ミステリが好きな主人公に訪れた、出会いと別れ。
そんなとある一日の喫茶店から物語は始まる——。
とんでもない彼氏に制裁を、とばかりに仕込んだ下剤。それをたまたま居合わせた自称 : 詐欺師の男がぱくりと食べてしまう。
思いきりのいい主人公のテリと、謎が謎を呼ぶ自称詐欺師の東雲さん。
事件か事故か、そんな出来事に巻き込まれながらも時は過ぎ——?
サクサクと進んでいくテンポの良いお話に、ついつい「もう1ピース」「もう1ピース」と気づけば一気にワンホール食べちゃってた!そんな物語。
謎は解けるのか。
テリのアップルパイはどうなるのか。
さあ是非とも、この物語の最初の1頁を。
最後に残ったものが如何に奇妙なことであったとしても。
それは真実となるのだから。
リンゴの果実の花言葉(実に花言葉というもの不思議だけど)には「誘惑」と「後悔」があるという。
主人公テリは、二股三股も余裕そうなクズ男と付き合っていたけど、好きだけどもこれ以上搾取されてなるものかと、別れを予感するその日に渾身のアップルパイを焼く。隠し味はなんと下剤だ。
しかし受け取り自体を拒否されるという形で、計画は失敗してしまい。
美味しそうなアップルパイの誘惑に負けたのか、はたまた別の理由があったのか、偶然居合わせた謎の男が、そのアップルパイを食べて……後悔する。
という導入から始まるこの物語。
膝上に落ちたパイの欠片のようなクズ男を払いのけて捨てる、サバサバとした主人公の性格に親しみが沸きます。サクサクと読み進められる軽快な文面と、シナモンのように香るミステリー、そして読後に残る甘酸っぱさ。
おお、この作品そのものがアップルパイみたいだ!
紅茶を一杯を飲み切る時間で、美味しくいただける物語です。
おやつの時間に軽く読書したい、そんな時に特におすすめ!