最終話 いつかまた

「よ~し!まずは千夏が行きたがってた店に行くか」


 拓人がそう言って先頭を歩く。その後ろに千夏、楓そして俺だ。千夏が行きたがっていたお店は案外近かった。


 そこのお店で、お土産を見る。別にお土産だったら帰りの方がいいんじゃないかと思ってしまうが、先に買っておけば、ゆっくりと他のところをまわれて、お土産を買ってないという焦りをなくせるというメリットがある。


「見てくださいっ!木刀が売ってます!」

「そうだな……まさか買うのか?」

「いえっさすがに買いませんけど、すごいなぁと思ってみてたんです」


 たしかに、この男心をくすぐられる感覚。中二心が出てくるというか。見れば見るほどかっこいいと思ってしまう。


 すると楓が俺の方を、微笑みながら見ていた。


「な、なんだよ」

「いえっ、目をキラキラさせてかわいいなぁと思いまして」

「キラキラさせてたか?」

「はいっ!とっても」


 そんなに、キラキラさせていたのか……俺はこの木刀を本当に欲しいと思って見ていたんだな。


◆◆◆

 俺は、結局木刀を買わなかった。各々お土産も買い、次の目的地に向かう。次は俺が行きたがっていた清水寺に向かう。


 予定より少し早いが、その分じっくりと見れるということだろう。ついたのはいいものの、拓人と千夏は二人で見ると言って、離れてしまった。二人きりにさせてくれたのかもしれない。


「すごいですねぇ……綺麗です」


 俺は、口を開いたまま、何も話さなかった。というよりも清水寺の景色は本当にきれいで、俺は言葉を失っていた。


「蓮君前に私の行きたいところはないのかって言ってましたよね?」


 突然楓が俺に問いかけてくる。


「あぁ、言ったな。まさか、いま急に出てきたとか?」


 もしかして、今行きたいところが急に出てきたとか、それとも、本当は行きたいところがあったけど、言い出せずにいたとかなのだろうか。


「いえっ、そういうわけではないんですけど……どこに行くかというよりも、誰と行くかが重要だと思うんです。この景色も、私は蓮君がいたから見ることができた」

「あの日、身も心もボロボロで、いっそのこと死んでしまおうかと思ってた私に、光を見せてくれたのはあなたでした。あのとき死んでいたら、こんなに素敵な景色を見ることはできなかった」

「こんなに、素敵な友達にも、バイトをする楽しさも……全部………全部」


 俺は、ずっと黙って聞いていた。自分が助けたとは思ってはいない。あの状況で誰が手を出しても、変わらなかったことだってある。


 しかし、、人生なんて、先のことは分からない。けれども、その日その日を一生懸命に生きている。それだけでもすごいことなんだ。


「もし……願いが叶うのなら、いつかまた……もういちどこの景色を見に来たいです……」


 そう言って、楓は、必死にこらえていたのだろう、小粒の涙が、綺麗で大きな瞳からツラーっと垂れてから、今までせき止めていたものが崩壊したかのように、大粒の涙がどんどんと、瞳から頬を伝ってくる。


 俺はその姿を、見てそっと抱きしめた。


「来よう。何年後かわからないけれど……いつかまた」


 そう言ったあとに、俺は今度はさっきよりも強く抱きしめた。


◆◆◆

「みてみて!ママ!」


 きゃっきゃっとわかりやすくはしゃぐ女の子に周りの人たちも微笑んでいる。


「走ると危ないですよっー」

「まぁまぁ、楽しいんだろ」

「そうやっていつも甘やかす……本当に娘に甘いんですから」

「妻にも甘い気がするんだけどなぁ」


  そう言うと、ポコポコと殴られてしまう。周りの目もあるから恥ずかしいんだが……


「ママッはやく~!」

「はいはい!今行きますからっ」


 そう言って、女の子はこちらに手を振っている。


「えいっ捕まえましたっ!」

「うわぁ~あははっ」

「もう~すぐに走り回って危ないので私が抱っこしておきますっ」

「綺麗だな~」


 俺はそう言って、この懐かしい景色をもう一度眺めている。


「わたし今とっても幸せですっ!」

「俺もだよ、本当に幸せ者だと思う」

「私大好きですよ!蓮君のこと!もちろんとして!」

「わたしも!!」

「あぁ俺も二人とも大好きだよ、もちろんとして」


 俺はそう言って、楓と自分の娘を強く抱きしめた。


 



「公園で天使様を拾ったら「好き」と言われた件について     完」


あとがき


 この度公園で天使様を拾ったら「好き」と言われた件についてが完結となります。

 今までたくさんの応援ありがとうございます。特にずっとこの作品の更新を待ってくださった読者の皆様には本当に感謝しています。


 読者の皆様の期待に応えられるような内容だったのか、終わり方は本当にこれであっているのかわかりませんが、この作品を楽しんでもらえたのなら幸いです。


 この作品は私が以前言った通り完結はさせないできないと思ってました。なんとか完結できたのは、半分以上読者様のおかげです。ありがとうございました。


 最後に今後もラブコメ中心に活動していきますのでよろしくお願いします。


                      楠木のある

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公園で天使様を拾ったら「好き」と言われた件について 楠木のある @kusunki_oo

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