三題噺「廃墟のレストラン」「剣」「請う」

こんにちは、ボク。

ここはミル王国御付きクラウンギルドの受付になるけれど、おつかいの先はここであっているかい?


ん?おつかいじゃない?

ギルドメンバーになりたくてここへ来た?

ギルドマスターに教えを請いたいと?


そうかいそうかい!ごめんねボウヤ。

わしもずいぶんと耄碌もうろくしてしまったようだ、幼い男の子かと思ったが、立派な剣を持っているじゃないか。



おや、王国に認められた一大ギルドだってのに、ずいぶん寂れた受付だって?

ははは!確かにな。

ほんの100年前はレストランとして食事もできるそりゃあ立派な受付だったのさ。

大きな戦争があって、すっかり廃墟になってしまってなあ。

ようやく戦いが終わって、みんなでなんとか補修して今の姿になったんだ。



ほう、それにしては人気がないと?

今はわしひとりしかいないからのう、そう思っても仕方がないなあ。

日中はみんな仕事に出払っているからだーれもいないなんて、


しょっちゅう、

しょっちゅう。


夜になれば、また、あのころの、活気が帰ってくるさ。




さてさて、ギルドに入るなら手続きが必要だよ。

ここに君の名前と、武器の種類を書くといい。


……ありがとうね。

良い名前じゃないか。武器は剣で間違いないね。

あとはこの紋章を君に渡そうじゃないか。

これで晴れて君はギルドの一員、大切な仲間となった。



おお、おお、そんなに剣をかかげるほど嬉しいかい!

よくわかるよ!

ここは誰もが憧れるクラウンギルド!

多くの苦難を乗り越えた老若男女だけが国のために働ける立派な場所だからね!



さあさあ、こちらにおいで、君に紋章を渡―――――――





「……はあ」

「まあそう落ち込むな。昨日は失敗したが、今日はきっとうまくやれるって」

浄化し切っても再生する亡霊なんて厄介な……」

「症例 No.16-8-453

 ギルド受付員としてひとりで番をしていたところに厄災を受け、『亡霊症』を発症、かあ……。

 あれからもう1000年だ。ちゃんと……逝くべき場所へ旅立ってもらわないとな」



「ああ……いってくる」





こんにちは、ボク。

ここはミル王国御付きのクラウンギルドの受付になるけれど、おつかいの先はここであっているかい――――――




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ノリと勢いのショートショート集 綾乃雪乃 @sugercube

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