第102話「黒髪美少女のドヤ顔」

「――やぁ、お帰り二人とも」


 陽と真凛が戻ると、凪沙が笑顔で迎えた。

 しかし、その隣では頬を膨らませて拗ねている佳純がいる。

 その目には、涙が溜まっていた。


「俺達がいない間に何があった……?」

「はは、なんでもないよ」


 陽が尋ねると凪沙はそう笑顔で誤魔化したけど、凪沙の隙を突いて佳純が陽の元に駆け寄ってきた。


「凪沙がいじわるした……! 頭を叩いてきたの……!」


 どうやら佳純が涙目になっていたのは、凪沙に叩かれたかららしい。

 それにより、凪沙は不満そうに口を開く。


「何を言うんだい、あれは撫でただけだよ」

「嘘! めっちゃ痛かったもん!」

「当たりどころが悪かったようだね、それは悪かった」

「わざとやったくせに……!」


 わざとらしく凪沙が肩を竦めると、佳純が涙目で睨む。

 完全に険悪な雰囲気だ。


「なんでこう、目を離すとお前らはすぐに喧嘩を始めるんだ……」


 目を離したらすぐに問題を起こす二人――いや、三人を見ながら、陽は溜息を吐く。

 まるで幼子やペットのお世話をしているような気分になった。

 むしろ、にゃ~さんのほうが手がかからないだろう。


 そんなふうに疲れながら、陽は涙目で拗ねている佳純の頭に手を置く。


「大丈夫か?」

「あっ……んっ」


 ゆっくりと頭を撫でると、佳純は嬉しそうに目を細めた。

 体は脱力し、無意識か意図的かはわからないが、陽に抱き着いてくる。

 それを陽は気にした様子がないが、真凛が物言いたげな目を陽に向けた。

 しかし、陽は真凛の視線に気付かないふりをして凪沙を見る。


「佳純を引き留めてくれてたんだとは思うけど、暴力はなしな」

「はいはい、わかったよ。たくっ、佳純ちゃんはすぐに陽君に泣きつくんだから」


 凪沙は不満そうに佳純を見るが、佳純は陽に撫でられることに全集中しているので、喧嘩をすることはない。


「それよりも考えていたんだが、再生数を稼げそうな上に、二人にあってそうなのを思いついた」


 陽がそう言うと、凪沙と真凛は意外そうに陽の顔を見上げた。

 佳純に関しては、陽が言っていることに耳を傾けていなかったようで、今も頭を撫でられることに集中している。


「あの状況で考えていたなんて、やっぱ君凄いね。それで、何をするの?」


 凪沙は先程拗ねていたのが嘘かのように、笑みを浮かべて陽を見た。


「あぁ、踊ってみた、とかどうだ?」

「踊ってみた? 歌ってみたじゃなく?」

「いや、できるなら歌ってみたのほうがいいんだけど、佳純が声は大切にしたいらしいからな」


 前に佳純がサブチャンをする時に歌を提案したことがあったが、その時佳純は嫌がった。

 だから今回、踊ってみたを陽は提案したのだ。


「う~ん……まぁ、確かに二人可愛いし人気出るだろうけど、練習する時間とか考えると、動画中々あげられなくない?」


 どうやら陽の提案には思うところがあるようで、凪沙は反論してきた。

 むしろ陽からすると、時間がかかって中々動画があげられないことに意味があるのだが。


「仕方ないだろ、動画クオリティを優先したほうが伸びるんだから。それに、最初は更新頻度が悪くてもいいはずだ」

「まぁ、それは一理あるけど……でも、わざと時間をかけるのを選んでない?」


 凪沙は頭がキレて相手の思惑を見透かすのが得意なため、陽の思惑にもあっさりと気が付いた。

 だから疑い深い目を向けてきている。


「そんなことはない。伸びることや動画映えを考えた結果だ」

「じゃあ、もう一つ言うけど、これ佳純ちゃんに有利すぎない? 佳純ちゃん、踊りとか歌とか大得意でしょ」


 真凛の実力を知らない凪沙だが、佳純とは結構な付き合いの長さなので実力を十分に知っていた。

 そう話している間に陽は佳純の頭を撫でるのをやめていたので、話を聞いていた佳純はドヤ顔で口を開く。


「陽を落とすために料理や歌、踊りとかあらかたマスターしてるからね」


 どうやら佳純が頑張る全ての根幹は、陽に好かれたいという気持ちらしい。



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【あとがき】


いつもありがとうございます(*´▽`*)


本日はついに

『負けヒロインと俺が付き合っていると周りから勘違いされ、幼馴染みと修羅場になった』

の発売日ですので、

多くの方にお読み頂けていますと幸いですヾ(≧▽≦)ノ


是非是非、よろしくお願いしますm(*_ _)m

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負けヒロインと俺が付き合っていると周りから勘違いされ、幼馴染みと修羅場になった ネコクロ【書籍6シリーズ発売中!!】 @Nekokuro2424

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