君への手紙
総督琉
拝啓、君へ
私は君に逢えて、凄く凄く楽しかったよ。
はてなだよね、いきなりこんなことを書くなんて。手紙は初めて書くから書き方なんて分からない。だけど私は最初にこれだけは伝えておきたかったから。だから私は手紙を書くって決めた時、これを一番最初に書いた。
もう居なくなった私がこんなことを伝えても、君には伝わらないかな。伝わってほしいな。
うわさ通り、君はいつも卑屈的で、ネガティブで、暗くて、寂しそうだった。その時私は気づいたのです。君は友達が欲しいだけのただの平凡な学生なんだって。
知っていたから、気づいたから私は話しかけたのに、どうして君は私のことを無視するんだろうね。私の方が寂しくなっちゃったよ。
逃がさないって、私は決めた。
まいにち君に話しかけて、絶対に仲良くなって君を振り向かせてやるんだって。
すごい勇気がいるんだよ。知らない人に話しかけるっていうのは。諦めず、何度も何度も君に話しかけて、ようやく君は私に言ったよね。
「だれです?」
かちーんときました。
ラリアットをしてやろうって思ったけれど、私は可愛い女の子ですから、そんなはしたない真似、私にはできません。
五万回も話しかけて、ようやくかけてくれた言葉がそれだったので、無理もありません(五万回は盛り過ぎたね。本当は四万回かな)。
面倒くせーって、君は思っているんでしょうけど、私からすればそれは大大大問題なのです。
寝ながらこの文を読んでたら遠くからでも私は君を叩きに行くよ。
しかしながら、結局君とは色んな思い出を作ったよね。
ぬいぐるみを突然プレゼントしてくれたことがあったでしょ。あれ、あの時は上手く言葉にできなかったけど、夜寝れないくらい嬉しかったよ。布団を抱いて何度も寝返りを打つくらい嬉しかった。
前髪をきりすぎた時もあったよね。恥ずかしくて赤面する私に向かってさ、君は言ったよね。
「似合ってるかは分かんないけど、俺はその髪型も好き」って。その時、私は前髪をきりすぎて良かったって思ったんだ。君は無愛想で意地悪に見えて、意外と優しいんだね。おかげで顔がもっと赤くなっちゃって、照れ隠しで君をビンタしちゃったけど(あの時はごめんね)。
人見知りの君と仲良くなるのには本当に苦労したよ。
付き合ってもないし、好きでもなかった君のことを、なぜか妙に意識しちゃった時もあったよね。
君は鈍感だから気付いてなかっただろうけど。
二年生になり、君と私はクラスが離れちゃったよね。
いっしょになりたかったな。
いっしょに居たかったな。
たった一年だけで私と君の関係は終わってしまうんだねって、そう思っていたよ。どうせ君は私に会いに来てくれないだろうと、そうも思ったし。
いっしょに居ることはできないって思っていたのに……君は私のクラスに入ってきて、他の人がたくさん見ている前で私に言ったよね。
「これからもいっしょにいたい。だから昼食、いっしょに食べてくれますか。君といっしょに居たいんだ」
とつぜんだったから、正直困惑したよ。私は動揺して何て言おうか迷っていると、君はまるで後悔したように冷や汗をかき、周囲の視線に気付いて走ってどっかに行っちゃったよね。
ガッカリだ、なんて言うはずもないのにね。
あいしてるって、返した方が良かったかな。
リスニングテストの時、君は気付いてなかったと思うけど、相当なボリュームでボソボソと呟いていたよね。先生も困ってたよ。
マーボー豆腐、覚えてる?修学旅行で中華街に行った時、君は真っ先にマーボー豆腐専門店に行って、三皿もたいらげた。
スキーに行った時、君はへたくそで転びまくった。
それには思わず笑っちゃったよ。
レモンケーキを食べに行ったことは今でも覚えている。だって君のだけ二つ届いちゃったんだから。君はそれを私にも分けてくれて、美味しかったよ。
ハムスターが好き。君とケンカをする時はいつもハムスターの話だよね、
「ねえ、君は私といっしょにいたこの時間、楽しかったかな。私は楽しかったよ」
きみには伝わらないと思って、この手紙にある仕掛けをしておきました。私のことを知っている君なら、この仕掛けが分かるかな、分かってくれるかな。
ミステリー、好きだっけ?その話はまだしたことがなかったね。
がっこう、行けなくてごめんね。本当は書こうと思っていたことは書かないことにします。だってこの気持ちは、そう簡単には伝えてはいけないと思うから。
ーーーーーーーーーーーーーーー君の友達より
君への手紙 総督琉 @soutokuryu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
幽体離脱のQ.E.D./総督琉
★12 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます