現実世界のカリスマ人事が異世界で最強の組織を作る話
@tassy82
第1話 異世界転移
「神田さん、会議室に面接予定の学生さんがいらっしゃいました」
「了解。すぐ行くよ」
都内某所。一等地にある上場企業のオフィスに、その男は存在していた。
人口は減少しているのに、働き方や雇用に対する需要は高まる現代において企業経営の中枢にまで影響を及ぼすその男は、ビジネスの界隈では名の知れたスーパービジネスマンだった。
"
国内トップの業績を残す大手コンサルティング企業のカリスマ人事とはこの人であった。
「よ、よろしくお願いします!」
「よろしくね!あはは……頭のてっぺんから爪先まで余すことなく緊張してるね!」
「も、申し訳ございません…」
自分の人生を決めるターニングポイントとも言える面接では、こうしてガチガチに緊張してしまった学生に気さくな笑顔で話ながらアイドリングトークを展開していく。
「まずは来てくれてありがとう。貴方とこうして話せる一時間が、お互いにとっていい時間になったら嬉しいです。今日の面接では、勿論貴方の能力も判断させては頂きたいけど、僕が一番重視したいのは、熱意と価値観。君がこれまでどんな経験をして、どんな考え方になって、
これからどうなっていきたいのかを教えてください。まあ、簡単に言えば、俺と腹割って世間話して、ちょっとだけ夢語ろうぜってこと。
付き合ってくれる?」
「は、はい!是非お願いします!」
緊張は全て無くせるわけではない。むしろ適度な緊張はいいパフォーマンスに繋がる要素であると考えている神田は、こうして自らの熱を相手に分け与えることでこちらのペースに巻き込み、いつの間にか学生がリラックスして熱く自分の将来を語ることができる様にフォローしていく。
「うん。じゃあ、今日の面接は以上です。
結果はまた近いうちに連絡します。今日はありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
そこには、開始時には緊張でカチカチだった筈の学生の満面の笑みがあるのだった───。
「ふぅ~」
面接が終わり、少しタスクに余裕が出た昼下がりに会社の近くのコンビニでコーヒーを購入した神田は、都内の街を眺めながら物思いに耽っていた。
今の会社のこと、これからの自分のこと、様々なことを思いながらブラックコーヒーを飲むこの時間は日々忙しい神田にとって数少ない憩いの時間となっていた。
「ん?」
そんな風に大通りをぼんやりと見つめながら考え事をしていた神田の視界の端に、何やら動く物体を捉える。
「おいおい……あれはまずいっ!!」
チラリと見れば、そこにはベビーカーが大通りの交差点に向かって転がっていく様だった。
母親らしき人も見当たらず、何故平坦な道なのに自走しているのかは定かではないが、子供が乗っていたとしたら悲しい事故になってしまうと思った神田は、既に動き出していた。
信号は赤だ。昼下がりの交通量が多い時間帯に
道路に出ればまず無事ではいられない。けれども、勝手に動いた体を止めるものはなかった。
『目標補足──。』
ベビーカーに向かって手を伸ばした神田の脳内に無機質な女性の声が聞こえる。
『転移開始──。』
「は?」
ベビーカーに触れた瞬間、神田は目映い光に包まれた。
現実世界のカリスマ人事が異世界で最強の組織を作る話 @tassy82
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