盛岡じゃじゃめん、稲荷うどん、白石にゅうめん、熊谷うどんに氷見うどん。
吉田うどんに名古屋きしめん、伊勢うどん、かすうどん、讃岐うどんときて博多うどんに五島うどん。
うどんの名所は全国各地にあれど、武蔵野もまたうどんで有名な地域です。
新メニュー開発に店の存続をかけた主人公。
神の思し召しや如何に!?
角のない丸みのある丁寧な文章と、神秘体験をあからさまにではなく、匂わせる程度に感じさせる微妙な表現は、作者の真骨頂ではないでしょうか。
武蔵野という土地の魅力が描かれていて、近江商人の心得ではないですが
「書き手良し、読み手良し、地域良し」
の作品になっていると感じました。
皆さんもどうぞ、ご賞味あれ!
主人公の家は武蔵野にあるうどん屋だ。しかし家の都合で長年続けてきた店は閉店の危機に瀕する。そこで主人公の母は落ち込む主人公に、新しいメニューが成功すれば、店を続けててもいいということにしてくれた。
試食係の友人に主人公は新作を試食してもらうが、何かが足りない。しかし何が足りないのか分からない。そこで主人公は友人と二人で、神社の荒神様に詣でに行く。お参りを済ませ、店に戻るとそこには――。
確かな筆力で描かれる食べ物の描写は、想像しただけでも美味しそうです。
また、武蔵野の食に関する知識もふんだんに描かれ、主人公の新メニューのヒントがさりげなく示され、それらが布石となり、一つの作品としてとても納得感があります。
是非、御一読下さい。