信長の母に転生しまして
マキシム
第1話
ごきげんよう、土田御前と申します。なぜかは知りませんが、戦国時代に転生していた。なんで転生したのか、知らないけど、いつの間にか土田御前になっていたのだ。しかも土田御前はうつけの信長を毛嫌いし、品行方正な信勝を溺愛し、織田家を真っ二つにした等と歴史に名を遺すほどの悪女である
「私、何かした!まあ昔はヤンチャしたけどさ・・・・」
そんな私にも縁談がきた。相手は織田家清州三奉行の一つ、織田弾正忠家の織田信秀、信長の父親である。祝言も終わり、私と信秀は正式に顔合わせした
「おお、お前が俺の嫁か!」
いきなり俺の嫁発言してきたこの男こそが織田信秀である
「ほう、貴方様が我が亭主殿か?いきなり俺の嫁とは、随分と礼儀知らずなこと・・・」
「ひ、姫様!お控えを!」
私の乳母であるうつぼが私に注意するが、信秀は・・・・
「ハハハハハハハ!これはこれは気の強い女子じゃのう!織田家の女ならこれくらい強くてな!」
「女子はいくつも顔がありまする、時には男をも殺すほどに・・・」
「ハハハハハハハ!気に入った!名はなんという!」
「るい(仮名)と申します。」
「るいか!よし今すぐ子作りするぞ!」
「ふふふ、いいでしょう!夜の合戦!私が制しましょうぞ!」
その後、私は信長、信勝、秀孝、信包、お市、お犬を生んだ。そして私は今、那古野城にいる
「母上、宜しいんですか?親父殿を放っておいて。」
「構わないわ、あんな種馬野郎の事なんか。」
私は信長のいる那古野城に避難していた。原因は夫婦喧嘩です。夫婦なれば些細な事で喧嘩しますよ、私は刀や薙刀、弓矢等を使って対抗しましたよ。思えば私が薙刀を振り回して、信秀を追いかけ回した時の、信秀の顔は傑作だったわ(笑)史実と違って、私と信長は上手くやれているし、信長の奇行も改まっている
「義母上様、ご機嫌麗しゅう。」
「御機嫌よう、帰蝶殿。」
この娘は斎藤道三の娘、帰蝶、濃姫と言った方がいいかしらね。嫁いできたときは周囲からマムシの間者と警戒されたが、私が直接、問いかけると、あっさりと白状した。それがきっかけか、私と帰蝶は打ち解け、今では実の親子のように仲良くなった。しかも史実と違い、2人の子供がおり、一人は奇妙丸、もう一人が徳姫である
「ところで、まだ信長を刺し殺さないのかしら?」
「ぶぶっ!母上!何を言ってるんですか!」
「ふふふ、信長殿はなかなか隙を見せてくれませんので(笑)」
「お濃、お前まで何言ってるんだ!」
私と帰蝶が信長をイジリ倒していると、そこへもう一人の息子の信勝がやってきた
「母上、兄上、義姉上、ご機嫌麗しゅう。」
「おお、信勝、どうしたんだ。わざわざ那古野まで?」
「信勝殿、ご機嫌麗しゅう。」
「・・・・私は帰らないわよ。」
「母上、どうかお戻りください!」
信勝がここに来たということは、信秀が寄越してきたのだろう。夫婦喧嘩をして私が避難するとしたら、ここしかない。信秀が戦に出かけている間は、私は信秀が治めている領地の経営をしていた。私は特産品の奨励を行い、前世の記憶をフル活用して、織田弾正忠家に多大な恵みを齎した。更に領民のために目安箱の設置や直訴を許してあげたりして、領民たちの陳情を聞き、民政にも尽力した。そこから私は【北条政子の再来】【尾張一の賢夫人】ともてはやされた。そのため信秀は留守の間の内政の裁可の一切を私に任せている。ちなみに私は、忍びを士分として召し抱え、【御庭番】を組織して国内外の情報収集を行っている
「母上がいないと、領地の経営がままなりません!父上も母上のお戻りを首を長くして待っております!」
「知るか、人を当てにする前に自分で何とかしろと言ってきなさい。」
「母上!」
信勝は必死で懇願すると、そばで見ていた信長が助け舟を出した
「母上、さすがに領地の経営については母上しか知らない重要な案件がありますよ、さすがに戻らないと・・・・」
くっ!信長の奴、信勝の味方しおって!だが私しか知らない案件もあるからな・・・・
「はあ~、分かったわ、古渡に戻るわ・・・・信長、後で覚えておきなさい。」
「何で!」
私は観念して古渡城へ向かっていた。正直、このまま戻るのも癪なので、弩を持参していた。私が開発した弩は非力な女子でも扱う事が出来、遠くからでも攻撃ができることから侍女たちに持たせている。まあ、私の場合、弓矢でやるけどな。そんなこんなで古渡城に到着した。そこへ信秀が出迎えた
「おお!ようやく帰ってきたか!」
「ええ、ただいま、戻りました。」
「ちょっ!お前、何、持ってるんだ!」
「弩ですが、何か?」
私が弩を持っていることに信秀は慌てた。信勝もまさか私が弩を持っているとは知らず、私を止めようとした
「母上、さすがにそれはシャレになりませんよ!」
「何言ってるの?私に無断で側室を作った事を許したわけじゃないのよ、領地の経営が心配だから戻ったのよ。」
「ま、待って!お前に黙って側室を作ったのは悪かった!だから、さあ・・・・」
「喧しい!側室を作るにも正室である私の許可なしにやるなんざ、当主失格じゃ!この、うつけ者が!」
「「「「「母上(御方様!)、どうか御静まりを!」」」」」
信勝と家臣たちが必死で仲裁に入り、その場は難なく収まった。そんなこんなで歳月が過ぎ、信秀が突然、倒れた。知らせを聞いた私が駆け付けた時には苦しそうな表情で布団の中にいた
「で、殿の容体は!」
「はい、恐らくは流行り病かと・・・・」
信秀の容体は一進一退、信長や帰蝶や信勝、信秀の側室たちや子供たち、織田家の一族や家臣たちが古渡に集まった。私は信秀の看病に勤しんでいた。それから数日が経ち、信秀が目を覚ました
「・・・・今、昼か、夜か。」
「夜中ですわ。」
「るい、ワシはもうだめかもしれん。」
「何を言ってるのです、尾張の虎の名が泣きますわよ。」
「人間、寿命には勝てん。るい、もし生まれ変わったら、もう一度、お前を妻に迎えたい。」
「・・・・私は御免被ります。」
「・・・・そこは嘘でも了承するところではないか。」
「種馬野郎の嫁なんざ、御断りですわ。」
「相変わらずじゃのう、ハハハ・・・・・るい、信長を、織田家を頼んだ。」
「・・・・・ええ、殿もどうかお休みになられてください。」
それが私と信秀の最後の会話だった。1552年に織田信秀が死去した。そこから信秀の葬儀が始まり、喪主は織田信長が務めた。史実と違い、正装に着替え、焼香も普通にしている。葬儀も半ば、私は集まった親族・家臣一同に宣言した
「皆の者、信秀殿の後継者は織田信長である!これは亡き信秀殿の遺言である!」
私の宣言に後継者である信長はシャキッと背筋を伸ばし、信勝は真っ先に頭を下げ、後に続いて親族・家臣一同も頭を下げた。私の影響力は凄まじく、信長の下で一枚岩になった
「信長、織田家当主として挨拶をなさい。」
「ははっ!」
信長は立ち上がり、皆の前に立ちはだかった
「織田家当主となった織田信長である!もしワシが当主になることを不服と申すなら、すぐに領地へ帰り、戦の準備をするがよい!いつでも相手になるぞ!」
「「「「「「ははっ!」」」」」
信勝を始め、親族・家臣一同は信長に誓紙を差し出し、臣従を誓った。そして織田信長の下、尾張統一が始まった。本家である守護代の織田信友を攻撃し、滅ぼした。一度、謀反を企んだ斯波義銀を説得という名の脅迫をし、お市と婚約させることで大人しくさせ、次々と反乱分子を鎮圧していった。史実と違い、平手政秀は自害しておらず、家老として信長を支えている。そんなある日、美濃より知らせが来た
「マムシが挨拶に来いとは・・・・」
帰蝶の父である美濃のマムシこと、斎藤道三、主家である土岐氏を追放し、自分が美濃国主の座に座った下剋上の申し子である。そんなマムシが、信長と会談したいと言ってきたのだ
「母上、これは行かねばなりません。」
「罠であろうとも、行くしかないでしょうね。」
私は信長に道中の際は、うつけのフリをし、会談の際は正装にするよう忠告した。信長も同じことを考えていたようで、信長は聖徳寺へ向かった。その道中、うつけの恰好をしていると、変装した道三が隠れて覗いていた
「あれがワシの婿か。」
道三は目を疑った。信長を当主として行動する織田家に、疑問を抱きつつ、正徳寺へ帰り、いつでも暗殺できるよう準備をした。正徳寺に着いた信長は正装に改め、道三の前に現れた
「ちっ!(やはり、うつけは偽りか!)」
道三は尾張での信長の評判について、うつけ者とか、改まったとかと入り混じった噂が道三の耳に届いていた。やはり尾張の女傑も絡んでいるに違いないと道三は舌打ちをした。土田御前の事は美濃にも伝わっており、信秀がいなくても土田御前がいるかぎり、尾張はびくともしないと踏んでいたのだ
「挨拶も遅れてしまい、申し訳ありません。」
「挨拶とは?」
「道中で我ら一行を隠れて見ておられたはずでは?」
こやつ、ワシが先回りしていた事を感づいておったのか!さすが尾張の虎と女傑の息子、一筋縄ではいかない!道三は観念して、暗殺を中断した。その後は一言も会話がなく、普通に食事をし、互いに領地へ帰るのであった
「ふう~、どうやら無事に済んだようね。」
私は新たに移った清須城にて無事に会談が終了した事に安堵した。尾張国内は平穏そのもので、史実では信勝が謀反を起こすが、今回はしっかりと留守を守っている。普段から依怙贔屓せずに信長を嫡男とし、兄弟仲良くするよう気をつけていたので、兄弟仲が良いです。信長の異母兄である織田信広殿についても血は繋がっていなくても、我が子のようにしっかりと育てた結果、信広殿は私を実の母のように慕い、今でも手紙や贈り物を欠かさず寄越してくれる。さすがに今川に囚われた時は、ヒヤヒヤしたけど・・・・
「何!マムシが義龍に襲われているだと!」
美濃より知らせが入った。かねてから不仲であった道三と息子の斎藤義龍がついに決裂したのである。史実では道三は長良川の戦いで死ぬのである。信長は援軍に差し向けたが、私は密かに忍びを美濃へ送り、道三を保護している。道三が抵抗しても、気絶させて連れてくる手筈である。その後、道三を保護した忍びと信長は合流し、道三は尾張の清須城へ入った。客間には私と信長、帰蝶と道三の四人だけである
「舅殿、御無事で良かった。」
「父上。」
「婿殿、帰蝶、我ながら恥ずかしい思いじゃ・・・・」
「道三殿、今さら恥を書いても、何も変わりません、我らとともに美濃を取り戻しましょう。」
「ははは、さすがは尾張の女傑殿じゃ、信秀殿の妻じゃなかったらワシの妻にしておったわい。」
「残念ですが、私の夫は信秀殿のみです。マムシの妻なんざ御免です。」
「・・・・はは、手厳しいのう。」
斎藤道三は信長の庇護を受け、美濃攻めの大義名分ができた。そんな中、今川が動き出した。今川義元は無能と言われているけど、大違いだ。駿河・遠江・三河の3カ国を支配する奴が無能なわけがない。私は【御庭番】を使い、向こうの情報収集を行った。信長にも情報の重要性を教え、信長も忍びをよく活用していた。そして今川義元率いる大軍が、尾張へ侵攻した際、かく乱戦法を使い、今川の大軍を足止めに成功した
「では母上、舅殿、帰蝶、行って参る。」
「やるからには必ず勝て。」
「婿殿、留守はしっかりと守るぞ。」
「ご武運を。」
信長は清須城を出て、熱田へ向かった。そして軍を整えつつ、戦勝祈願をし、忍びを使って、今川軍の居場所を調べた。義元は桶狭間山にいることが分かった。義元率いる本隊は領民に化けた忍びたちによって足止めされ、小休止していた
「皆の者、敵は桶狭間山にいることが分かった。敵は少数だ!襲うなら今ぞ!」
「「「「「オオオオオオオオオ!」」」」」
織田軍は桶狭間山へ向かった。今川軍も桶狭間山から織田軍が接近しておる事に気付き、臨戦態勢を整えた。そして両軍は正面で戦ったが、天は信長を味方した
「いて!何だ!雹か!」
空から雹が降ってきて、今川軍を混乱させた。その隙に織田軍は急襲し、今川軍は総崩れとなった。そして服部小平太と毛利新介が今川義元にとどめを刺した
「今川治部大輔、討ち取ったりいいいいい!」
今川義元が死んだことが戦場に響き渡り、今川軍は蜘蛛の子を散らすように戦場を離れた。今川義元の首と愛刀「義元左文字」を手に入れた信長は意気揚々と清須へ凱旋した
「母上、ただいま帰りました!」
「うむ、当主らしくなったな。」
「母上の教えの賜物です!」
「ふん、しおらしくなりよって・・・・」
私は信長を出迎え、勝利を祝った。それを機に織田軍は徳川家康と同盟を結び、美濃へ攻めた。道三という後ろ盾もあってか、美濃の豪族から信長に味方する者が集まり、史実とは1年早く美濃は信長の手中に治まった
「やれやれ、また引っ越しだわ。」
私は信長とともに引っ越しを繰り返した。信長は本拠地を変えていった。付き合わされる身にもなれやと言いたいが、天下統一のためだ、多少の我慢は必要だ。足利義昭が岐阜に到着した際、私は義昭には気を付けろと忠告をしておいた。そして足利義昭を奉じて、都へ上洛、浅井長政とは婚姻同盟を結ばず、通常の同盟を結んだ。信長は結びたがっていたが、史実の件もあるからな・・・・
その後、信長は朝倉氏、比叡山延暦寺、伊勢長島、武田といった敵と戦った。それを何とか退け、足利義昭を追放、都を掌握し、天下統一に一歩、近づいた。私は岐阜で戦況を見つつ、孫である信忠に当主として心構えを教えた
「いい、信忠。いずれお前も父上の跡を継がねばならぬ、分かるな?」
「はい!御婆様!」
「信長のようになれとはいわぬ、お前には信長にないものを持っている。それを忘れるな。」
「はい!」
その後、信長の快進撃が続き、近畿一帯を治め、上杉謙信が死に、武田も滅んだ。そしてあの日が来る
「本能寺・・・・」
私としては信長と信忠を死なせたくない!忍びたちに命じて、光秀の動きを監視させた。そして光秀が謀反を企んでいるという情報が入った、そして信長と信忠にも知らせた。信長と信忠はすぐさま京を離れ、安土へ到着、明智軍が本能寺と妙覚寺を襲撃したと同時に、討伐軍が動き出した。光秀は手も足もでず、敗北し、最期は落ち武者狩りに討たれた。そして信長は天下統一に王手を下し、1585年についに天下を統一した。私も名実ともに【天下人の母】となったのである。しかし信長が明を攻略すると言い出し追った、私はすぐに信長を止めるために岐阜を立った。そして安土に到着し、信長を諫めた
「信長!明なんかよりも他を攻めろ!蝦夷地とか、琉球とか、高山国とか、ルソンとか、いっぱいあるだろ!」
「ええ!そこですか!」
私は蝦夷地、琉球、高山国、ルソン等を支配下に収めるよう諫めた。さすがの信長も無謀と思ったのか、私の諫めを聴き入れ、蝦夷地【北海道・樺太・千島列島】・カムチャッカ半島・琉球【沖縄】・高山国【台湾】・フィリピン諸島等を支配下に収めた
「母上には敵いません。」
「ハハハハハハハ!私に勝つなんざ100年早いわ!」
その後、私は1594年2月26日に亡くなる。死ぬ間際、信長、帰蝶、信忠、信勝等、息子や嫁、子供たちや孫たちに看取られながら、私は静かに息を引き取った
「ハハハハハハハハ!見たか!信秀!」
「ははは、るいには敵わぬわ。」
あの世で信秀と再会し、昔の事を語りながら、信長たちを見守るのであった
信長の母に転生しまして マキシム @maxim2020
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