第2話 アイム・ノット・インラブ
反乱軍第五司令基地 オデジャー
前回の襲撃から二日が経過した。反乱軍は既存の基地を全て放棄。辺境の土地に新しい拠点を設立し備えていた。反乱軍に保護された若き少年シュンは眠りから覚め魔王の所業を知り反乱軍に入ることを決意する。彼に与えられた最初の任務はリーダーの奪還だった。
「司令!シュンに任務は早すぎます!」
司令室でアヤは外にも聞こえるくらいの大声で抗議していた。他の仲間より一足早く現在の拠点に着き、使用可能の状態にまで整備していたのが反乱軍臨時司令官のトヨクだった。
「彼はまだ反乱軍に来て日が浅い。魔王軍にはまだ全体に顔が広がっていない今だからこそできることだ。それに彼にも良い経験になる」
「ですが万が一戦闘になれば……」
「一切の戦闘は禁止する。潜入任務だ。人数も彼と君だけ二人でやってもらう。君が彼の護衛係になったのは聞いている。これで良いか?」
「ですが納得できません。彼はレジスタンスの中で唯一竜剣を扱える。もっと丁重に扱っても良いのでは?」
「今我々には人手が足りないことも知ってるだろう。今はどんなに優秀な兵士でも特別待遇するわけにはいかないんだ。話は終わりだ。任務は明朝だ。備えておきなさい」
「……了解」
アヤが退室する時いかにもわざとらしくドアを無造作に閉める大きな音が鳴った。
一方シュンは基地から離れた場所で反乱軍一の剣の使い手と言われているマコシシという男から竜剣ブシドーを使って稽古に励んでいた。
「毎日素振りを行え。最低でも百回。余裕があれば倍に増やせ。剣に振り回されてはいけない。その剣を扱う者として相応しい者になれ」
「はい」
「ではもう一度行くぞ」
シュンの身体はまだ貧弱なため両手で刀を持ち、上段から振り下ろすというのは野球のバットを使うのとはまるで違うと改めてわかった。マコシシが適当に木刀で当てていたがシュンはそれを受け止めるので精一杯だった。
「シュン。話があるの」
そこにアヤがやってきた。
「修練に励め」
それだけを言い残すとマコシシはアヤのもとにやってきたの。
「筋は悪くない。鍛えれば良い兵士になる」
「できればシュンに戦ってほしくない。ちょっと前まで戦いも知らなかったのに」
「あいつが選んだ道だ。それか、あの竜剣に選ばれる運命だったか」
そしてマコシシは去っていくとシュンとアヤの二人だけになった。
「あれから調子はどうなの?」
「変わらない。刀を持っても倒れることは無いし、アヤやミシが言ってたように炎を纏ったり紅くなったりすることはない。何か知ってる?」
「私たちも伝承でしか知らないの。リーダーなら何か知ってるかもしれないけど、今生きてるかどうか……」
するとシュンはアヤの肩に手を置き、笑顔と共に言った。
「大丈夫。なんでか知らないけどそんな気がする」
アヤの心は少し締め付けられた。優しい笑顔をするシュンを見ているとその笑顔を守りたいとより一層感じてしまい、危険な目に遭わせたくないと思ってしまうからだ。しかし本人の意思を尊重する以上危険な道は避けては通れない。
「アヤ。明日の事なんだけどちょっと試したいことがあるんだ」
翌日
馬車には男が、荷台にはボロい布を来た女性が小さな街に着いた。男はフードを被って顔を見えないようにしていた。馬車はまっすぐ街の中央の塔に着いた。塔には門番が一人だけ立っていた。
「何のようだ」
「捕虜の収容にやって来た者です。これ紹介状」
男は門番に丸まった羊皮紙を渡した。
「そんな知らせは受けていないが中身を確認させてもらう。捕虜の人数は?」
「一名です。それもとびっきり大物」
門番が荷台を覆っていた布の間から中を覗いた。その正体に気づくと門番の胸の中は昂った。
「どこで捕らえた」
「西にある森林地帯。毒か何かで倒れてるところを解放してるうちに……」
男は片手を握り拳に、もう片方は人差し指だけを出して握り拳の周りを回した。要するに首を縄で絞めて捕らえたというジェスチャーである。
「もしかしたらまだ何人か仲間がいるかも」
「わかった、通れ。後で兵を何人か送ろう。裏に回れ」
男は馬車を塔の裏側に移動させると兵士が二人ほど待機していた。
「ご苦労。もう行っていいぞ」
兵士の一人が何かが入った小さな麻袋を男に投げた。中には金貨が六枚ほど入っていた。
「おい、これじゃあ足らねぇだろ。そいつを捕らえるのに一体どれだけの苦労したと思ってんだよ」
「うるさい。お前の仕事は済んだ。痛い目に遭う前に帰れ」
「せめてあと二倍は欲しいね。じゃないと……おい、触るんじゃねぇよ!」
男は後からやって来た三名の兵士に取り押さえられた。そして捕虜と一緒に塔に連れて行かれた。
「言っておくが俺は心臓に病を持ってるんだ。手荒な真似して発作でも起こしたら訴えてやるからな」
「黙れ。捕虜は同じ部屋に。こいつは取調だ。金貨を持って帰ってもらう前に調べさせてもらう」
捕虜は牢へ、男は隣の塔の取調を受ける部屋に連れて行かれた。捕虜が牢へ引きずられていくと無造作に牢に投げ込まれた。
「あなた……大丈夫ですか?」
牢には先客がいた。捕虜と同じくボロい布切れを着せられていたが顔立ちは少々の傷はあったが美しさを保っていた。
「いたた……強引に引き摺らないでよ……」
「大丈夫ですか?」
「リーダーアミヤ。私をお覚えですか?」
「アヤさん!?」
囚われていたのは反乱軍リーダーの娘アミヤ。そして今やって来た捕虜の名は反乱軍特殊工作隊隊長アヤ。
「静かに。お怪我はありませんか?どこか具合が悪いとかは?」
「この通り大丈夫よ。あなたも捕まってしまったの……?」
「いえ、助けに来たのです。私ともう一人新しい仲間が。早くここから出ましょう」
アヤは布切れの下から一枚の紙を取り出してそれを破いた。すると小さな煙と共に針金のような物が二本出現した。アヤはその針金を鍵穴に刺して解錠作業を始めた。そして小声で今日までのことを話した。
「あなたに聞きたいことが山ほどあります。竜剣の伝説はご存知ですよね?実は少し前に竜剣で我々を助けてくれた人物が現れました」
「本当ですか!?ならすぐに会わなければなりません」
「実は……その人が一緒に来た新しい仲間で……今取調を受けてます」
一方男……ではなくシュンは
「街の医者に伝えろ!急病人だ!」
「な、なんて伝えれば!?」
「そのままのとおりだ。持病だが心臓発作だかとにかく伝えろ!」
シュンは事前に仕込まれていた発泡性の胃薬を飲み口から泡を噴いて、ついでに痙攣を起こした演技で現場を混乱させていた。一方アヤの方は解錠に成功した。
「リーダー。これを」
アヤはアミヤの頭に札のようなものを貼った。するとアヤの目からアミヤが消えた。
「これで姿が見えなくなります。ですが声と足音は聞こえるのでゆっくり行きましょう」
アヤも札を貼り透明になった。そして塔の入り口付近で止まった。
「どうしたの?」
塔にそれぞれ二人の服装の異なる人物が入って来た。一人は兵士だがもう一人は白衣とバッグを持っていた。医者である。アヤは二人が通り過ぎたのを確認して後ろから襲い気絶させた。
「これも作戦です。リーダーは兵士の服装を。私は医者に変装します」
「これから何を?」
「シュンというもう一人の仲間が病人を装って別の場所にいます。今から回収しに行くんです」
「そのための変装ですね。わかりました」
シュンが偽の発作を起こしてから二、三分後。担架で本塔の簡易医務室に運ばれたシュンと兵士達は医者が来るのを待っていた。そしてようやく兵士の一人が医者を連れてきた。
「症状は?」
「いきなり泡を噴いたんです。それに……うわっ!?」
室内にいた一人を除いて兵士三名が瞬く間に気絶した。
「シュン。もう良いよ」
「作戦は?」
「大成功。どうやってこんな作戦思いついたの?」
「映画だよ」
またしてもアヤの知らない単語が飛び出してきた。シュンの国の文化のようだと思い起こした。
「シュン。この方が私達の指導者。リーダーアミヤ」
「あなたが竜剣の持ち主ですね。剣はどこに?」
「ここです」
シュンはアヤと同じ紙切れを取り出して同じように破くと竜剣が現れた。
「間違いありませんシュンさん。あなたは竜剣に選ばれし者です」
「どういう意味ですか?」
「今はここを脱出する方が先です。後の作戦は?」
シュンは再び担架に寝転び、医者と兵士に変装したアヤとアミヤがそれを馬車に運んだ。シュンとアミヤを荷台に入れてアヤが馬を走らせた。無事作戦成功である。
「リーダー。もう大丈夫です」
「感謝しますアヤさん。シュンさん。背中を見せていただけませんか?」
先日
シュンとアヤは新たな基地でも同室だった。二人一部屋のため比較的広い部屋だったが異性同士との生活は初日から苦労していた。そして早速先日と同じことが起きた。そして気まずくなっていた。
「その……シュン……女の子の裸を見るのって……どんな気分……?」
「えぇっと……なんて答えたらいいの?それ」
「私も……わかんない」
シュンは
ーーどうやったらあんなに大きくなるんだ……?
とアヤのある部分に対して疑問を感じていた。一方アヤは
ーーシュンって……ココが大きい女の子が好きなのかな……
と何とも言えないことを思っていた。アヤがチラッと背を向けていたシュンを見ると服の隙間から赤い何かが見えていた。
「ねぇシュン。背中の赤いの何?」
「え?赤いの?」
シュンは背中に手を伸ばして服を上にあげてアヤに背中を見せた。シュンの背中には赤く燃え上がる炎のようなタトゥーがあった。
「どうなってるの?」
「何か炎みたいな模様がある。見覚えないの?」
「無い」
「うーん……あくまで予想だけどシュンが竜剣を手にしたことで現れたって可能性が高いわね。もしかしたらリーダーが知ってるかもしれないわ」
「今囚われてる反乱軍のリーダー?」
「元は古代の歴史学者一族でこの国の誕生を記した神話である竜国創世神話を研究してた。竜剣ブシドーはこの国に伝わる伝説の剣としてお伽話に出てくるわ」
「じゃあもう一つの国の不死鳥国だっけ?そこにも伝説の剣みたいのはあるの?」
「もちろんあるけど伝承が少ないって噂だわ。で、この炎みたいな紋章って何か影響あるの?」
「今のところ何も感じないかな」
シュンはブシドーを持った時の反応を確認するためにブシドーを召喚して手に持ったり抜刀したりしたが何も反応はなかった。
「自由に出し入れはできるようになったみたいね。それだけでも充分な進歩だわ」
「何故か頭の中で使い方が浮かんで来るんだ。こいつが生きてるみたいに」
「それも明日聞いてみましょう。無事に作戦を成功させて」
現在
「その背中の紋章はあなたが竜剣に選ばれた証であり、あなたが世界を救う運命にあるということです」
「僕が……世界を救う?ありえない。剣術だって碌に知らないし、何より僕のような非力な人間が世界を救うなんて無理だ。せいぜい反乱軍の一兵士が精一杯さ」
「竜剣はあなたを選びました。それはあなたがそれに見合う実力を持っているということです。今は自覚が無いかもしれませんがいつかその時が必ず来ます」
何を言われても納得ができなかった。これまで冴えない生き方をしてきたシュンはいつも目立つことは避けて生きてきた。そんな自分が表舞台に立つようなことは到底不可能な話であった。陰こそが彼の輝く場所だった。
「シュン!外を見て!」
アヤの声を聞きシュンは隙間から外を見た。外からはシュンを追っていたライダーが三人後を追ってきていた。
「基地まで距離が無い……場所を知られたらマズイ……シュン、悪いけど前に……」
アヤの言葉を聞く前にシュンは荷台から飛び降りた。勢いで少し態勢が崩れそうになったが何とか姿勢を保って着地した。そしてあの時と同じ状況になった。
「小僧。やはり反乱軍の者だったか」
「反乱軍っていっても少し前に入った見習いだけど……」
「貴様のような小僧を相手にするなら地に足をつかずともできる。が、あえてここはそうしよう」
一人のライダーが馬から降りると他の二人も降りた。依然囲まれていることには変わりなく。シュンはブシドーを構えた。
「ふん。度胸はあるようだな。二人は下がってろ」
ライダーの一人が他に指示を出すと自ら剣を取った。
「何のつもりなんだ?」
「貴様の度胸に免じて一対一で勝負するというのだ。俺が負ける気は無いがな。まぁ先に攻撃する権利は許そう」
シュンはブシドーを抜いて十センチは差のある相手に最初は上段で攻撃した。しかしまだブシドーに振り回されているシュンの太刀筋をあっさり読まれているため全ての攻撃が未然に防がれてしまっていた。
「息があがっているな。未熟者」
「はぁ……はぁ……当たらなくたって……防がれたって……いいさ。時間は稼げるんだから……」
「ふむ、殿のつもりか。だが」
その時初めて相手側から攻撃してきた。下段から上に向かって剣が振り上がるのをシュンは受け止めれたが力の強さのあまりに空中に打ち上げられ、地面に落下した。
「この程度で殿か。小僧。あいにくだが三分も時間を稼げていない。本当の戦いというものを見せてやろう」
シュンが立ち上がろうとした瞬間相手が間髪入れずに攻撃してきた。訓練ではある程度手加減してくれていたが実戦ではそんなものが通用するわけもなく受け止めるので精一杯だった。しかし受け止めきれずに遂に腹部を斬られた。
「小僧。残念だが今のお前では俺には勝てない。恨みはないが死んでもらう」
剣を振り下ろそうとした瞬間最後の力を振り絞ってシュンは剣を受け止めた。
「たとえ……負けそうな戦いでも……それが……誰かの勝利に繋がるなら……僕は………戦い続ける!この身体が……動かなくなるまで!」
その時刀身が鈍色に輝くとシュンの周りに炎が巻き起こり、火柱となって天を突き抜けた。
「な、なんだ!?」
火柱が弱まり中からシュンが出てきたがその風貌はシュンと呼び難いものだった。紅いロングコート、ところどころ金の装飾、そして背中にはシュンに刻まれた紋章と同じものが描かれていた。そしてその眼光はシュンの優しさや勇気を感じるものではなく、自身と強さを兼ね備えた鋭いものになっていた。
「誰だ!?」
「我は烈火にして疾風、剛烈にして鮮烈、我が竜の剣において貴様を焼き払わん!」
その声はシュンの声であったが明らかに違ったものに感じていた。それはシュンに何かが乗り移ったようなものであった。メラメラと燃える炎を纏ったブシドーを天高く掲げると炎も先程の火柱と同等の規模になった。シュンは炎を凝縮しそれを力一杯振り下ろすと受け止める暇もなくシュンを襲っていたライダーは吹き飛んだ。
「隊長!」
「貴様……覚悟!」
兵士の一人がライダーにもう一人がシュンに襲いかかった。兵士が剣でシュンの心臓を突き刺そうするとシュンは鞘でそれをいとも容易く払い除け、懐がガラ空きになったところを斜めに斬り落とした。敵兵士の一人はあっさり斬られたがそれだけではなく斬られた箇所はすでに灰になっており、それがみるみる広がっていった。それを見たライダー二人は即座に撤退した。
「シューン!」
小さな戦いが終わるとアヤが馬車に乗ってやってきた。相変わらずアミヤを乗せていた。
「シュン……って、誰!?」
「誰とは何だ。失礼な小娘だ。俺はお前より遥かに生きているんだ。少しは口を慎め」
ーー口悪っ!
「えーっと……私の名前はアヤって言います。あなたは?」
「我の名はケンセイ。竜剣ブシドーに封印されていた剣士だ」
「えーっと……その身体の持ち主は……?」
「ちと待っておれ。時間切れで交代する」
ケンセイと名乗るシュンが剣を収めると一瞬で元のシュンに戻った。
「えーっと……なんか……色々恥ずかしいセリフを言った気がする……」
そんな言葉を他所にアヤはシュンを抱きしめた。
「バカ……!」
「ごめん。でも、やらなきゃいけないと思って気づいたら身体が勝手に飛び出たんだ。本当にごめん」
「もういいよ……」
二人……ついでに荷台にもう一人は増援が来る前にその場から撤退して基地に戻った。
翌朝 執務室
「お呼びですか、将軍」
「あぁ。適当にかけたまえ。まずは先日の任務ご苦労だった。リーダーが戻ってきたことで兵士たちの士気も一層高くなった。君には感謝してるよ」
「恐れ入ります。それを言うためにお呼びを?」
「今回の君の業績を踏まえてある場所に行ってもらうことになった。ここだ」
将軍がシュンに地図を投げ渡すと右端に書かれている丸で囲われてる地域に目が入った。
「君には魔王軍の魔力採掘基地の攻略を任命する」
「えーっと……魔力採掘基地……といっても名前は理解できるんですけどあまりパッと浮かばないような……」
「君の国には魔力がないのか。まぁいい。魔王軍の兵隊の八割は異種族で構成されている。君が昨日交戦したライダー以外の兵士はみな人の見た目をしているがあれはゴブリンと呼ばれる元は蛮族風情の種族だ。そしてその異種族の力の源の一つと言われているのがこの施設で発掘される魔力が込められた石だ。我々にとってのご飯だ。ここを陥落させれば敵の士気は下がり、劣勢になるだろうと予想している。この任務を指導者救出の大きな功労者である君に託したい」
「考える暇は……無さそうですね。わかりました。行きます」
「現地では先遣隊が既に作戦行動に出ている。現場に着いてからはその場で指示を仰ぐように。そこでだ、君はミシを知ってるかな?」
「えぇ。何度かお世話になりました」
「彼女の役職は研究開発班班長なんだが君のために最新装備を開発したというんだ。いずれ兵士全員に採用を検討しているらしい。出発は一週間後だ。それまでここで修練に励むといい」
「わかりました。失礼します」
研究開発室
「おー来たか。待っとったでシュン」
「ミシ。将軍から最新装備を開発してるって聞いたんだけど」
「そのことで話したいことが山々やったねん。きっとあんさんも気に入ってくれるわ」
最新装備は研究開発室とは別室の部屋に保存されていた。
「反乱軍って聞いて小規模な組織やと思ってたら大間違いやで。魔王軍の敵は多いから支援組織も多いんや。これは魔力を内蔵させたロングコートや。つってもこれらの魔力関係の技術なんかは匿名で送られてきたもんやけどな。手紙も同封されててあんた用に作ったって書いてあったねん。それ聞いてアヤちゃんは」
ーーそんな怪しいものをシュンに着せるなんて反対よ!!
「なんて騒いでたけどうちのあんさんと体格が似てる兵士にテストさせて無事安全やって証明された。着てみ」
シュンはまるで自分のために作られたような黒のロングコートを着た。着心地はまるで高級ブランドの服を着たかのように今まで着てきたものより遥かに良いものだった。
「似合ってるやん。一緒に送られてきた説明書によると使える魔法が四つ程あるらしいねん。後で試してみ。次はウチら研究開発班が総力を上げて作った傑作や。昨日アヤちゃんがちょっとした紙から色んなもん取り出してたやろ?」
「あぁ」
「あれもウチらが開発したもんなんやけど原理的には事前に別次元に送ったものをあの紙に書いて破るとそれがこっちにやってくるって仕掛けや。ただ紙自体を濡らしたり燃やしたりしたら効果が切れて送ったものが永遠に戻ってこないってことが起きんねん。そこで燃えもしないし濡れもしない最高品質の紙を開発したんや。使ってみ」
シュンは渡された折り紙くらいの大きさの紙を破った。すると出てきたのは黒色の布。というより誰かの下着だった。
「え……何これ……」
するとアヤがノックと一緒に入ってきた。
「ミシー。新しい紙を補充したいんだけど……」
部屋に入るとミシとシュンがいるのに気づいたがその僅かコンマ数秒後にシュンの手にしているものを見て思考が停止した。
「それ……私の……」
「え……えぇ!?」
「いやぁ〜実験としてこれくらいの大きさの方がちょうど良いから使わしてもらったわ。大きすぎず小さすぎないからな」
「ミシー!!!!!」
続く
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