この世界には宝石の名を冠する種族が溢れています。世界を統括しているのは紅玉と呼ばれる龍。そんな世界で瑪瑙と称される種族――人間である主人公コウは、けして強い存在ではありません。それでも己の正義を胸に、少年は騎士を目指すわけです。
世界観の素晴らしさもさることながら、キャラクターの魅力も見事です。仲間も敵(?)も非常にキャラが立っています。私の推しは……選べないですが、やっぱり主人公の幼馴染ネフィーさんですかね。でも娘を攫われた黒い狼の獣人ローエンさんも元貴族令嬢の銃使いソフィアさんも好きです。もちろん主人公コウくんも。
これからも楽しみに読ませていただきます!
テンプレや量産型と悪くも言われがちなネットファンタジー小説の中でしっかりと重みがあり、読み手に満足感を与える作品。
魅力は偏に作者様のセンス。たとえばこの作品ではスキルが出てくる。
テンプレじゃないかと思うのは早計である。この作品ではスキルを「定型魔法(スキル)」と表現している。読んでいるとそれだけで、「スキル」という典型的な言葉が作品独自のものに変わり、この世界に落とし込まれる。
「ファンタジーなのでよくある設定を使ってみました」ではない捻りに、作者様の書き手としての矜持を感じられた。
思いつかないと思わされたのは「技装」という定型魔法。スキルとして内容は珍しくないが、このネーミングは良い。読んでいてこの定型魔法の名前はこれしかないと思わされる魅せ方をされる。
そして主人公。無個性主人公に見せかけてかなり味のあるキャラとなっている。騎士を夢見る敬語主人公という前提が与えられ、それを土台として魅力が徐々に積み上げられ独自のキャラクターになっていく。
1章のラストはこの土台あってこそのカタルシスが味わえる展開となっている。
1章は短いものの十分これだけで短編として見ても高水準なものとなっており、まずそれだけでも読んでみることをお勧めしたい。
1章最終話(全体で5話)のタイトルなどセンス以外感じられない。
作者様のセンスの高さの傍証とも言えよう。言葉選びがあまりにも美しい。
是非見ていただきたい作品である。