破局に向かう二人の苦しさと切なさを見事に表現した小説です

パートナーシップ制度を利用したゲイのカップル、春日佑馬と長谷川樹がドキュメンタリーの撮影を受けることになった。
この小説は、そんな二人の百日間の物語です。

実は、彼らはすでに破局寸前。撮影が進むにつれて二人の気持ちがどんどん離れていく様子は、読んでいて苦しいほどですが、追い詰められた樹が爆発してからの展開は、まさにページをめくる手が止まりません。

特筆すべきは、作者の鋭い表現力。
心に響くような言葉があちこちにちりばめられていて、それを見つけたときの喜びは、まさに読書の醍醐味と言えるでしょう!

LGBTの問題と真正面から向き合っている小説ですが、それだけでなく、女性ディレクターが感じる性差別や、育った環境による根っこの部分の違いなど、様々な角度から切り込んでいるのが面白いです。
テーマは重いのに、作者の文章はサラリとしていて読みやすい。不思議な作家さんだと思いました。

すでに書籍も出されているプロの作家さんなので、素人がなに言ってんだって感じですが、とにかくとても素晴らしい小説でした。

カクヨム作家の皆さんのお手本にもなる小説ではないかと思います。
ぜひ読んでみてください!