夢喰い隊 バク
@hero180622
夢喰い隊バク 読み切り
「これ、あいつの記憶か?」
長身の男が少女に尋ねた。
「あぁ、消された記憶は一定期間、保管してある。」
「見てもいいか?」
どうやら男と少女は親しい仲のようだ。
「気に入ったのならあいつの記憶は消さなきゃよかったのに。」
少女は肩をすくめる。少女がする行動ではない。
「一応規則だからな。」
そういうと、男は投影機に一枚のBDを差し込んだ。
「さて、今日も寝るか。」
僕はユウキ、中学2年生、勉強も、運動もそこそこで、ゲームが大好き。いわゆる普通ってやつだ。だが、それを恨んだりしたことは1度もない。むしろ満足している。目立ったりするよりは、何気ない日常を平穏におくる。これが1番だ。そんな僕は健康を重視するため、毎日きちんと寝る。夜10:30、もう寝る時間だ。
「ん?何だ、これ。」
何気なく、YouTubeを開いたら一本の動画を見つけた。タイトルは「明晰夢の見方」というもの。誰にも何も言われない夢の中ぐらい少し自由に動いてみたいな。その時、僕はそう思ってしまった。
「見てみるか、明晰夢を見られなくても安眠効果あるかもだし。」
動画を開くと、ピーッという電子音が流れた。けたたましい音であったのだが、それを聞いた僕は意識を失ってしまった。
意識がはっきりすると、そこは家ではなかった。どこかの路地だろうか。ビルが立ち並び、周りには街灯もある。だが、現実ではないと言い切ることができた。なぜなら人がいないのだ。いや、人の気配もしない。これが夢だとハッキリとわかった。
「おぉー、すげぇ!ホントに夢の中だよ!」
思わず叫んだ。自然と興奮してしまった。この世界は思いのままなのだ。そうだな、まずは空でも飛ぶかな。と考えていたときだった。
とてつもなく大きいエンジン音が聞こえた。おそらくバイクだろう。
「なんだ、なんだ。現実で自宅の周りに輩がたむろってるのか。」
きっと夢に干渉するほどの爆音なのだろう。音の方からライトも見え始めた。随分とリアルだ。まったく、バイクの輩はお呼びじゃないのに。
「はぁ、念じれば消えるかな。ふん!」
目を閉じて念じてみた。しかし、消えない。そうこうしている内にバイクがどんどんとこちらに迫ってきた。スピードを緩める気配がまったくなかった。僕の視界がライトで真っ白になるった。
「え、死ぬ?」
あぁ、夢ぐらい楽しませろよな。と諦めかけた瞬間、僕の前でドリフト停車した。
全身黒で整えられた服を着た男がフルフェイス越しにこちらを睨んでいるのがわかった。男がバイクから降りると荒い口調で言った。
「che cosa. Non è ancora un bambino.(なんだ、子供じゃないか)」
なにを言っているのだろう。日本語じゃない言語だ。
「ah? Non mi senti? Prestami un po'.(なんだ?聞こえてないのか?ちょっと待ってろ)」
男が近づいてきた。まずい、相手は身長190近くある。スラッとしているが服越しにでも筋肉がわかった。バイクはつっこんでこなかったが、このままやられて夢が覚めてしまうのだろう。男はポケットに手を入れ、何かを取り出した。それを持った手で僕の耳を掴んだ。
「おーい、これで聞こえたか?」
ん?なんだ、日本語になった。男は僕の耳に補聴器のようなものをつけたようだった。
「ふぇ?」
想像していたこととまるで違うことが起き、変な声が出た。
「くくっ、何情けない声出してんだ。聞こえるようになったみたいだな。よし、じゃあこっちこい。」
明るめの声でしゃべり、男はフルフェイスを外した。
すると、金髪に青い瞳の25歳ぐらいの顔が現れた。なんだ、怖い人じゃなさそうだ。そう思った僕の首に、男は腕を回し、バイクの方へと連行し始めた。
「あ、あの?これ、僕の夢の中ですよね?」
僕は男に引っ張られながら尋ねた。中学2年を余裕で引っ張るなんてなんてパワーだ。かなり細身に見えるけど。
「ん?あぁ、そのとおりだ。ここはお前の夢の中だ。」
おかしい、じゃあこの人はなんだ。現実で会った覚えもない。そんな人が夢にあらわれるのか。
「あれ?僕、こんな怖い人を夢に呼んだ覚えは…」
「んー?なんだって?」
男の腕に力が入り、首が締まった。
「じぬっ、」
僕がタップすると、男は力を緩めたと同時に僕を解放した。少しふざけただけなのに、なんて男だ。
バイクによりかかると、男は僕のことを上から下になめるように観察した。
「お前、意識を持ったままここに来るのは初めてか?」
男は尋ねてきた。抵抗するだけ無駄だと察した僕は激しく縦に首を振った。
「そうか、名前は?」
「ユウキです!」
「年齢。」
「14です!」
男は淡々と質問をし、僕が短く答えるという会話のラリーが続いた。まるで職質だな。なんだ、この人。僕の情報を紙に書き込んでいるようだけど。というか、どこからその紙出したんだ?
「よし、じゃあ充分楽しんだら、これを鳴らせ。」
そう言うと、男は僕に防犯ブザーみたいなものを投げて渡した。おそらくピンを引き抜けば音が鳴る構造だろう。
「それが鳴ったら、俺がまた来るから。俺がいないと目覚めることができないからな。なくすなよ。」
男はそう言い放つと持ち物を片付け始めた。
なんだ、これで解放?解放されるのは嬉しいけど、そもそもこの人はなんなんだ?なんでなにもないところから紙が出たんだ?他にも聞かなきゃいけないことがたくさんある。このまま帰すわけには。
「えっ、えっと、僕はどうしたら?」
とりあえず場をつなぐ質問をした。
「あっ?好きにしろよ。」
しかし、男は僕に興味がなくなったという雰囲気だ。やばい、男は帰る気まんまんだ。なんとかしなければ。
「あ、えぇっと、ぼく、ついていきます!」
僕は咄嗟に言った。
「あ?」
せっかく仕事を終えたのにという怒りの視線で男が僕を見つめた。正直言って怖い。あまりにも突拍子のない提案だ。断られるのがオチだろう。しかし、男の反応は違った。
「くそっ、今すぐ撤回しろ。ここじゃお前の権限の方がつよい。ここはお前の夢だからな。お前が撤回しないと、俺は一人でこの夢を出られない。」
なんだって!権限云々はよくわからないが、これはラッキーだ!このままついていこう!
「いやです!訂正しません!」
僕は堂々と言い返した。ここでは僕の権限の方が強いのなら、襲われても何とかなるだろう。
「ちっ、仕方ないか…」
男はため息をついた。どうやら、諦めてバイクの後ろに乗せてくれるようだ。男が先にバイクにまたがった。そして、僕が後ろに乗ろうとした。
「ばか、よくわからないガキを後ろには乗せねえよ。」
怒られてしまった。紙と同様に男はなにもないところからサイドカーを出した。物理法則がないのか?この世界は。まぁ、確かに現実の僕は物理が嫌いだけど。僕がサイドカーに乗り込むと、男はエンジンをかけた。
色々勘ぐる前に聞いておくべきことがあったことを僕は思い出し、恐る恐る尋ねてみた。
「あの、まず一つだけ聞いてもいいですか?」
「ん?なんだ?」
少し不機嫌そうだが、男は質問には答えてくれそうだ。
「あの、お名前は?」
もしかしたら知っている人かもしれない。名前を聞けば思い出すことがあるかもしれない。
「言ってなかったか。パジエンザだ。パジでいい。」
「パジさんですね!よろしくおねがいします!」
知らない人だ、たぶん。すれ違っただけでも頭に残っているらしいがこんな人が町中にいたら目立つだろう。僕がいろいろ考えこんでいたら、パジさんはポケットからグローブを取り出した。
「俺は忙しい。大人しく座ってろよ。落ちても知らん。」
そういうとパジさんは取り出したグローブをつけ、フルフェイスをかぶった。誰もいない街にバイクのエンジン音が響いていた。
バイクが発進してもしばらくビル街が続いた。さっそく色々聞かなければ、現状を把握して遊べるとわかったら思い切り遊ぼう!ついていくことにしたけどこの人危ない人に見えなくもない。離れられるなら離れるに越したことはないだろう。
「あの、さっきからサイドカーとかフルフェイスとかどうやって出してるんですか?」
「…」
あれ、質問には答えてくれる気配だったのにな。
「あの!」
先ほどよりも大きな声で話しかけたが、反応がなかった。ダメだ、フルフェイスを装着した上に改造されたバイクの鳴らす爆音で聞こえていなかった。無視されたことに腹を立てた僕はあれを使った。
「止まれ!」
僕は大声で唱えた。キィッという急ブレーキ音とともに、バイクが急停止し、パジさんは飛ばされそうになった。
「てめぇ、何しやがる!」
フルフェイスをあげ、パジさんが僕を怒鳴った。
「仕方ないじゃないですか!パジさんが質問に答えないんですから!」
僕も声をはった。先に無視したのはそっちだろ。それにいざとなったら夢のパワーでちょちょいと。
「訳はわかったが、急ブレーキはやめろ!」
それをわかっているパジさんはしぶしぶフルフェイスを外し、ヘルメットとゴーグルのスタイルに変えた。ノーヘルでもいいのではと思うがルールは守る性格なのだろう。その間に僕は止まれの指示を撤回した。
パジさんがエンジンをかけると再びバイクは動き出した。
「で?質問ってなんだ?」
フルフェイスを外したことでなんとか会話ができそうだ。
「それですよ、それ!」
僕はヘルメットを指さした。僕の夢のなかのはずなのにいろいろものが出てくるのは変だ。
「あ?それってなんだよ。」
パジさんはなにを言っているのかわからないといった様子だった。それでも説明の義務があるはずだと思い、僕は問い詰めた。
「ヘルメットとか僕が乗ってるサイドカーとかどこから出してるんですか?」
僕は伝わるように身振りを加えて質問した。
「あぁ!」
名前を聞いたときのように、俺、言っていなかったかという様子だった。この適当さがこの人の性格なのだろう。
「これはAPウォッチっていうもので出している。この腕時計型の機械から制限付きだが好きなものが出せる。食料とか必需品はこれから供給されるシステムだ。」
パジさんは平然と言った。だが、今の返答でもっと疑問が増えた。
「必需品ってパジさんはここで生活しているんですか!?」
腕時計型の機械は夢だからという理由で済むけど、寝ている間だけなら食料と必需品はいらないはずだ。
「あぁ、それも言ってなかったか。」
またこの反応だ。適当の域を超えているぞ。さては変人か、この人。
「俺は夢喰い隊バクっていう夢の世界の警察みたいなもんに所属してる。お前みたいな明晰夢を見ているやつの身元確認と夢からの見送りをすることが多いな。俺の他に数人いるがまぁ俺と違って変人ばっかりだ。」
そう言ったパジさんだが、この人には自分が変人という自覚はないのだろう。まぁパジさんみたいのがあと数人いるってことにしておこう。
「つまり任務のためにここで生活しているってことですか?」
聞きたいことは多いが一つ一つ質問していこうと思い、僕は冷静に質問した。
「まぁ、だいたいそうだと思ってくれ。あとはこの仕事を真面目にこなしてれば、必需品以外も制限なしでもらえるようになる。俺の愛車もそれで手に入れた。」
そう言ったパジさんは今までで一番満足げな表情だった。確かにバイクはこの仕事の必需品に思える。だが、爆音のなるマフラーなどなどこの改造はいらないな、絶対に。
「よし、そろそろ夢から出るぜ。夢の出入り口はトンネルで隣の夢に入ることもできる。トンネルを出でたら、降ろすからな。」
まだまだ質問し足りないが仕方ない。下手に邪魔すれば強制的に夢の世界から帰らされるかもしれない。大人しくしておこう。
バイクがトンネルに入った。三大珍味を食べてみる、空を飛んで見る、かめ〇め波も出したいな。などと降ろされたあとのことを考えていたが、一向にトンネルの終わりが見えなかった。最初は長いなとしか思わなかったが、どうやらパジさんも違和感を覚えたみたいだ。顔に焦りが見えた。
「あの、大丈夫ですか?」
僕は試しに聞いてみた。もちろん大丈夫の三文字が帰ってくると期待していたが、結果は真逆だった。
「いや、大丈夫じゃねえ、しかもユウキ、お前もこのままじゃ帰れない」
「えっ、どういうことですか?」
驚きのあまり、サイドカーから少し身を乗り出した。パジさんが大丈夫じゃないなら僕はもっと大丈夫じゃないということだ。
「俺が約束したからだよ、トンネルを抜けたら、ユウキを降ろすってな。しかもあれはユウキの夢の中だ。ユウキにしか撤回できない。しかもこの夢、引き返せないようになっている。」
制約の不具合のようなものか。
そういうとパジさんはバイクを止め、ヘルメットをはずした。そして一服しようとAPウォッチからタバコを出した。
「引き返せないってどうゆうことですか。」
パジさんが僕の横を指差した。すると、そこには入る前はなかった線路がひかれていた。
「ユウキは猿夢って知ってるか?」
タバコに火をつけると落ち着いて様子でパジさんは僕に尋ねてきた。
「一応知ってますよ、でもあれって都市伝説ですよね?」
こう言ったが、僕は感づいていた。僕の横には確かに線路があり、猿夢は列車が舞台なのだから。
「いや、あれは存在する悪夢だ。以前駆除したもののレポートが何らかの形で現世に流失したために広まったんだろう。おかげでここ最近、猿夢関連の悪夢報告が一気に増えた。いい迷惑だ。」
タバコを吸いながら、事情聴取のときとは違う雰囲気ではあるが淡々とパジさんは喋った。
「ちょっとまってください。駆除って。」
また言ってなかったかの論調かと思っていたが今回は違った。僕からみてもわかるほどパジさんの顔つきが変わった。
「いいか、ユウキ、一応夢を出るときに記憶を消すのが通例だが、キレイに消えないときがある。だから必ず他言無用だ。いいな?」
「わ、わかりました」
急に真面目な顔で詰め寄られ、僕はよく聞かずに返事をした。いや、せざるを得なかった。唾をのんでパジさんの話を聞くことにした。
「俺たちの仕事については説明したが、あれは隠していた部分がある。明晰夢の処理はあくまで副次的な仕事だ。俺たちの本職は夢喰いだ。」
「夢喰い?夢を食べるんですか?」
あまりにも聞きなれない単語に話を遮って思わず質問してしまった。それほどに僕は困惑していた。
「いや、正確には食べない。しかもいい夢に干渉することもない。俺たちは悪夢の原因となる怪異の駆除を行う。それが本来の仕事だ。」
あまりにも現実離れした内容で僕はすぐには理解が出来なかった。夢にも管理者がいたこと。それに僕は知らないうちに守られていたこと。会話をするごとに夢について知らなかったことが明らかになっていった。
「で、さっきの話に戻る。猿夢は悪夢の1つで駆除の対象だ。そして猿夢がこの夢にいる。しかもかなりマズイ状況だ。この夢はすでに第2夜の状態、下手を打てば夢を見ている人間が死にかねない。」
「死ぬって夢でだけじゃなくて現実でも死ぬってことですか。」
タバコの煙を細く吹き、こくりとパジさんはうなずいた。
「しかもその夢の中にユウキ、お前を巻き込んでしまった。」
つまり、僕も死にかねないということか。くそっ、まだまだし足りないことが山ほどあるのに。
「どうする?これはユウキの判断に任せる。ユウキにとって言ってしまえばこの夢を見ている人間は赤の他人。死んだところでユウキに影響はない。だからこのまま帰るというのなら、俺は止めない。ユウキを送り届ける義務が俺にはある。」
そう言われ、数秒、固まる。確かに帰るのがいいのだろう。でも、僕の中で、とある言葉引っかかった。僕にとって赤の他人。確かにそうだ。だけど、そうだけど。このまま見過ごすなんてできない!
「パジさん、僕にもAPウォッチください」
僕は勇気をもってパジさんに言った。もしかしたら僕の方がパジさんよりも変人かもしれない。
「いいのか?」
と、全てを察してパジさんは言った。僕はなんとか笑顔を作ろうとした。
「僕は厨ニですから。想像力勝負なら任せてください!」
漫画のようにはいかない。きっとこう言った僕は震えていただろう。うまく笑顔がつくれていなかったかもしれない。
「厨二だって?くくっ、安心しろ。何があってもユウキのことは俺が守る。」
タバコを吸い終え、パジさんが再びバイクのエンジンをかける。トンネルにバイクのエンジン音が響いていた。
私は、夢をみていました。何故か私は薄暗い無人駅に一人いました。ずいぶん陰気臭いを夢だなぁと思いました。すると急に駅に精気の無い男の人の声でアナウンスが流れました。それは
「まもなく、電車が来ます。その電車に乗るとあなたは恐い目に遇いますよ~。」
と意味不明なものでした。
まもなく駅に電車が入ってきました。私はどうも変な夢だなと思いつつも、自分の夢がどれだけ自分自身に恐怖心を与えられるか試してみたくなりその電車に乗る事に決めました。本当に恐くて堪られなければ、目を覚ませばいいと思ったからです。私は電車の後ろから3番目の席に座りました。辺りには生温かい空気が流れていて、本当に夢なのかと疑うぐらいリアルな臨場感がありました。
「出発します~。」
とアナウンスが流れ、電車は動き始めました。これから何が起こるのだろうと私は不安と期待でどきどきしていました。
電車はホームを出るとすぐにトンネルに入りました。紫色ぽっい明かりがトンネルの中を怪しく照らしていました。とその時、またアナウンスが流れました。
「次は活けづくり~活けづくりです。」
活けづくり?魚の?などと考えていると、急に後ろからけたたましい悲鳴が聞こえてきました。振り向くと、電車の一番後ろに座っていた男の人の周りに四人のぼろきれのような物をまとった小人がむらがっていました。よく見ると、男は刃物で体を裂かれ、本当に魚の活けづくりの様になっていました。強烈な臭気が辺りをつつみ、耳が痛くなるほどの大声で男は悲鳴をあげつづけました。男の体からは次々と内臓がとり出され血まみれの臓器が散らばっています。
私のすぐ後ろには髪の長い顔色の悪い女性が座っていましたが、彼女はすぐ後で大騒ぎしているのに黙って前を向いたまま気にもとめていない様子でした。私はさすがに、想像を超える展開に驚き、本当にこれは夢なのかと思いはじめ恐くなりました。気が付くと、一番後ろの席の男はいなくなっていました。しかし赤黒い、血と肉の固まりのようなものは残っていました。
うしろの女性は相変わらず、無表情に一点をみつめていました。
「次はえぐり出し~えぐり出しです。」
とアナウンスが流れました。すると今度は二人の小人が現れ、ぎざぎざスプーンの様な物でうしろの女性の目をえぐり出し始めました。さっきまで、無表情だった彼女の顔は、痛みの為ものすごい形相に変わり、私のすぐ後ろで鼓膜が 破れるぐらい大きな声で悲鳴をあげました。眼かから眼球が飛び出しています。血と汗の匂いがたまりません。
私は恐くなり震えながら、前を向き、体をかがめていました。ここらが潮時だと思いました。これ以上付き合いきれません。しかも、順番からいくと次は3番目に座っている私の番です。私は夢から覚めようとしましたが、自分には一体どんなアナウンスが流れるのだろうと思い、それを確認してからその場から逃げる事にしました。
「次は挽肉~挽肉です~。」
とアナウンスが流れました。最悪です。どうなるか、容易に想像が出来たので神経を集中させ、夢から覚めようとしました。夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ。急にウイーンという機会の音が聞こえてきました。今度は小人が私の膝に乗り変な機械みたいな物を近づけてきました。たぶん私をミンチにする道具だと思うと恐くなり、夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろと目を固くつぶり一生懸命に念じました。ウイーンという音がだんだんと大きくなってきて、顔に風圧を感じ、もうだめだと思った瞬間に静かになりました。
なんとか、悪夢から抜け出す事ができました。全身汗でびしょびしょになっていて、目からは涙が流れていました。私は、寝床から台所に向い、水を大量に飲んだところで、やっと落ち着いてきました。恐ろしくリアルだったけど所詮は夢だったのだからと自分に言い聞かせました。
そして次の日の晩、また始まったのです。
「次はえぐり出し~えぐり出しです。」
あの場面からでした。私はあっ、あの夢だとすぐに思いだしました。すると前回と全く同じで二人の小人があの女性の眼球をえぐり出しています。やばいと思い、夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろとすぐに念じ始めました。今回はなかなか目が覚めません。夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ。
「次は挽肉~挽肉です~。」
いよいよやばくなってきました。ウイーンと近づいてきます。夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ、覚めてくれ。
すると、パリーンと窓が割れる音がしました。思い切って目を開けると、割れた窓から外国人の男性が飛び込んできました。
「おぉ、クソざる、てめぇの夢気分もここまでだ。」
男性が決め台詞を言い切ったタイミングで、後ろから私と同い年ぐらいの男の子が外国人に飛び蹴りしながら、列車に入ってきました。
「ぐわぁ!」
「あっ、すみません。」
男の子には悪気はなかったようで、男性のうめき声とほぼ同時に謝りました。
「てめぇ、人がかっこつけてるときに!」
「なんだ、お前ら!」
いきなり入ってきた人たちの喧嘩を遮るように、小人の一人が怒鳴り声をあげました。それもそうです。邪魔が入ったのですから。
「うるせぇ、猿だぜ。」
外国人の男の人が不敵に笑いました。
しかし、その時に後方車両から何匹もの猿がこちらに向かってきました。私はその場にうずくまりました。
「まずいですよ、パジさん!」
男の子が叫びます。
「慌てるな、ユウキ。女の子の保護を頼む。猿は俺が片付ける!」
そういうとパジさんと呼ばれる人は猿たちに向かっていきました。
時は少し前に戻る。
「でも、パジさん、猿夢ってどうやって駆除するんですか?」
再びバイクで走り始めたパジさんに質問する。そもそも素人の僕がどうこうできるものなのだろうか。
「そりゃ、猿をかたせば終わりだろ」
当たり前のように言うが、全くやり方がわからない僕にとっては大問題だ。
「それはそうですけど…列車はどうやって見つけるんですか?列車を見つけたとして、どうやって…」
「ったく、質問の多いやつだな。そこら辺は任しとけ。ユウキはAPウォッチの使い方見とけ」
パジさんは僕にAPウォッチとその説明書を投げると、思い切り、エンジンをかける。猛スピードで列車を見つけ出すつもりだろう。
僕はとにかくAPウォッチの使い方を確認した。複雑な機械に見えるが、説明書は紙切れ一枚。「願ったものが出るよ!」ってこれだけかよ!他にもないかと裏面をよく見るとウォッチの権限も書いてある。「ウォッチをつけたら擬似的にどこでも明晰夢状態になるよ!夢を見てる本人よりは弱いけど、だいたいなんでもできるよ!ただし、人体は作れないからウォッチを使って彼女を作るのは諦めてね!」くそっ、彼女は無理なのか…ってそんな場合じゃない!つまり僕はもうバイクから降りられるんじゃないか!騙された!
「ユウキ、使い方はだいたいわかったか?」
パジさんがこう聞いてきたが、そもそも思うだけなら説明書なんていらないのでは?権限については説明がいるけど。
「思うだけですよね?」
確認の意味も込めて聞いてみた。しかし、返事は予想外だった。
「あぁ、ただ一度に出せるものは3つだけだ。必需品は無限に出るがな。」
パジさんは平然と説明書には一言も書いていなかった制約を言った。
「書いてなかったですよ!」
僕は半ばクレーム気味にパジさんに言った。パジさんは僕のクレームをほぼ受け流していた。
「この組織は上が適当だからな、仕方ない。」
パジさんは淡々と答えただけだった。組織がダメなのか。まぁ、こんな人を雇うくらいだからな。少し呆れていたが、パジさんは話続けた。
「それから武器は作るなよ?回避重視で準備してくれ。」
自分が下手に動き回る方が足を引っ張ることになるだろうし、自衛のものを作る方がいいだろう。そう考え、僕は大きくうなずいた。それを横目で見ていたパジさんは、ニヤリと笑うとさらにバイクの速度を上げた。
今まで経験したことのない速度を味わい、ひたすらサイドカーにしがみついていたら、やがて電車の最後尾が見えてきた。
「ユウキ、そろそろ乗り込むが準備はいいか?」
パジさんは僕に聞いてきたが、僕が何と言おうと否応なしに乗り込む気だろう。すでに目線は列車を向いている。
「はぁ、いいですよ、途中でなんとかします。」
僕は半ばやっつけに答えた。案の定、僕の返答を聞くことなく、パジさんはバイクのハンドルを離し、飛び乗る体制を整えた。
「よし、じゃあバイク頼んだぞ。」
そういうとパジさんはヘルメットを捨て、ゴーグルだけをつけ、電車の窓に飛び込んだ。よく映画などで見る、腕を十字にし、小さくなる形だ。
「えっ!愛車って言ってなかったですか!」
僕の声はガラスの割れる音にまぎれたが、そうでなくてもすでに窓に突っ込んだパジさんには聞こえていなかっただろう。
少し気がかりだけど、僕に頼んだってことは、バイクは乗り捨ててもいいよな。僕は準備したアイテムの一つ、機械式ブーツのエンジンをつけるとパジさんが割った窓に向かって飛んだ。しかし、アニメのようにもいかず、体制を崩してしまった。暴発したエンジンでパジさんに飛び蹴りしてしまった。
「ぐわぁ」
パジさんの情けない声が聞こえた。
「あっ、すみません」
反射的に謝ったが遅かったようだ。
「てめぇ、人がかっこつけてるときに!」
パジさんに怒られてしまったが、悠長に喧嘩している暇はない。列車内は猿が何匹かいて、女の子が1人殺されかけている状態だった。すると、少し偉そうな猿が二匹おり、片方が怒鳴り声を上げた。
「なんだ、お前ら!」
思わず体が萎縮する。初めてこの目で人ではない何かを見た恐怖も相まって、すごく怖い。しかし、パジさんは慣れた様子だった。
「くくっ、うるせぇ、猿だぜ。」
パジさんは不敵に笑いました。
その時に後方車両から何匹もの猿がこちらに向かってきた。女の子は思わずうずくまった様子だ。だけど、自分よりも怖がっている人がいると怖くなくなるあの現象のおかげで僕は少し緊張がほどけた。しかし、山程敵がやってくる現状は変わらない。
「まずいですよ、パジさん!」
僕が叫ぶと同時にパジさんは猿たちに向かっていった。
「慌てるな、ユウキ。女の子の保護をたのむ。猿は俺が片付ける!」
僕はブーツで女の子の元へと飛び、女の子を抱えて窓の外に出た。すると、外には乗り捨てたはずのバイクが自立してついてきていた。おそらくパジさんの力かなにかだろう。僕は女の子を降ろすと、今度は確実にバイクを停止させ、女の子をサイドカーに座らせた。
「ここにいてください!」
女の子はひどく怯えていたが、受け答えはできるようで力強く頷いた。
「戦闘に参加するなとは言われたけど、何かあったら助けないと!」
今度は体勢が崩れることなく僕は列車に戻ったが、そこにはわずか数秒で倒したとは思えないほどの数のやられた猿がいた。さっきの心配は僕の杞憂だったようだな。パジさんは片手にコンバットナイフ、もう片手に拳銃を構えていた。おそらく一撃で確実に急所に当てている。そうでなければおかしい数の猿の山がそこには出来上がっていた。こうやって僕が状況を分析している間にも次々に猿が眉間を射貫かれる、もしくは頸動脈を切られている。しかし、敵の数も多い。パジさんは敵に囲まれた。すると、パジさんはオーバーヘッドキックの要領で足をつり革に引っ掛け、身体をねじり、つり革ごと回転すると、銃を乱射した。物陰に隠れていてよかった。突っ立てたら、僕も死んでたな。包囲を振り切ったパジさんは着地すると、再び敵を瞬殺していく。ウォッチの機能でリーロードがないため、隙が全くない。
しかし、パジさんの鮮やかな動きに夢中になっていた僕はうっかり二匹のボス猿の片方に背後を取られてしまった。
「クソガキめ!死ねぇー!」
まずい、やられる。反射的に目をつむった。だが、数秒たっても衝撃が来なかった。ゆっくりと目を開けると、そこには眉間にコンバットナイフの刺さったボス猿が倒れていた。
「言ったろ?守るって。」
パジさんが投げたナイフが刺さったのか。さすがパジさんだ。大量の猿の相手をしている状況で僕が戻ってきていたこと、背後から襲われたことを見ていたんだから。
「ありがとうございます!」
パジさんは新たにナイフをウォッチから出すと、猿に向かっていった。
僕は2つ目のアイテムのサーチゴーグルを使い、半径5mの索敵をした。奥にボス猿がもう一体。あとの雑魚敵はほとんどパジさんの方に向かっている。あっ、今2つ消えた。今度は警戒しながらパジさんを見ていたが、数秒後にはアイテムを使わなくてもわかるほどに猿はほとんど倒れてしまった。
「あとはてめえだけだ、ボス猿B。」
ナイフについた血を払い、パジさんはボス猿を睨む。
「くそぉー!!」
ボス猿は顔を赤くし、パジさんに威嚇するが、手下の猿たちが壊滅した今、何も怖くない。
しかし威嚇された瞬間、油断したパジさんめがけて倒れた猿に隠れていた猿が飛びだした。まずい、パジさんが気づいてない!残していた3つ目の枠で僕が即座に銃を作るしかないが、どうする、何なら扱える。僕はとあることを思いつき、一か八かやることにした。
「当たれ!」
大きな銃声が響き、敵を倒すことができた。銃声でパジさんは状況を把握し、こちらに声をかけた。
「ユウキ、大丈夫か!?って、なんだその銃。」
「僕、ゲームだとスナイパーなんですよ。」
銃口から煙が上がっている。僕が扱える銃なんてほぼないことに気づいた僕はゲームでのものならギリギリ扱えるのではないかと考え、スナイパーライフルを作った。ゲームから想像したのが良かったようで、発砲によるブレもゲームとほぼ同じだった。おかげで猿をヘッドショットで倒すことができた。
「やるじゃねえか。後ろは任せるぜ」
「はい!」
こんなセリフを人生で聞けるとは思わなかった。人を助けたという経験で舞い上がった僕は二つ返事で答えた。
パジさんはボス猿にスタスタと近づくと、その眉間に銃口を当てた。
「チェックメイトだ、猿。懺悔があれば聞いてやるよ。」
パジさんはにやりと笑った。あぁ、多分これは何を言っても殺す奴だ。
「おのれ、夢喰いめ。コレで終わりではないぞ!」
ボス猿にすごまれても、パジさんは怯まなかった。
「Questo è il tuo sogno!(おまえの夢はここまでだ!)」
パジさんの放った弾丸がボス猿の眉間を貫いた。
ボス猿は固まると光の粒子のようになり消えていった。するとそれに呼応し、他の猿たちも消えてしまった。驚いている僕を気にすることなく、当たり前のような態度でタバコに火をつけた。僕に気付いたのか言葉をかけてくれた。
「おかげで助かったぜ。夢喰いはこんなもんだ、あとはこの列車の処理なんだが…」
何か後処理があるらしいが、パジさんは少し嫌そうな顔をしている。
すると、どこからともなく声が聞こえた。
「やっほー!今日も派手にやったね、パジ!」
幼い女の子だろうか。声を聞いたパジさんの顔色が悪くなっていった。
「はぁ、想像はしていたが、やっぱりお前が来たのか…」
ため息交じりにパジさんはつぶやいた。
するとパジさん足元に、突然少女が現れた。もう驚かないけど、ワープか何かだろうか。
「わざわざ来てくれてありがとうの間違いでしょう?」
少女はにこやかな表情を保ちながらも、パジさんのスネを思い切り蹴り飛ばした。蹴りを食らったパジさんは痛がっていた。戦闘後とはいえパジさんに一撃食らわせるとは、この少女何者だ?人の夢に勝手に現れたのだから、バクの一員なんだろうけど。
「パジさん、この子は?」
一応少女に聞こえないように小声で尋ねた。明らかに二人の関係は良くなさそうだし、僕なりの気遣いのつもりだ。
「こいつはウィズ。元々駆除隊にいたんだがな、性格に難ありで後処理隊に配備された、とんでもサディストだ。しかもこの見た目ですでに三十代。」
「聞こえてるよ!」
「フグッ」
かなり小さな声で耳打ちしたがダメだったようだ。少女はパジさんの太ももに肘打ちした。これは蹴られるより痛そうだ。すると、鋭い目つきでこちらを見てきた。
「いいかい、少年。若さは大事よ。」
僕は無言で激しく頷いた。すると、満足そうにウィズさんは笑った。
「さて、ユウキ、女の子と列車はこいつに任せておけ。そろそろお前も起きる時間だ」
僕は10時半に寝たんだから、まだ6時には早いんじゃ。すると、僕の考えを読んでいたかのようにウィズさんが答えた。
「ふふっ、いいかい、少年。夢の中では現実と時間の進みが早くてね。残念ながら現実とは4倍の速さで時間が進んでいる。つまり、現実世界では5時ぐらいかな。加えて夢は自分のものからしか覚めることができない。ここから少年の夢に戻ればだいたい6時だよ」
とても丁寧に説明してくれたが、幼い見た目で偉そうな口調をされるとなんだかムカつく。しかし、夢を少ししか覚えていないのはそういう理由なのかもしれない。
「今からユウキの夢にむかって向こうでここでの記憶を消す。これは伝えたはずだぞ。」
パジさんは淡々と説明したが、驚きを隠せなかった。記憶を消すってそんなこと。すると、ウィズさんがまた答えた。
「少年、残念だがバクの存在を現実で色々喋られては困るんだ。人知れず夢の世界の安寧を保つのがバクの仕事なのさ。」
そんなことを言われても納得できない。せっかくこんなにパジさんと仲良くなれたのに。こんなにも現実離れした経験を忘れるなんて。
すると、そんな僕の気持ちを察してか、パジさんが僕の頭を撫でた。
「まぁ、とりあえずバイクに乗れよ。後ろに乗せてやるからさ。ウィズ、女の子の保護は終わってるんだろ?」
「もちろん!ここは任せて。」
ウィズさんはウィンクし、それを見たパジさんは頷いた。不仲とはいえ関係性はしっかりしているのだろう。
僕はパジさんに連れられて、列車をあとにした。
「それじゃ、行くぞ?ユウキ。」
僕はただ頷くことしか出来なかった。パジさんはエンジンをかけると、バイクを発進させた。運転に先程の荒々しさはなかった。しばらく無言の時間が続いた。
やがて、線路のないトンネルにさしかかり、パジさんが口を開いた。
「なぁ、ユウキ。いい夢見れたか?」
「え?」
思わず聞き返してしまった。突然どうしたのだろう。
「いい夢見れたか?って言ったんだ」
きっとパジさんは僕に気持ちの整理をする時間をくれたのだろう。そしてこの世界らしい質問だ。こういうところで照れないところは外国人らしいな。列車につっこんだ時の決め台詞も、ボス猿を倒した時もだけど。
「はい、いい夢でした」
パジさんたちとの記憶をなくしても今日のことはきっといい夢であったと言えるだろう。僕の返事を聞くとパジさんはニヤリと笑った。
バイクは速度を上げてトンネルを抜けた。数時間ぶりの強い明りが目に染みた。ゆっくりとバイクの速度が下がっていく。
「さぁ、着いたぞ。着いたらユウキに一発弾丸を打ち込む。安心しろ、これは痛くはない。目覚めると同時に記憶も消える弾だ。」
そう言い終えるとパジさんはバイクを止め、先程、猿を殲滅した銃を取り出し、弾を込めた。同時にアラーム音が薄っすらと聞こえてきた。僕の大好きなアイドルの曲だ。それを聞き、真面目そうな顔のパジさんの顔が少し緩んだ。
「ふっ、いい曲だな」
「今度聞いてみてください」
「気が向いたらな」
「ありがとうございました、パジさん」
「あぁ、それじゃ、おはよう」
優しい銃声が響き、細い煙が銃口からあがった。
ディスクが自動で機械から出てくる。男は涙ぐんでいる。
「自分で見始めたくせに泣くなよな、パジ」
「うるせぇ、ウィズ。また悪夢だ。いくぞ。」
2人は今日も仕事に向かう。誰にも知られない仕事をするために。
夢喰い隊 バク @hero180622
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