第26話

(ねぇ姉さん、本契約ってどうやるの?)


(え? もしかして早くやりたいの?)


(やりたいかな。どう違うのか、早く知りたいってのもあるし)


(なら、先生に確認してみる? 多分知ってたら、先にやっちゃう生徒は、毎年いるだろうし)


(わかった。聞いてみる)


 俺は教室を出ようとしてる先生を追いかけた。


「あの! 先生質問があるんですけど」


「ん? なんだグローレイン。また何か、問題でも起こしたのか?」


「何もしてませんよ。そうじゃなくて、本契約についてです」


「あぁ、そういう事か。そうだな……第2訓練所に行くか。付いてこい、グローレイン」


「え? あっはい!」


 俺が先生について行こうとしたら後ろから呼び止められた。


「おいレイジ。何1人だけ、面白そうな所へ行こうとしてるんだ?」


 振り向いたら、クリスだった。先生もクリスに気がついたらしく、少し考えてた。


「ふむ、リーヴァルも来るか? 久々にを、動かしたいだろ?」


「そうですね。俺も体が鈍らないか心配だったんですよ」


「奇遇だなリーヴァル。先生も、最近仕事のストレスで思いっきり体を動かしたかったんだ」


 そう言って先生は背を向け、歩き出した。俺とクリスは先生の後ろをついて行った。


 第2修練場に到着した俺達は、本契約のやり方について教わった。


「まずやり方だが、幻想ビジョンに正式な命名をつければ完了だ」


「今俺達が呼んでる名前は、違うんですか?」


 俺はいまいちピンと来なくて、先生に質問をした。


「教室でも話したが、わかりやすく言うと、名前と呼び名といえば分かりやすいだろう! 今お前達が呼んでるのは、あくまで呼び名だ! 今から名前をつけてもらう」


「なるほど……でも、俺たちだけ先にやってもいいんですか?」


「どうせ2人とも、先生が許可出さなくても勝手にやってただろ? 下手にそれで問題が起こされるなら、目の前でやってくれた方がマシだ」


「あはは……」


 俺の考えがバレてて、何も言い返せなかった。


「それで命名の仕方は、どうやるんだ?」


「ん? そう焦るな。やり方は簡単だ。念話で幻想にこう言うんだ。 『せいなる名を持ちて、われと共に立ち上がらんとする者、血命けつめい持ちて、われを守ろうとする者、汝、われ、求む者ならば、われ、名を授し、名を刻みたまえ』そう言って名前を呼んであげたらいい。名前が決まってるならやってみろ!」


 俺とクリスは、先生に言われた通りやってみた。


(なんか緊張するんだけど……)


(私も、する側だったから、される側は、なんか緊張するわね♪ それに、レイが変な名前にしないか心配なんだよなぁ~)


(そんな事しないから! ……それじゃ始めるね)


 俺はそう言って深呼吸し、先生が言った言葉を唱えた。


せいなる名を持ちて、われと共に立ち上がらんとする者、血命けつめい持ちて、われを守ろうとする者、汝、われ、求む者ならば、われ、名を授し、名を刻みたまえ……ステラ=グローレイン)


 俺が名を言うと、姉さんは驚き目を見開いて俺を見た。俺からしたら、これ以外名前なんてないのにな。泣く程驚くとか少し心外だった。


(……われたいに名を刻み、汝と共に歩まんとする者、我が名は……ステラ=……グローレイン……うぅ……)


 姉さんは泣きながら、そう言った瞬間、姉さんの体が突然光出した。暫くして光が収まると、姉さんの姿が……服装が変わってた。––真っ赤なドレスとヒールを身に纏い、背中には月夜の光みたいな青白く輝く羽が生えていた。


(姉さん……その姿は?)


(え? アレ? なにこれ?)


(姉さんもわからないの?)


(私の時はこんなこと無かったんだけど……)


「グローレイン! 何かあったのか?」


 俺が驚いてるのを見て、不思議に思った先生が聞いてきた。


(とりあえず、光ったことだけ話して!!)


「あっ! 何も無いです。いきなり光ったのでビックリして……」


「言ってなかったな、すまんすまん。光ったと言うことは成功したんだな?」


「たぶん……」


「リーヴァルはどうなんだ?」


「あの……幻想の見た目が変わったんだが……」


「ほぅ……それは珍しいな……」


 先生はクリスの言葉を聞いて何か考えてた。俺はなんかあるのか心配になり先生に聞いた。


「変わると何か問題でもあるんですか?」


「ん? いや、問題どころか凄いことだそ?」


「凄い……?」


「あぁ、姿が変わったということは、それだけ深層で結びついてるって事だ。深層心理……つまりより魂に近いところで、幻想と繋がってると言うことは、それだけ強い力になるって事だ。先生も今まで生きてきて、10人ほどしか見た事ない」


「凄いじゃないかクリス!」


「今ならレイジにも勝てるかもな」


 そう言って、何処か澄まし顔で俺を見たいた。


「残念だが、リーヴァルが、グローレインと戦うことは無い」


「なんでだ!?」


「先生が相手になるからだ」


「っち! まぁ、先生が相手にならなかったら、その時はレイジとやっても、良いだろ?」


 クリスはそう言って接続コネクションした。しかし、クリスは頭を抑え痛みに耐えてるようだった。あぁそうか、また頭になにか流れ込むのか……


「グローレインも接続コネクションしとけよ? リーヴァルが終わったら、グローレイン共やるからな?」


 俺は、とりあえず接続コネクションをして、頭痛が治まるのを待った。


(レイ……もう1回あるのよ?)


(あっ……)


 この時だけは、モードチェンジを俺は恨んだ。

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エシックスギア 海音² @haru19890513

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