食べる物

バブみ道日丿宮組

お題:昨日食べた錬金術 制限時間:15分

食べる物

 食べ物を美味しいと感じたのはいつが最後だったろうか?

 口に食べ物を入れた感触があったのはいつだった?

「……」

 自分はもう人間じゃないという自覚はあるが、食べるという行為だけはやめられない。


 ーー誰にも負けない、誰かに追い越されない、誰も真似しない。そんな人になりたかった。

 

 たどり着いたのはーー錬金術。

 それは私の家に代々伝わる大きな術。中には古く危険な禁書もいくつかあって、教えてもらえたものとそうでないものもたくさんあった。

 でも、私には関係なかった。

 知らないことは食べてしまえば、頭に、全てが入るから。

 そう……私は家族を錬金術で食べ物に変えて知識にした。そのために味覚はなくなった。人間の味というのを人間という人格が拒否したのか、家族の誰かが味覚障害だったのかはわからない。実験サンプルとして残してたものまで口にしたのがいけなかったかもしれない。

 後悔はない。

 誰でもない誰かに届くために必要なことだったから。

「……はぁお風呂久しぶり」

 今日も泊めてもらった家主をカプセル状の食べ物に変えて口にしてしまった。

 罪悪感は既にない。あるのはただの食物連鎖にすぎない。

 家主は食べられる存在であったと判断するだけ。

 もちろん知識は私の中に入ってくる。役に立たないのは通りがかった子供に錬金術で吐き出した飴を配る。

 その後その子供がどうなったかなんて知らない。

 いい青年になるか、破天荒ぶりを発揮するか、興味はない。感謝される筋合いも、批判される筋合いもない。知識を与えることも時として大事なこと。

 私が欲しいのはわからない知識。

 全てを知れば、誰も私を誰かとしか見ることはないから。

 だから、私はこれからも誰かを口にしてく。

 見果てぬ知識を目指すためにーー。

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食べる物 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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