背筋が薄ら寒くなるほどの静かな迫力

 亡くなった祖父の日記という体裁で綴られた、とある奇妙な博徒の物語。

 現代ファンタジー、あるいは「少し不思議な要素の出てくる現代ドラマ」的なお話です。
 見た目からして明らかに尋常ではない、賭博場でひたすら勝ち続ける不審な男。戦後まもない時期という時代設定もあり、あるいは本当にあった出来事であるかのような、何か鮮烈な迫力のようなものに満ち満ちたお話でした。
 ゴリゴリ読まされちゃうというか、もう作中の出来事から目が離せない……。

 タイトルが好きです。もっと言うなら、読み終えて初めてわかるタイトルの直球ぶりというか、「この物語を通じて語られていること」そのものの魅力がもう最高でした。
 テーマ、と言ったら大仰かも知れませんけれど、博徒の決心やまたそれを見た祖父の選択など、そこに感じる説得力と共感の分厚さが本当にたまりません。そう簡単には言い換えの効かない何か、まさに「物語によってのみ著すことのできるもの」を読んだという心地よさ。

 面白かったです。先を気にさせる話運びの巧みさや、あと単純に雰囲気も好き。とても読み応えのある作品でした。