め組の救命士

@tai119

第1話  朝が来る

ピーーーッ  広瀬区八幡町4丁目 救急入電中


ピーポーピーポーピーポー

急病発生 広瀬区八幡町4丁目2番5号  以上


まだ薄暗く、雪が街灯に照らされ輝いている朝方。

広瀬市消防局青葉消防署八幡出張所に勤務する消防士、山縣大吾は白い息を吐きながら救急車に飛び乗った。


大吾が乗った救急車はけたたましいサイレンと共に薄暗い朝の街へ飛び出していく。時刻は午前5時、まだまだ冬の夜は明けない。


「八幡救急1から広瀬消防。八幡救急1出場。どうぞ。」

そう言って無線を入れたのは助手席に座る隊長、平塚慎也である。平塚は救命士20年目のベテラン、消防司令補。八幡救急隊の2係小隊長である。


「八幡救急1、出場、広瀬消防了解。指令住所は指令同番地。80歳女性、呼吸が苦しいとのこと。通報にあっては娘。以上、よろしくお願いします。」


指令室からの無線を聞いて大吾は必要物品をストレッチャー上に準備していく。

冬の朝方の呼吸苦、心筋梗塞もありそうだな。そう頭の中で考え、CPAも考慮して準備していく。


「八幡四丁目だとすぐ着くぞ!大吾、準備できているか!」

そう運転席から声を上げたのは、救急機関員25年目の大塚武志だ。大塚は消防士長として救急機関員を任されている。


「はい!準備できてます!いつでも!」

そう元気よく答えたものの、まだ救命士になって日は浅い。まだ静脈路確保を実習以外で実施したことがない。

頼む、、、CPAにならないでくれよ、、、

そう祈りながら前を向くと、家族が手や振って外に出ていた。


AVMの現着ボタンを押下し、救急車横のスライドドアを開けて下車した。

空はまだまだ薄暗く、刺すような寒さが襲ってきた。

大吾は隊長に特定行為セット、除細動器を渡し、ストレッチャーと共に、家族の元へ走った。


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