10 I'm home

 後ろからの足音は聞こえなくなっていた。それは夜の膜がそうさせたのか、それとも脳がエラーを起こしているのか。もしかしたら別の道から先回りしているのかもしれない。それでも音がないのは少し安心する。

 しかしそれと同時に、無音の世界に放り込まれたのは恐怖を加速させた。彼がどこにいるのか全くのヒントがない状態になってしまったのだ。いつどこから飛び出てきてもおかしくない。

 体力が底をつきそうだが、やっと自宅が見えてきた。玄関には明かりがともっていて、家族が私の帰りを待っているのがわかる。リビングからの光も漏れ出ている。きっと家族はみんな帰ってきているのだろう。もしかしたら夕食も食べずに私のことを待っているかもしれない。

 一刻も早く安心させてあげたい。いや、違う。私が安心したいのだ。

 きっと家族に全てを話せば守ってくれる。夜寝ることもしないで外を見張っていてくれるかもしれない。何となく、涙が出そうになる。

 しかしまだわからない。彼は今、私の背後にいるわけではない。

 どうしよう、もし家族が全員彼に……。考えてから首を振る。そんな訳はない。

 だから、しかし、私は──。



入る→12へ『Sink to the seabed』

https://kakuyomu.jp/works/16816700426841578850/episodes/16816700426843458173


入らない→13へ『There』

https://kakuyomu.jp/works/16816700426841578850/episodes/16816700426844092240


振り向く→14へ『Truth』

https://kakuyomu.jp/works/16816700426841578850/episodes/16816700426844123703

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