第7話 あとがき、設定など
『わんわんぴーす』を書き上げたあと、私はビースト化が解けたアムールトラがイエイヌの元へと戻ってくる物語を想像していました。ですがおそらく一般的な読者の頭に浮かぶのはアニメ9話で、このままでは「あんなに健気なイエイヌが、ビーストにボコられて終わる救いのない話」と捉えられてしまうだろうと考えました。
なのでその差を埋めるべく、追加版としてお話を書く事にしました。
上巻では、アムールトラの過去が描かれています。わんわんぴーす執筆中に「たとえキュルル(イエイヌ)がセルリアンに取り込まれてもすぐに助ければいいんだから、アムールトラが腕を失う必要なくね?」というツッコミが頭の中に浮かんだので、その答えとして書いた物語です。
キュルルと出会う前にアムールトラが戦った特別なセルリアンはあっという間にフレンズから輝きを奪い去ってしまったため、彼女はオリジナルイエイヌを救う事ができませんでした。こうなってしまった原因の一因は己の慢心という事もあり、この事件はアムールトラの心にずっと影を落とします。
このような苦い体験があったため、彼女は自らの腕を失う事もいとわずに大型セルリアンからキュルルを救出したのです。
また下巻では、本編の続きが描かれています。ビーストへと変わってしまったアムールトラを、キュルルとイエイヌが救うお話です。
かつて1人だった2人が、昔の恩人を救うお話にしてみました。
タイトルは本編と対になるようにしました。「ぴーす」と「かけら」、「わん」と「ふたつ」。また「かけら」と「ふたつの手」は物語前半ではイエイヌの存在とアムールトラの2本の腕、後半では居場所のないビーストとそれを抱きしめようとするキュルル・イエイヌ2人の手をそれぞれ表しています。
これはあくまでわんわん本編の要素を活かしたパラレルワールドですが、とにかくハッピーエンドを目指しました。
拙い出来ですが、少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。
◉登場人物
◯アムールトラ(ビースト)
通称『青帽の虎』と呼ばれる強い力を持ったフレンズ。
過去に何があったのかは定かではないが、現在はネコネコ団団長としてサーバル、カラカルを率いてセルリアンを倒しながらあてのない旅を続けている。
その腕っ節は申し分なく仲間思いで頼りになるが、軽率な行動が多く周囲を巻き込む事もしばしば。その度に落ち込むもののすぐまた繰り返してしまう、喉元過ぎれば熱さを忘れるタイプ。
これまでの小説とは違う明るいアムールトラを書きたかったのですが、追加編では元気すぎるイエイヌに振り回されるヤレヤレ系主人公になってしまいました。
◯サーバル、カラカル
ネコネコ団団員。
なにかと危ういアムールトラが団長を続けられるのは、呑気なサーバルとしっかり者のカラカルに支えられている部分が大きい。
サーバルが大切なイエイヌの結晶をあっさり落っことしてしまったのは、まだ持たされたばかりで思い入れも少なかったからという事にしました。
◯キュルル
パークの片隅にあるのどかな村で生まれ育った少年。
まだ村の外に出た事はないため外の世界に強い憧れを持っていたが、たまたま村を訪れたアムールトラを一目見るなり夢中になってしまった。それから顔を合わせるたびに「一緒に連れてって!」とせがむものの、その度に軽くあしらわれている。
実はわんわんぴーすの物語の前に女王セルリアンに取り込まれていた事になっています。そして救出された際には記憶を失っており、『無理に事件の事を思い出す必要はない、せめてこれからは何も知らず穏やかに過ごせるように』との両親の計らいで、争いのないこの村に連れてこられたという脳内設定があったりなかったり。
◯ヒグマ
執筆にあたりキャストを選ぶ際、たまたま原作に同じ名前のキャラクターがいるので登場させる事になりました。そしてあの目つきを再現するため、寝不足キャラへと変えられてしまった不憫な子です。
他人を危険に巻き込まないようぶっきらぼうな態度をとっていますが、とにかくまっすぐな性格のため恩は決して忘れません。もし武器を持ってなかったらアムールトラのために自らの腕を差し出す所でした、危ない危ない。
◯イエイヌ(キュルイヌ)
ある事件により、キュルルはイエイヌのフレンズとなってしまった。それによりヒトを遥かに凌駕した鋭敏な感覚を身につけたが、それがさらなる悲劇を生む事となる。
書いているうちにいつも語尾に「!」を付けて話すような元気な子になりました。私の持つイヌのイメージを持たせてみましたが、ヒトの感覚からすると大げさな愛情表現や行きすぎた忠誠心だと取れるような行動も多く、もしかしたら鬱陶しいと感じられるかもしれません。
◆余談
◯わんわんぴーす本編にてキュルルがイエイヌへと変わってしまった時、書き初めは全身から冷や汗が出ていたのですが、犬の汗腺は足の裏にしかないので両手足の裏からのみの発汗となりました。
もうひとつのかけらとふたつの手 今日坂 @kyousaka
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