小さく冷たい世界にふたりきり

 人の住めなくなった地球、地下シェルターにたったふたりで暮らす、とある少年と少女の物語。

 ディストピアものであり、またポストアポカリプスものでもあるSFショートショートです。

 戦争や環境破壊などにより、もはや人の住めなくなった崩壊後の世界。コンピューターによって管理されるシェルターに、たったふたりで生きる少年と少女。それぞれ健康状態や権限などが違い、そのため分厚いガラスによって隔てられている、というのがまたなんとも切ないお話でした。
 お互い世界にただひとりの存在でありながら、直接触れ合うことの叶わない関係。

 人生のすべてがシェルターの内部のみで完結している人物の視点で描かれているため、作中の情報がどれもこれもどうにも信用ならないところが好きです。
 人為的に作られた世界の不自由さ以上に、節々に見え隠れする不自然さが気になってしまうような感覚。あるいは単に穿ちすぎなのか、とにかく何かゾワゾワした不安感のようなものがまとわりつく中で、突如発生する思わぬ困難。それにより重大な決断を迫られる、その瞬間の緊張感の鮮烈なこと!

 そして辿り着いた結末の、その衝撃というか唸らされるような感覚。
 ショートショート的な物語でありながら、丁寧に組まれた設定が楽しいお話でした。