1分で読める連作多視点ホラー

Brain B.

第1視点 Aちゃん

教室に入ると、いつも1番に登校していたSちゃんの姿がなかった。わたしは、Sちゃんが風邪(かぜ)でもひいたかな、と思い、Sちゃんと家が近いDちゃんにきいてみた。


「Sちゃん、どうしたのかな」

「わからない」

 Dちゃんは、“きょうみがない“という感じでこたえた。


SちゃんとDちゃんは、けんかでもしたのかな。


わたしは、ランドセルをおろして席についた。


しばらくすると、5年1組担任のQ先生が、教室に入ってきた。そして、朝の挨拶をすると、いきなり


「Sちゃんは、”わすれもの”をしたので消えました」


と言った。


わたしは、そのQ先生の言葉を聞いてもよく言葉の意味を理解することはできなかった。だから、となりの席のT君に小さな声で「先生・・・へんなことをいっていない?」と話しかけた。


「いつものことじゃない」

T君は、わたしを見ずに、顔を正面に向けたままこたえた。


「え・・・」わたしは、言葉につまった。


「では、今日”わすれもの”をした人は手をあげてください」このQ先生の言葉に、DちゃんとT君がゆっくりと手をあげた。


「ほかにはいませんか?」

 

わたしは、自分が国語で使う漢字辞典を忘れていることに気づいた。

でも、なんだかこわくて手をあげることができなかった。


「では、二人は、ほうか後に”部屋”まで来てください」


「わかりました」DちゃんとT君は、声をそろえていった。


それを聞いたQ先生は、まんぞくそうにうなづいた後、いきなり目を見開き「本当に”わすれもの”をしていませんか⁉️」と、わたしに向かってさけんだ。それに合わせて、DちゃんとT君をふくめてクラス全員が、いっせいにわたしの方を見た。

 

あ・・・そういえば・・・こんなことが昨日もあった気がする。


そのときは、みんなSちゃんの方を向いていた・・・わたしもSちゃんを見ていた・・・そうか・・・わたしも“きえる“んだ・・・。


わたしは、自分のからだから力がぬけていくのを感じていた。


“わすれもの“をした人は“部屋“にいく。

“わすれもの“を言い忘れると消える。


わたしもSちゃんも手をあげなかったから消えるんだ。


でも・・・“わすれもの“・・・て・・・本当は・・・なんだろうか?

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