拝啓

本文

　拝啓

　ひとみさん、お元気でしょうか？　お手紙、出せていなくてごめんなさい。

　夏場の不摂生がたたってか、夏風邪を引いてしまいました。喉が痛くて、頭痛が止まりません。でも、薬を飲んだおかげでだいぶ良くなりました。

　約束の日まであと一週間ほどになりましたが、ひとみさんは体調を崩したりしていないでしょうか？

　余計なお世話とは思いますが、お体にお気をつけてお過ごしください。　かしこ

　追伸

　夏休みの課題はほとんど終わりました。約束の日までには全部済ませられそうです。

　　　　　◯

　拝啓

　ひとみさん、お元気ですか？

　いよいよ明日ですね。ひとみさんと会うのは楽しみだけど、少し緊張しています。

　たぶんこの手紙がそちらに届く頃には、私は駅のホームで夜行列車を待っています。ひとりで乗るのは初めてです。切符を無くさないように、ずっと手に握っておこうと思います。

　この手紙を書いているときには、ちょうど荷物をまとめています。あまり多すぎても良くないけど、少なすぎても良くないと思うので、選ぶのは大変です。

　夏休みの課題は、あと数学のドリルだけです。終わらせることができませんでした。列車の中で、終わらせて、すっきりした状態でひとみさんに会おうと思います。

　それでは、会える時を楽しみにしています。　かしこ

　　　　　◯

　拝啓

　ひとみさん、お元気ですか？　私は今、東京の駅の喫茶店でこの手紙を書いています。ついさっき列車で到着しました。

　周りはスーツの人ばかりです。こういう場所に一人で入るのも初めてです。ミルクティーを注文しました。コーヒーはまだ苦手です。

　そういえば、ひとみさんはお仕事なさっているんでしょうか。何をしているんですか？

　私も将来は、就職活動をしないといけないのでしょうが、まだ実感が湧きません。将来のこと、その前に受験のこと、いっぱいお話ししたいです。

　会える日を楽しみにしています。　かしこ

　追伸

　列車の中では寝てしまって、数学の課題が終わりませんでした。これを書き終えたら、すぐに取り掛かろうと思います。

　　　　　◯

　拝啓

　ひとみさん、お元気ですか？

　私は今、東京のホテルでこの手紙を書いています。私のお小遣いで泊まれる精いっぱいのホテルですが、お部屋は綺麗で、夜景は綺麗で、とても満足しています。

　そうだ、夜景の写真を撮ったので、同封します。

　といっても、ひとみさんには、見慣れた景色かもしれません。

　そうだ、ひとみさんはどこに住んでいるんですか？　一軒家？　それともマンション？　もしかして、ホテルをあちこちハシゴして暮らしているのでしょうか。都会の人って感じで憧れます。

　いっぱいお話聞きたいです。

　会える時を楽しみにしています。　かしこ

　　　　　◯

　拝啓

　ひとみさん　　　どこにいるの

　　　　　◯

　家に帰ったら、手紙がたくさん届いていた。

　お母さんが眉を顰めながら、私に数学の課題は終わったのかと聞いてくる。関係ない。黙ってて欲しい。ちゃんと終わったし。

　部屋に帰ったら、また、ひとみさんに手紙を書かなくちゃ。