田舎の異能少年の友情と恋

 ありふれているが故に忌避される「異能」の存在する世界で、その異能を人に売ることを生業とする少女の物語。

 より正確には、その少女と関わることになる少年のお話です。
 本作単体でのドラマ部分を担うのは少年の方で、異能売りの少女はその彼に関わり変化をもたらす、いわば狂言回し的な存在。もしこの作品が連作であった場合、シリーズそのものの主人公に当たるのが彼女、みたいなイメージになると思います。

 まさにその配役の示す通り、そのまま一話完結の連作になりそうな雰囲気が魅力です。
 異能を売る、すなわち人になんらかの力を授けることができる、という、無限に応用の効きそうな設定。加えて、それが世間一般には忌避されるものであるということ。本作だけに限らず、これまでにも(そしてこの先も)きっとさまざまな人間と関わってきたのだろうと想像できる、つまりいくらでも物語がありそうなところが素敵でした。

 そのさまざまなドラマのうちのひとつ、片田舎の純朴少年の、友情と恋の物語。そのもどかしさやままならなさのようなものが伝わる作品でした。