィンナーを焼いて食事の準備をしていた。大きな集落ではないが住人全員が不自由なく生活している様は環境と統率者が優れている証拠でもあった。


 ーーあの肉、野盗じゃないよな?


「まさか……ね」


「あの肉は獣の肉です。私達に食人文化はありませんので」


「捕まえた野盗はどうしてるんですか?」


「指名手配を受けている者なら少し離れた街に引き渡して賞金にします。そうでない場合定期的に来る反乱軍の方に引き渡して彼らに任せてます」


「反乱軍が来るんですか!?」


「エルフ族は反乱軍に全面的に協力しているので物資や人材を引き渡しているのです。聞くところによるとあなたも反乱軍だとか?」


「まぁ……入ったばかりですけど」


「ここの住人があなたを森で見つけた時は大騒ぎでした。この近くに反乱軍の拠点は無いはずですので。あそこで何をしていたのですか?」


 シュンは陥落した基地攻略拠点について説明した。


「シュン様。落ち着いて聞いてください。あなたがいたカクトですがここから馬を使っても一週間はかかる距離です。そうなるとあなたは最低でも四日は風に乗ってここまで来たことになります」


 具体的な距離はわからないが馬で一週間という言葉だけでもどれだけ遠い距離か把握できた。しかしこれからどうしようかはわからなかった。


「着きました」


 連れて来られたのはエルフの小屋より一回り大きい住居。トエの住居かと思われたが連れて来られる時トエの小屋を通り過ぎたので除外された。


「ここは重要な歴史を保管している建物です。この大陸の創世神話や表に出ては非常に厄介な歴史がここに保管されています」


 扉を開けて中に入ると本棚に多くの書物に詰まっている一つの空間が目の前に広がっていた。向こうの世界では一定の本以外を読まなかったシュンには分厚い本の山に目が眩みそうだった。


「こちらへ」


 案内されたのは奥にある狭い部屋だった。その部屋の中心には三つの本が鎮座していた。


「歴代のブシドーに選ばれし者が残した手記です。これをあなたに託します」


「俺に?」


「竜剣に選ばれしあなた様がこれをお読みになれば未来が切り開けると我々エルフは信じています。あなたが風に乗ってこの地に流れ着いたのも何かの縁かもしれません。もしかすればあなたの中にいるお方のことも何かわかるかもしれません」


 ーー俺はくれるっていう物なら受け取っておくぞ。


「ではありがたく頂戴いたします」


「それともう一つ。カクトとは反対方向になるのですが街があります。その近くの山を越えたところに反乱軍の拠点があります。その拠点の長に会ってみるといいでしょう。カクトの方角はしばらく荒野と草原続きでワイバーンや凶暴な生物が生息する地域になってますのでかえって自殺行為になります」


「何から何までありがとうございます」


「馬と案内人を手配しましょう。食事を用意してますのでごゆっくり」


 エルフの食事は普通の人間と変わらず肉や野菜を食す。少々異なるのは野生の生物から肉を採っている。そこから頭から尻尾まであらゆる肉を使って野菜と共に食をしている。シュンは青空の下の大衆食堂で用意された食事を頂いていた。


 ーー手記か……書いたような書いていないような……


「何か思い出したことないのか?」


 ーー寝ても覚めても何も思い出せん。知識自体は残ってるのに自分自身の記憶がないなんて君が悪い気分だ。


「なんかわかる気がする。さっきまで覚えてたのにちょっと経ったら忘れてて中々思い出せないやつ。それにしてもこのソーセージ美味いな。反乱軍で食べていたものとは別格だ」


 ーーあれは栄養を考えて作られている野戦糧食だからな。昔と違い今は味気あるみたいだがやっぱり本格的に調理されたものは美味いと思うぞ。


 少し前のことである。


「思ってたより普通に食える」


 とある戦場。シュンとアヤは戦場での数少ない楽しみである食事に興じていた。基本的には数種類の野菜の入った温水とマッシュポテト、ベーコンの塊がプレートの上に乗せてあった。ある程度最低限の栄養を摂れるようにはなっている。と思われる。


「良かった。シュンって異国異文化から来た人だから受け入れられるかわからなかったんだけど心配なさそうね。美味しい?」


「普通に美味い。結構好きな味」


「ねぇシュン。シュンのいた国ってどんな感じなの?ジテンシャとかクルマっていうのも聞かせて」


 忘れがちだがシュンにとってここは異世界。異世界に文明の発達した自分の国の文化を紹介して良いのかシュンには判断しかねていた。


 ーー俺も聞いてみたいな。


 ケンセイも便乗して興味本位で精神の向こうから聞いてきた。


「じゃあまず自転車っていうのは……」


 その時キャンプのどこかから爆発が発生して総員戦闘態勢になった。しかしその爆破は

偶然起きた事故だったと判明した。


 現在


「なんであんなことしたんだろうな……」


 アヤのことを思い出すと数日前のアヤとミシの襲撃が次に思い出していた。


 ーー操られていたかはたまた偽者か。もしくは……あいつらの本心か。


「違う!」


 周りに人がいるにも関わらずシュンは思いがけずその場で大声を挙げてしまった。無礼を詫びて周りに会釈すると最後に残った食事を平らげて水を一杯飲んで落ち着いた。


 ーー違うと言える根拠は?


「あいつらが俺を疑う根拠は?」


 二人が対面していたなら一触触発の状況だった。


「シュン様!馬車の用意が出来ました」


 エルフの一人がシュンを呼びに来て一触触発の状況は避けられたが関係が少し冷めたのは間違いなかった。


「行こう」


 続く

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不死鳥と竜の旋風 @glide

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