古代から伝わる巨人「ダイダラボッチ」を人生をかけて追い求めた教授がたどりついた境地とは――?導入は軽妙で入りやすく、読み進めていくに現実感や真実味が増していき、読者を作品世界に引き込むのが上手な作家様という印象を受けました。そして最後には(ネタバレになるといけないのであまり言えませんが)人間の想像力というものや、人生そのものについて深く考えさせられました。信じたものを一途に追い求める人生も素敵だと思いました。
「まるで、巨人の手や足の跡のようだ」――古代の人々は、大きな池や窪地を見て、思ったらしい。それゆえにこそ、巨人の存在を信じた。そして現代――とある老嬢の教授もまた、巨人の存在を信じ、追い求めた。その果てに、彼女が出会う「モノ」とは――かつて、武蔵野にその存在を信じられた「モノ」とは何だったのか。その答えが――ここにあるかもしれません。
この作品では古民家のイメージが合います。古い家に、古い資料。その中から生まれたのは……?彼女の人生に喝采を。ダイダラボッチの存在は大きかった。いやダイダラボッチではないのかもしれない。もっと不定形で不安定な存在が彼女を見ていた。でも、それでも彼女が望んだダイダラボッチと思うと人生に意味があったに思える。それこそ喝采をあびるに値するのだろう。