特別な才能を持った絵描きの家に生まれながら、写真技術の台頭により職と生きるよすがを失った男が、天使と出会う物語。
シリアスな雰囲気のハイファンタジーです。タグにもあるとおり「人外」「異能」が登場しますが、決して戦いの物語ではない作品。
この異能というのも、主人公の家系に伝わる「見たままを写実的に描くことができる」という力のことを指しており、確かに超常的ではあるものの(技術や技能ではなく遺伝的な能力であるため)、いわゆる「異能バトル」的な作品のそれとは趣が異なります。
つまりは人の生き方や生き様の物語であり、人間ドラマ的な部分が魅力のお話です。
主要なモチーフでありまたテーマである、「目に見えるもの」の扱い方が綺麗で素敵でした。
彼にとっての生きるよすがである、目に見たままを写実的に描くことができる能力。写真との違いというか、その特色であったり長所短所あったりが、綺麗に物語の筋に組み込まれているのが読んでいて心地よかったです。
落ち着いていながらも壮絶な、人間のドラマが魅力の作品でした。
見た対象をありのままに描く異能を持つ一族が、写真の台頭と共に落ちぶれ、最後に残った末裔が財産を食い潰しているところからお話はスタートします。
主人公の家に届けられた一枚の写真、それは両腕のあるはずの部分が一対の翼になった可憐な少女……まさに天使のものでした。
主人公は天使に会うために妖しげな場所に足を踏み入れ、そして、店員に言われるがまま家に天使を招きます。
聖水と林檎、そしてパンを与え、天使の美しさを描こうとする主人公でしたが、なかなか思い通りに描けない中、天使はどんどん弱っていく……それて……。
という作品なのですが、幻想生物の描き方がとても細かくて、多分動物好きな方にはクリティカルヒットすると思います。
前半の「見た対象をありのままに描く異能」がどう活きてくるのか、天使とは一体……とたのしみに読んでくれるとうれしいです。