ノリと勢いのショートショート集

綾乃雪乃

三題噺「学校」「授業中」「テロリスト」

『あたしが勝ったら、あんたと付き合ってもらうから!』


カリカリ、ごしごし、という音だけが響く教室。

日々を賑やかに過ごすここは、この数日間だけ異様な緊張感に包まれていた。

それは紙に書かれた文字と頭脳戦を繰り広げる授業。


定期テストだ。




俺は、クラスメイトの女子とテストの合計点で勝負をしている。

どうやらヤツが勝ったあかつきには、俺は彼氏にならないといけないらしい。


今は最後の科目、数学。

今までの自己採点結果からみれば、俺が10点リードしている。


数学は得意だ。

見直しをしっかりやりさえすれば、俺は、ようやく、あいつに勝てる!

このためにどれだけ努力をしたか、今度こそ知らしめてやる、マジで。



一旦全ての問題を解き終えた俺は、ふいに顔を上げた。

すると、斜め前、廊下側の席にいるあいつが、なぜかこっちをみていることに気がついた。


テスト中によそ見なんて余裕かよ。シャクだ。


思わずじっと見返せば、あいつはにこりと笑って口を動かした。



(好 き だ よ)



ぐしゃり。

プリントが勢いよくゴミクズになった。



くそ!

くそ!


「(あんの……テロリストがあああああああ!!)」






机に突っ伏して、寝たフリをする、俺。


見直しなんて、できるわけがなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る