大きなお屋敷にふたり、少年とアンドロイド執事の穏やか(?)な日々

 天才科学者であった祖父から相続したお屋敷で、アンドロイド執事とふたり、穏やかな日々を夢見て暮らす少年の物語。

 穏やかな雰囲気の掛け合いが楽しいSFです。
 いやいうほど穏やかでもないというか、毎日泥棒や強盗の類を撃退する生活なのですけれど。アンドロイド執事の圧倒的な戦闘能力と、お屋敷に山ほど設置された凶悪なトラップにより、なんでもないことのように過ごす様子のコミカルさが魅力のお話です。

 主人と従僕、あるいは人と機械のような、関係性のドラマが最大の見どころ。
 平たくいえば「主従もの」のお話であり、少年主人と無表情執事のコンビがとにかく素敵です。

 基本的にはコメディタッチというか、掛け合いが主体のお話なのですが、その中で「カガノミヤ・リンの遺産とは何か?」という謎がこちらの興味を惹きつける主軸として作用しているのが好き。そこを気にしながら読み進めていった先、辿り着く彼らのドラマにもホロリときます。
 ライトで軽妙な読み口の中に、たっぷり関係性の魅力が詰め込まれたお話でした。