幼馴染ケンカップルの俺が国民的人気者になりつつ幼馴染の尻に敷かれるまで
蹴神ミコト
俺とあいつの一生
あいつは小学生の頃から生意気だった。
カキーン
「いやー打ちやすいわねー!あんたのへなちょこストレート!」
「うるせー!次こそ抑えてやる!!」
俺は武田浩二、幼馴染のあいつは上杉すみれ。
小学校の野球チームに俺もあいつも所属していた。男女の身体能力差が無い時期とはいえあいつにボコスカ打たれていたのは悔しい過去だ。
あの頃はずっと俺がピッチャーであいつがバッターでなんてことを思っていたがそれが簡単に崩れたのは中学に上がってから。
「ほれ、料理部で肉野菜炒め弁当作ってきたわよ。運動後30分以内に食べなさい」
「げっ、ピーマン入っているじゃねぇかこれ!」
「へー食べられないの?そうよねーあんたは農家の人が一生懸命育てた野菜を大切にできない子だものねーおーよちよち」
「は?食ってやんよ!子ども扱いすんじゃねぇ!!…ぐぇ」
「よく食べられまちたーぱちぱち」
「だから……次からはピーマン抜きでお願いします…」
「武田のざぁこ、ざぁこ」
「いつか分からせてやるからなてめぇ…」
あいつは中学で料理部に入った。そして俺の野球部上がりによく手作り料理を持ってきてくれていた。今思えばずっと助けられていた…んだよな?野球で張り合えないから別角度から仕掛けてきたんじゃないよな?
高校に入っても似たようなことをあいつは続けた。いや、続けてくれた。一生頭が上がらない。
「ほら弁当作ってきたやったわよ。朝連後の分と昼食分。…おかず以外にごはん5号も持ち運ぶから私が鍛えられちゃったわよ」
「すまん、本当に助かる…ウチは誰も料理が…」
「分かってるわよ、天国のお母さんのためにもあんた絶対にぜーったいにプロ野球選手になりなさいよ。それまで停戦にしておいてあげるわ」
「おう…すみれ。俺、頑張るからな…」
「頑張んなさいよ…」
『ドラフト1位おめでとうございます!今のお気持ちを誰に伝えたいですか!?』
『多くの方に支えられてここまでくることができました。その中でも特に天国の母、育ててくれた父。そして幼馴染であり恋人の――』
俺がプロ野球選手になって親父はとても喜んでくれた。すみれも自分の事のように喜んでくれた、でももう張り合うのが難しくなってきたと少し悲しげな顔をしていた。
数分したらプロ野球選手に張り合える女子になる方法を思いついたと言って死ぬほど勉強を始めたので次は俺が支える番になった。
俺が高卒でプロ野球選手になって5年ほどすると、俺はチームの顔とも呼ばれる選手になり。日本代表にも選ばれるピッチャーになった。
年俸もそろそろ1億の大台が見えてきており父には困らない暮らしを、幼馴染は大学を経由し社会人へ。今では停戦が解けたからと色々煽ってくるようになった。
そんな張り合い、支えてくれた大切な女性と…とついに仕事関連で再開するときが来た。
「始まりました緊急スポーツ特番!MCは神宮寺孝弘と」
「新人女子アナの武田すみれですよろしく願いします!」
「ではご紹介します!野球日本代表のみなさんです!金メダルおめでとうございます!」
パチパチパチパチ
俺は日本代表の1人としてスポーツ特番に呼ばれた。すみれは芸名を俺の苗字にしやがった。
それをネタに球界のプレイボーイに声をかけられていた。
「武田アナって武田浩二投手とご結婚されていたり?未婚だったら俺が立候補しちゃおっかなー」
「いえいえ未婚ですよ?ただ今すぐにでも結婚したい願望はあります。」
スタジオでおおーっと声が上がる。カップル成立かなんて空気が流れる中ですみれ口を開く。
「どこかの馬鹿が『俺が沢村賞取ったら結婚しよう』なんて婚約の言葉をくれたんですけどねー。その馬鹿にこの場を借りて伝えたいことがあります。」
すみれはMC台を離れ歩き出し…俺の横で止まって笑顔で圧をかけながら話し出す。
「あんた本当に沢村賞取れるんでしょうね?プレッシャーかけるために芸名これにしたんだけど分かってるよね?」
「来期は沢村賞を取らせていただきます、はい」
「みなさーん、武田浩二選手から来期の目標は沢村賞だそうです!応援してあげてくださいねー♪」
盛り上がるスタジオ。笑顔のすみれ、すでに尻に敷かれている俺。
「武田チャン…全国ネットでこれって武田投手の女性ファン減らない?」
「大丈夫です、ファンなら武田投手があちこちでノロケ話しているのは有名なので。ということで順序が狂いましたが武田投手のノロケ話インタビュー映像まとめとチームメイトからの証言をどうぞ。」
「やめろ…すみれ、やめてくれ…」
「結婚したらやめてやるわよ。結納品は沢村賞でいいわ。」
この日の最高視聴率は俺とすみれの絡みだったらしい。
すみれはこの日の自由すぎる行動を「もしも首になったら即貰ってくれると思った」と別の番組で言っていた。はははこいつめ。
絡みが人気だったおかげで後日、スポーツバラエティ番組でことごとくすみれと絡まされ。俺たちの知名度は野球ファン以外の人にも広まっていった。
でもスポーツニュースで俺の話がでるたびに昔の話をポロっというのやめてくれない?おかげで俺の誕生日にチームメイトからピーマン送られたんだけど?
ーSNS公式アカウントーーーーーーーーーーーー
武田浩二
すみれが情報番組で「武田投手はピーマンが食べれなかった」とか言うから誕生日プレゼントにチームメイトからピーマンを戴きました。お前責任もって調理しろよ。
武田すみれさんが返信しました
なるべく原型が分からないようにすれば食べられるようになったもんね。えらいえらい。今夜はピーマンの肉詰めです。
武田浩二さんが返信しました
泣かすぞ
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ネットで『ベッドでしか嫁に勝てない男』と愛称?蔑称?が付いた。解せぬ。
★
「あの沢村賞宣言の特番からもう2年ですねー、武田投手って沢村賞取れましたっけ?」
「取れてないですね…」
試合前のインタビューですみれに言われた、マジごめん。頑張ったんだけどね…
「今日は何の日ですかー?」
「すみれ様の誕生日です。」
「もう20代中盤で我慢できないから。今日の試合でホームラン打ったら結婚してあげるから打ちなさいよ。」
「えっ、待っ、俺投手だから打撃練習は…」
「愛で打てばーか。」
そう言ってすみれは去っていき試合が始まるのだった。
試合中に実況席であるやりとりが行われたらしくSNSでトレンド1位になっていたとチームスタッフが教えてくれた。
『武田アナ。試合前に武田投手がホームランを打ったら結婚というお話をされていましたが打てなかったらご結婚はまた今度ですか?』
『いえ、もう待てないので結婚はしますよ?ただ沢村賞の約束を果たせなかったダメ男と一生言い続けますが。誕生日のホームランでチャラにしてあげます。』
トレンド1位は『ホームランでチャラ』
あいつほんと良い性格しているな…意地を見せてやるから楽しみにしてろ畜生!!
「インタビュアーは武田すみれが務めさせていただきます。」
「それではヒーローインタビューです!本日のヒーローは9回3安打無失点の完封、打撃成績6打数3安打で猛打賞の武田投手です!今のお気持ちは?」
「チームが勝てて何よりです、ハハハ……ホームラン打ちたかったです…」
「9番打者なのに6打席もくるくらい良いチームメイトに恵まれましたね!」
「試合としては大量リードだったのに必死に繋いでくれた仲間には感謝の念が耐えません。」
「はい。じゃあプロポーズの言葉をどうぞ。」
「ダメ男でも結婚してくれますか?」
「待たせすぎなのよばーか。」
すみれが俺にキスをした所がこの日1番観客席が盛り上がったタイミングかつ最高視聴率だった。野球中継なのに。
この後、すみれの本名が芸名と一緒になったり。30代前半でやっと沢村賞を取れたり。
夫婦としてスポーツバラエティに呼ばれすぎて引退後はタレントになったり色々あるのだがそれはまた別の話。
★幼馴染ケンカップルの俺が国民的人気者になりつつ幼馴染の尻に敷かれるまで。 おわり
幼馴染ケンカップルの俺が国民的人気者になりつつ幼馴染の尻に敷かれるまで 蹴神ミコト @kkkmikoto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。