夜中の刺客
タマゴあたま
夜中の刺客
「!」
俺はベッドから飛び起きた。あの音が聞こえたからだ。
急いで電気を点け、構えをとる。せっかく気持ちよく寝ていたのに。
俺はじっと耳を澄ます。
「どこだ? どこから来る?」
気分は暗殺者に狙われた主人公だ。どこから来るかわかったもんじゃない。
全神経を耳に集中させる。
「――そこだ!」
俺は光よりも速く手を伸ばした。手応えはあった。
俺はゆっくりと手を開いた。
そこにはなかった。
あるべきはずの蚊の死骸が。
「しくじったか!」
こうなると厄介だ。向こうも俺が敵だとわかっているからな。
「次こそ!」
「まだまだ!」
「今度こそ」
「ど、どこにいるんだよお……」
もう完全に見失ってしまった。
それなのに、あの羽音だけはしっかりと聞こえる。
もうやだ。おうちかえる……。
そもそもあいつらは何で血を吸うんだ?
確か、血を吸うのはメスだけだったよな?
「あなた血を私にちょうだい?」
「君の血じゃなきゃヤダァ」
「君の血のおかげでボクの家族は幸せになれるのさ♪」
なかなか良いじゃないか。
こう考えるとあの鬱陶しい羽音も求愛の音に聞こえてくるな。
ん? 家族?
そうだよ! あいつらやることやって、その子供を育てるために俺の血を吸ってんだよな。
俺は無言で押し入れから蚊取り線香を取り出した。
夜中の刺客 タマゴあたま @Tamago-atama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます