甘々な時間…?

好きな人とふたりっきりの空間。そこには甘い空気が流れ、それはそれはもう甘ったるい、とにかく甘々な…なんてことにはならないのが私達。


「おっしゃー!やっと勝てた!じゃあ次のゲームしよーぜ!」


「毎回そうやって勝ち逃げすんの、ほんとやめたほうがいいよ」


「まあまあ、そう怒りなさんなって。次は楓の得意なゲームにするから」


「いや、ほとんどのゲーム私のほうが上手いけどね」


ママとパパが旅行に行った日、私達は朝までゲームをした。夜中に冷凍ピザを温めて食べたり、事前に買い込んでおいたお菓子を広げて大騒ぎ。甘さなんてこれっぽっちもない、それはそれは賑やかな時間だった。でもそれが、なにより幸せだった。私達にはまだ甘さなんていらない。家族だし。これくらいの距離感が、お互いに心地良い。強がりでもなんでもなく、私達には私達なりのペースがある。こうやって馬鹿騒ぎしていられるのも、特権だ。


朝、というより昼。いつもは休みの日でもある程度の時間に自然と起きられるのだけれど、朝までゲームをしていた私達は当たり前に爆睡していた。


「楓、腹減った!」


その一言で裕飛に起こされた私は、お湯を沸かす。【とにかくだらだらな生活を送る】という目標を立てていた私達は、部屋着のままカップラーメンをすする。


「うんまー!高いカップラーメン最高だわ!」


確かに美味しい。普段できないようなことをしたくて、少しお高いカップ麺を買っていた。ちなみにお高いアイスも冷凍庫に入れてある。一歩も家から出ないという究極の贅沢を遂行するべく、全力で買い出しした。その時間も楽しかった。小さな贅沢が、今の私達には大きな幸せなのだ。


しっかりアイスも食べたあと、配信されている映画を、二人ソファに並んで観た。もちろん手にはポップコーン。そして裕飛はコーラ、私はメロンソーダ。お決まりの組み合わせで、まるでカップルシートのような空間で映画を観た。家という安心感からか、というよりも単に寝不足だからか、ふたりとも途中で眠っていた。


「帰ったわよー!」

「ふたりともただいま!お土産あるよ」


玄関から聞こえるパパとママの声で、私達は揃って目を覚ました。これで特権を最大活用した、ふたりっきりの時間は終わりだ。だけどちっとも寂しくない。だって最高に楽しかったから。それに、これからも裕飛は隣にいる。それだけで十分だ。甘さなんていらない。


あ、でも待って!ちょっと甘い時間あったわ!一緒に寝た!リビングで気を失うようにだけど!朝4時くらいだったけど!…手、繋いで寝たし。心臓飛び出るかと思った。だって、ちゃんと、想い人だし。

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無関係ソーセージ~私たちはスーパーポジティブな双子です~ 早福依千架 @Fuku_kitare

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