不登校になった少年が、ブラジルの少年と交流するヒューマンドラマ。
周囲にうまくなじめない主人公の孤独感、疎外感、息苦しさなどの胸に迫る描写が大変素晴らしい作品です。
いきなりブラジルの子とメールで交流って大丈夫? と思ったら、機械翻訳されたメールの文章がすごく「らしい」のにも驚きました。
機械翻訳っぽい文章を作るのは慣れればそれなりにできるものかな? とも思うのですが、「日本語で思考や会話をしていない人間が、一生懸命相手を思いやってかける言葉を翻訳したもの」という質感と言いましょうか。機械翻訳っぽさと、それを発したキャラクターの温かみを感じるような文面ですね。
機械翻訳独特のセンテンスが生み出す、詩的な文章もまた美しく、これは何をどうやって作ったのだ?? と思わず頭も首もひねってしまいます。
最初は意味がつかみづらかったプロローグも、読み進めるとなるほどと思え、大変すばらしかったです。主人公の彼が、もっと楽に生きられますように。
なんか、読み始める前の時点でね、解説文と打たれてるタグがもう強いな、っていう印象がありました。で、まあ最後まで読んだわけですが、一言ただ「いい」と思いました。なんていうか、「いい」んです。なんていうのかな。何がいいのか、どう良いのか、うまい言葉が思い浮かばないな。ともかく、確かに解説文とタグの通り、これはかなり強い作品だと思う。
まず、タイトルがうまいです。すっごいセンスがある。ビーとフラット、それだけでも響きがいいのに、bと♭、と表記するとさらに美しくなる。しかも、Ball and Flatと展開されて、物語の内容をちゃんと受けていて、タイトルが内容を回収している、っていう。極めて高度なテクニックです。正直、わたしでは真似ができる気がしない。すごい。感服した。