13 There

 家に入るのはやめておこう。嫌な予感がする。

 いや、しかし、ただ遊びのように人を殺そうとする人間が家の中から現れるなんて、有り得るだろうか。鍵だって持っていないだろうし、誰かの知り合いだなんてことはないだろう。扉は壊されていない、窓も綺麗に張られたまま。もし鍵をピッキングで開けたとなればわからないかもしれないが、しかし……。

 ひとつため息をついて、別の安全な場所を探すことにする。

 ──そこは崖だった。

 おかしい。さっきまで住宅街にいて、彼からただ逃げていて、家の前にいたのに。それなのにこんな崖にいるなんて。

 真下では波が寄せては返している。その音もリアルに鼓膜を揺らす。ここは、本当に崖らしい。

 ということは、全てが夢で、全てが私の脳内で起きている出来事、ということだろうか。それならいい。だってそれなら──。

「ねえ」

 遠くから彼の声が響いてくる。脳内でこだまする。現実と夢の境目がわからなくなる。これは、本当に夢なのか?

 現実の私はまだ保健室にいて、まだ寝ていて、それでこの変な夢を見ているのかもしれない。これが現実だなんて、どうしても信じられない。



走る→9へ『Catch and run』

https://kakuyomu.jp/works/16816700426841578850/episodes/16816700426843442779


飛び降りる→15へ『It was a dream, isn’t it?』

https://kakuyomu.jp/works/16816700426841578850/episodes/16816700426843536326

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