最終話

 卒業パーティーが終わってから、月日が過ぎました。私はジーク様と無事結婚し、今は8歳の息子と5歳の娘に囲まれて過ごしています。

 二人にジーク様との出会いを聞かれたので、話していたのですが、唐突に質問タイムが始まってしまいました。


「お母様は一人が嫌だったのー?」

「ええ、そうですよ。一人は寂しく、悲しいものですから」

「そっかー。じゃあ、お母様は今は寂しくない?」

「ええ、私にはお父様がいて、あなた達がいますから、寂しくありませんよ」

「ふふっ、そっかー」

「母上、その後の王家はどうなったのですか?」


 あの卒業パーティーの後、第一王子と陛下、それと……愛人さん。ダメです。愛人さんの名前が思い出せません。元男爵令嬢だったということは覚えているのですが、まあ、良いでしょう。必要ありませんしね。


 嘘か本当か、その三人は国を私物化しようとした罪で幽閉されました。その後のことは詳しくは発表されることはありませんでしたが、恐らくは…これ以上はいけませんね。


 それにしても我が息子ながら、そのことを聞いてきますか。正直私も詳しくはわかっていないのですよね。ジーク様に聞いても何も答えてくれませんし、第一王子の話をしようものなら、口を物理的に塞がれてしまうのです。私はずっとジーク様のことを思っているというのに、ジーク様はいつまで嫉妬してくれるのでしょうか。まあ、普段見ることができないジーク様のかわいい姿が見れて私も嬉しいのですが…

 はっ、いけません。今は8歳だというのに、ジーク様ににて利発的な息子の質問に答えないといけませんね。さて、どう答えましょうか…、そうですね、話を少し切り替えてしまいましょう!


「…ルークは今の王様はいやですか?」

「いいえ、今のこの国はとても良いところだと思います」

「ええ、セシル殿下が陛下になってからは、この国はスラムも減り、無駄な出費もなくなったことから豊かになっていきました。なので、過去を見ずに今を見ましょう。確かに過去も大事です。けれど今を見るのはもっと大事ですから」

「…母上、何か誤魔化していませんか?」

「そ、そそ、そんなことはありませんよ」


 ジーク様とそっくりなジト目で私を見つめてきます。うう、その目には私、弱いのです。


「もう!お兄様のお話は難しくて嫌い!もう良いです!私もお母様がお父様と出会ったように王子様を見つけに行きます!」

「どこに行くのシェリー?」

「もちろん、スラムにです!」


 その答えに驚いている間に、シェリーが走っていってしまいます。いけない、追いかけないと!そう思い、椅子から立ち上がったところで、ジーク様が声をかけてくれます。


「スラムと聞こえたが、一体どんなことを話していたんだ?」


 ジーク様がシェリーを捕まえてきてくれたので、私は安心して、上げていた腰を下ろします。怖かったー。ジーク様がいなかったら、どうなっていたものか。もしかしたらもう帰って来なかったかもしれません。そう考えただけで涙が出てきそうになり、顔を手で覆います。


「何があったかはわからないが、シェリー、ちゃんとアリシアに謝りなさい」

「お、お母様、ごめんなさい」

「良いのですよ。でも、今回のように勝手に家を出ようとはしないでね」

「はい」


 しょんぼりしている娘を抱きしめます。今回のことは私の話し方が悪かったですね。思わず、ジーク様との出会いを年甲斐もなくはしゃいで話してしまったのが悪かったです。反省しませんと。


「シェリー、ちゃんと聞いてね。さっきの話で、お父様に私がスラムで見つけてもらった。そう話しましたね」

「…うん」

「実はね。その時に初めてお父様とあったのではないの。本当はずっと前に会っていたの」

「そうなの?」

「ええ、だから、出会いは場所じゃないの。危険なことはしなくていいの。平穏に暮らしているだけで良い出会いはやってくるわ」

「お母様のように?」

「ええ、もちろん。だって、あなたたちは私とお父様の最愛の子供達なのだから」

「わかった!」


 伯父や第一王子に巻き込まれた時には悲しいことや、理不尽なこと、嫌なことがたくさんありました。けれども、そんな時にはジーク様やシシリー様を初め、お義父様やお義母様が助けてくれました。愛してくれました。この恩は私が一生かけても返せるものではないでしょう。だけど、笑って私を受け入れてくれました。


 お父様、お母様、私はもう一人ではありません。大切な人ができて、家族ができました。お母様が私を愛してくれたように、お父様が私を守ってくれたように、私はジーク様とともにこの子達を愛し、守っていこうと思います。

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【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください! 白キツネ @sirokitune-kurokitune

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