センスと重みのある高水準ファンタジー
- ★★★ Excellent!!!
テンプレや量産型と悪くも言われがちなネットファンタジー小説の中でしっかりと重みがあり、読み手に満足感を与える作品。
魅力は偏に作者様のセンス。たとえばこの作品ではスキルが出てくる。
テンプレじゃないかと思うのは早計である。この作品ではスキルを「定型魔法(スキル)」と表現している。読んでいるとそれだけで、「スキル」という典型的な言葉が作品独自のものに変わり、この世界に落とし込まれる。
「ファンタジーなのでよくある設定を使ってみました」ではない捻りに、作者様の書き手としての矜持を感じられた。
思いつかないと思わされたのは「技装」という定型魔法。スキルとして内容は珍しくないが、このネーミングは良い。読んでいてこの定型魔法の名前はこれしかないと思わされる魅せ方をされる。
そして主人公。無個性主人公に見せかけてかなり味のあるキャラとなっている。騎士を夢見る敬語主人公という前提が与えられ、それを土台として魅力が徐々に積み上げられ独自のキャラクターになっていく。
1章のラストはこの土台あってこそのカタルシスが味わえる展開となっている。
1章は短いものの十分これだけで短編として見ても高水準なものとなっており、まずそれだけでも読んでみることをお勧めしたい。
1章最終話(全体で5話)のタイトルなどセンス以外感じられない。
作者様のセンスの高さの傍証とも言えよう。言葉選びがあまりにも美しい。
是非見ていただきたい作品である。