いつか思い出す夏

土蛇 尚

今日は2人だけ

「パパ、プール作って!」

 5歳になる娘が俺にねだってくる。プールを作る、子ども用プールを膨らませてと言う事だ。クーラーの下でAmazonプライムを観ていたのを中断してプールを膨らませる。汗がダラダラと出てくる。妻は大学時代の友人とランチに行ってる

「パパ、もっと頑張って!」


 土曜の11時、もう少しゆっくりしたかった。

「ほらできたよ」

「ねぇパパも準備体操して。ママがやらないとダメって言ってた。」

 直径150cmのプールに俺がどう入るんだ。そう思ったが確かに必要な事だからYouTubeで準備体操の動画をつけて2人でする。


「パパみて!水いっぱい!」

「ああ、そうだね」

スマホが鳴った。

「ねぇママ?ママなの?変わって!」


『もしもし、そっちは大丈夫?』

『ああ、今プールに入れている。目を離せないからお蕎麦取ろうと思うんだけどいいかな?』

『お蕎麦は食べれる。ソーメンだめだから危なかったね』

『わかった。そっちも楽しんで。変われって言うから変わる』

『ママ!元気?プール入ってる!』

 娘はびしょびしょの手で俺のスマホを掴む。

 こう言う時にスマホを完全防水の物で選んでいて良かったと思う。さてパソコンからお蕎麦の出前をお願いしよう。


 出前を待っている間も側について日焼け止めを塗り直したり水を飲ませたり塩を舐めさせたりして忙しい。キャンプの日除けをプールの上に貼ってまた汗をかいた。

「パパ、お腹すいた」

少しうとうとしていると娘の言葉で目が覚めた。そうだったお昼ご飯だ。

『ピンポーン』


「ピンポンだ。出る!」

「待って体拭いて」

 出前のお兄さんが出したQRコードをスマホで読み取る。決済完了だ。

「ありがとうございました〜」

「はい。ご苦労様です」

「ありがとう〜」


 娘が蕎麦をフォークでガシャガシャしながら食べる。まぁ美味しそうだからいいか。その後もプールで遊んでばったり寝てしまった。子どもってのは寝てる時もじたばたと動く。


 俺は1人でプールの水を捨てて片付けをする。

 今月に入って3回目だ。今日は妻がいなかったから余計に疲れた。あと何度これをするんだろう。それでも熟睡する娘の顔は愛おしい。娘の顔を見てると妻に会いたくなってくる。

 早く妻に会いたい。

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いつか思い出す夏 土蛇 尚 @tutihebi_nao

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