江戸時代後期、漁村で海女の娘組の頭を務めていた相瀬は、とある日の晩大岬で身投げをしようとしたひとりの女を助けた。
その女は、訳ありの姫君だった――。
普段時代小説はあまり読まない方なのですが、歴史用語については作中でわかりやすく解説されているので読みやすいです。
また、たくさんの謎と続きの気になる展開に、時間を忘れて夢中になって読んでしまいました。
現在(下)の最終話まで拝読したのですが、印象に残る結末に、今でも余韻が残っています。
海女と姫君、身投げの一件がなければ道が交わらなかったであろうふたり。
家老の陰謀が渦巻く中、ふたりの行く末はいかに――。
江戸時代の漁村を舞台にした、唯一無二の時代小説。
歴史ものが好きな方や、普段はあまり時代小説を読まない方まで、多くの方にお勧めしたいです!
江戸時代の漁村を舞台とした、若い海女(あま)たちが躍動する、歴史ミステリーです。
とにかく女の子たちの描写が秀逸。
仕草のかわいらしさ。ネーミングセンスのよさ。
切ない、ピュアな関係性が心地よく、ドキドキさせてくれます。
主人公・相瀬(あいせ)は若い海女たちのリーダーで、勇敢な行動派。
それを支える真結(まゆい)は、思いやり深く、慎重派。
身投げした玉藻(たまも)姫を、相瀬が海中で救うところから、物語ははじまります。
最初は部分部分しか見えていない海女と漁村の様子が、次第に細部が見えはじめ、大きな歴史の流れへとつながっていく様子が、必見。
海はもちろん、自然描写の、場面場面における細かなリアリティが美しい!
祭りの様子なども丁寧に描写されていて、臨場感が伝わってきます。
驚くべきクライマックス(後編のクライマックス)は、納得の結末でした。
小説というのは、直接に異世界を舞台にしなくても、日常で触れることのない「異世界の空気感」を描き出すものであるはず。その独特の空気感が、この作品からは強く感じられ、浸ることができました。
作者様のやさしさが伝わってくる、名作、力作です!!