脱出ゲームをモチーフにしたコント小説

 見覚えのない怪しげな部屋で目を覚ました男が、とりあえず脱出に取り掛かるものの、ちょっと思いもしないところで苦悩したりするお話。

 ツッコミ芸のキレと勢いが光る、コント的なコメディ短編です。
 というか、実質コントそのもの。もう普通に笑わされてしまいました。発想の勝利であると同時に、ツッコミの勢いの勝利でもある感じ。

 まず発想というか、この状況そのものの理不尽さが面白いのがもうずるい。
 すでにしておかしな状況を前提として仕込んでおいて、そのうえで主人公の勢いある言動でこちらの背中を押しにくる、この完成された型に見事に嵌められました。

 実は状況そのものは相当にシビアなはずなのに(実際作中で相当ハードコアな事態が起こったりするのに)、それすら笑える要素になってしまっている、というのがもうすごい。
 本当にコメディらしいコメディというか、頭を空っぽにして楽しめる作品でした。