どろりと濃くて重たい性愛と呪

 前世の記憶を持つ女性が、その前世で愛し合った女性に出会う物語。

 気合の入ったガチ怖ホラーに、どっぶり大人な百合ものラブロマンスを乗っけた、一粒で二度美味しい贅沢なお話です。
 どちらも手を抜かない感じというか、百合とホラーの両方が主軸でありながら、しっかり一本の物語として進んでいく読み口が魅力的。全体的にねっとりしっとりとした、重量のようなものが楽しい作品です。

 何がいいってやっぱりホラーの怖さ! 個人的に特に好きなのが序盤から中盤、怪異の正体はまだ見当もつかないのに、でも明らかに「よくないもの」であることだけははっきりわかるこの感じ。
 怖さの匂わせ方というか組み立て方というか、何をすればこちらが怯えるか見透かされているような、なにか信頼できる恐怖がありました。

 百合要素もしっかり濃い味というか、かなり肉食な感じの恋愛劇を貫いてくれるところが特徴的。しっとり大人な展開にドキドキします。
 性と呪、どちらも湿度高めの濃厚さが嬉しい作品でした。